第二十四話 「アルフレッドの暗躍」
王宮での評議会を終え、王室直属の特別開拓顧問に任命された三姉妹は、新たな使命に胸を膨らませていた。
しかし、アルフレッドとそれに賛同する貴族たちが、このまま引き下がるとは到底思えなかった。
「あいつら、絶対になにか仕掛けてくるわよ」
フィオナが、怒りを露わにしながら呟く。
「ええ。……だからこそ、私たちは、彼らの動きを警戒する必要があるわ」
ルナは、冷静に答えた。
レオニードも、ルナの言葉にうなずいた。
「アルフレッド卿は、非常にプライドが高く、権力欲が強い。……今回のことで、彼は、ルナ様たちを、何としてでも排除しようと、画策するはずです」
三姉妹とレオニードは、王都に滞在せず、すぐに村へと戻ることにした。
しかし、その道中、彼らは、ある男に呼び止められた。
男は、貴族の使いの者らしい、豪華な服を着ていた。
「ルナ・カーヴィル様でございますか?」
男は、ルナに尋ねた。
「はい。私がルナです」
ルナが答えると、男は、ルナに一通の手紙を差し出した。
「アルフレッド卿から、お預かりしました」
ルナは、その手紙を受け取り、男は、すぐに立ち去っていった。
ルナは、手紙を開き、中身を読んだ。
手紙には、こう書かれていた。
『ルナ・カーヴィル殿。貴殿の開拓顧問就任、誠におめでとうございます。つきましては、ささやかではございますが、就任祝いとして、貴殿の村に、上質な小麦の種を、送らせていただきました。貴殿の今後のご活躍を、心よりお祈り申し上げます。』
手紙の文面は、恭しく、一見すると、何の悪意も感じられなかった。
しかし、ルナは、手紙を読み終え、眉間にしわを寄せた。
「……おかしいわ。アルフレッドが、こんな親切なことをするはずがない」
ルナは、そう呟いた。
三姉妹とレオニードは、急いで村へと戻った。
村に到着すると、村の入り口に、大きな木箱が、いくつも置かれていた。
木箱の中には、アルフレッドからの手紙に書かれていた、上質な小麦の種が、びっしりと詰まっている。
「ルナ姉! これ、アルフレッド様からだって! すごい量だね!」
ミリアが、目を輝かせて言う。
「……待って。ミリア」
ルナは、ミリアを制止し、種を一つ、手に取った。
ルナは、その種を、匂いを嗅ぎ、じっと観察した。
そして、ルナは、レオニードに尋ねた。
「レオニード。……この種、どこかおかしくない?」
レオニードも、種を一つ手に取り、観察した。
「……はい。この種は、何か、特殊な魔力が、込められているようです」
レオニードは、そう答えた。
ルナは、この種の正体を突き止めるため、村の学校へと向かい、魔法の書物を取り出した。
書物を読み進めていくと、ルナは、ある魔法の記述を見つけた。
「……これだわ! この種は、〈呪いの種〉よ!」
ルナは、驚きの声を上げた。
「呪いの種……?」
フィオナが、ルナに尋ねる。
「ええ。……この種を植えてしまうと、この村の土地が、二度と作物を育てられない、不毛の地になってしまうの!」
ルナの言葉に、フィオナとミリアは、息をのんだ。
アルフレッドは、親切を装って、ルナたちを罠にかけようとしていたのだ。
ルナは、すぐに村人たちを集め、事情を説明した。
「この種は、呪いの種です! 絶対に、植えてはいけません!」
ルナの言葉に、村人たちは、驚き、そして、怒りを露わにした。
「なんてやつだ! ルナ様たちを騙そうとするなんて!」
「許せない! こんなひどいことをするなんて!」
村人たちの怒りの声が、村中に響き渡った。
ルナは、村人たちに、呪いの種を処分するように指示した。
そして、三姉妹とレオニードは、アルフレッドの悪事を、国王に報告するため、再び王都へ向かうことにした。
「アルフレッドは、私たちが、こんなにも早く、彼の罠を見抜くとは、思っていないでしょう。……これが、彼を追い詰める、最大のチャンスよ!」
ルナは、そう言って、決意を新たにした。
しかし、アルフレッドも、ルナたちの行動を、読んでいた。
ルナたちが、王都へ向かう道中、彼らの行く手を阻むように、一人の男が、立ち塞がった。
男は、アルフレッドの私設軍隊の兵士だった。
「ルナ・カーヴィル様。……あなたたちには、ここで、消えてもらう」
男は、そう言って、ルナたちに剣を向けた。
アルフレッドは、ルナたちが、彼の罠を見抜くことも、王都へ報告に行くことも、すべてお見通しだったのだ。
三姉妹とレオニードは、アルフレッドの私設軍隊との、新たな戦いに、巻き込まれていく。
それは、辺境の村を守るため、そして、自分たちの正義を貫くための、命がけの戦いだった。




