第二十三話 「王都の評議会」
三姉妹とレオニードは、国王の呼び出しを受けて、再び王都へとやってきた。
王宮の門をくぐると、銀翼団の団長がルナたちを待ち受けていた。
「ルナ様。よく来てくださいました」
団長は、ルナたちに深々と頭を下げた。
「団長様。国王様が、私たちに会いたいと……何か、あったのでしょうか?」
ルナが尋ねると、団長は、重い口を開いた。
「はい。……ルナ様たちの村について、王国の貴族たちが、評議会を開いているのです」
団長の言葉に、ルナは、息をのんだ。
団長に案内され、ルナたちは、王宮の評議会の間に通された。
そこには、国王を筆頭に、多くの貴族たちが集まっていた。
評議会の間に入ると、貴族たちの冷たい視線が、ルナたちに突き刺さる。
ルナは、その視線に臆することなく、国王の前に進み出た。
「国王様。ルナ・カーヴィル、参上いたしました」
ルナが、深々と頭を下げると、国王は、静かにうなずいた。
「ルナよ。……お前たちの村が、かつての不毛の地から、豊かな土地へと変貌したことは、聞き及んでいる」
国王の言葉に、ルナは、感謝の言葉を述べた。
その時、一人の貴族が、国王に進み出た。
「国王陛下! 私は、この者たちを、貴族として認めることには、断固反対でございます!」
その貴族は、以前、ルナたちの村にやってきた、アルフレッドだった。
アルフレッドは、ルナたちを睨みつけ、続けて言った。
「この者たちは、貴族の血を引かぬ平民! このような者たちに、領地と権限を与えるなど、王国の秩序を乱す行為に他なりません!」
アルフレッドの言葉に、他の貴族たちも、賛同の声を上げた。
「そうだ! 平民に、貴族と同じ権利を与えるなど、ありえない!」
「このままでは、王国の秩序が、崩壊してしまう!」
貴族たちの声に、ルナは、冷静に答えた。
「私たちは、貴族としての地位を、望んではおりません。……ただ、自分たちの故郷を、豊かにしたいだけです」
ルナの言葉に、アルフレッドは、鼻で笑った。
「ならば、なぜ、我が領地と並ぶほどの豊かな土地を、作り上げた? それは、貴族の地位を狙う、下心があるからだろう!」
アルフレッドの言葉に、ルナは、怒りを露わにした。
「そんなことはありません! 私たちは、ただ、故郷を豊かにしたいという、一心で……」
その時、レオニードが、ルナの前に進み出た。
「黙りなさい、アルフレッド卿!」
レオニードの声に、評議会の間は、静まり返った。
「レオニード……! なぜ、お前がここに!?」
アルフレッドは、驚きの表情で、レオニードを見つめた。
「私は、ルナ様たちと行動を共にしています。……そして、ルナ様たちが、貴族の地位を望んでいないことを、私が保証いたします!」
レオニードは、力強く言い放った。
「貴様は……! 銀翼団を追放された、裏切り者ではないか!」
アルフレッドは、レオニードを侮辱する言葉を投げつけた。
「……私は、銀翼団を裏切ったわけではありません。……ただ、自分の過ちに気付き、真実の道を選んだまでです」
レオニードは、そう言って、国王に深々と頭を下げた。
「国王陛下。ルナ様たちは、王国の未来を担う、素晴らしい才能を持っています。……どうか、彼女たちの力を、王国の発展のために、お使いください!」
レオニードの言葉に、国王は、深く考え込んだ。
そして、しばらくの沈黙の後、国王は、口を開いた。
「……わかった。ルナよ。……貴族たちが、貴様たちに不満を抱いているのは、事実だ。……そこで、一つ、提案がある」
国王の言葉に、ルナは、身を固くした。
「……貴様たちには、貴族としてではなく、王室直属の特別開拓顧問に任命しよう」
国王の言葉に、ルナは、驚きの表情を浮かべた。
「特別開拓顧問……?」
「そうだ。……王国の未開の地を、開拓し、豊かな土地へと変えるのが、貴様たちの仕事だ。……そして、その功績に応じて、相応の報酬と、王室からの庇護を与えよう」
国王の言葉に、ルナは、深く考え込んだ。
それは、貴族としての義務を負うことなく、自由に活動できる、ルナたちにとって、最良の提案だった。
しかし、それは同時に、王都の貴族たちから、さらに反感を買うことにもなりかねない。
ルナは、フィオナとミリア、そしてレオニードに視線を送る。
三人は、ルナに微笑みかけ、うなずいた。
「……国王陛下。そのお話、喜んでお受けいたします」
ルナは、国王に深々と頭を下げた。
こうして、ルナたちは、王室直属の特別開拓顧問として、新たな冒険へと旅立つことになった。
それは、辺境の小さな村の領主としてではなく、王国全体を舞台にした、壮大な物語の始まりだった。
そして、その物語は、彼女たちの運命を、大きく変えていくことになる。




