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第十九話 「レオニードの真意」

 学校に現れたレオン――いや、レオニードと名乗る男に、ルナは警戒を強めた。

 フィオナとミリアも、すぐに駆けつけ、レオニードを睨みつける。

「レオン! 何の用だ!」

 フィオナが、大剣を構え、レオニードに詰め寄る。

 レオニードは、そんなフィオナの迫力にも動じることなく、静かに微笑んだ。

「落ち着いてください。私は、あなたたちに危害を加えるつもりはありません」

「嘘をつきなさい! あんたは、王都で私たちを捕らえようとしたじゃない!」

 ミリアが、レオニードに怒りを露わにする。


 レオニードは、ルナたちに背を向け、校庭に咲いている花に目を向けた。

「……私は、銀翼団にいた頃、カインの過去の失敗を嘲笑し、彼を侮辱していました。……あの時の私は、未熟で、自分の力に酔いしれていたのです」

 レオニードは、そう言って、深々と頭を下げた。

「……王都での騒動で、私は、自分の過ちに気付きました。……そして、この村が、あなたたち三姉妹の手によって、こんなにも豊かな土地になったことを知り、自分の未熟さを痛感しました」

 レオニードの言葉に、ルナたちは、戸惑いを覚えた。


「……あなたの目的は、何?」

 ルナが、レオニードに尋ねる。

「……この村に、私の故郷を、重ねて見ていたのです」

 レオニードは、そう言って、遠い目をした。

「私の故郷も、昔は、あなたたちの村のように、貧しい村でした。……しかし、領主の悪政により、村は荒廃し、村人たちは、苦しんでいました」

 レオニードは、自らの過去を語り始めた。

「私は、そんな村を救うために、強さを求め、銀翼団に入団しました。……しかし、力を手に入れた私は、いつしか、力をひけらかすことに、喜びを感じるようになっていたのです」

 レオニードは、ルナたちに、再び深々と頭を下げた。

「……あなたたちに、謝りたい。そして、……あなたたちの村を、見て回りたかったのです」

 レオニードの言葉は、嘘を言っているようには聞こえなかった。


 ルナは、フィオナとミリアに視線を送る。

 二人は、ルナと同じように、レオニードの言葉に、戸惑いを覚えていた。

 ルナは、レオニードに言った。

「……あなたの話が本当なら、私たちも、あなたを信じてみましょう」

 ルナの言葉に、レオニードは、驚いた表情を浮かべた。

「……本当ですか!?」

「ええ。……でも、もし、私たちを裏切るようなことがあれば、今度こそ、容赦はしないわ」

 ルナは、レオニードに釘を刺した。

「はい! ありがとうございます!」

 レオニードは、ルナに感謝の言葉を述べた。


 その日の夕食は、レオニードも、三姉妹の村で一緒に食べた。

 食卓には、村で採れた新鮮な野菜や、美味しい魚料理が並んでいる。

「……こんなに美味しい料理、久しぶりだ」

 レオニードは、そう言って、感動したように料理を口にした。

「そうだろ! この村の野菜は、最高なんだぜ!」

 フィオナが、得意げに胸を張る。

「この魚も、ルナ姉が教えてくれた、新しい漁法で獲れたんだよ!」

 ミリアも、レオニードに言った。


 レオニードは、三姉妹が、本当にこの村を愛し、村人たちも、三姉妹を尊敬していることを、肌で感じた。

「……本当に、すごいな」

 レオニードは、そう言って、感嘆のため息をついた。


 食事が終わり、レオニードは、ルナに言った。

「ルナ様。……一つ、お願いがあります」

「何?」

「この村の学校で、子供たちに、剣術を教えてもらえないでしょうか?」

 レオニードの言葉に、ルナは、驚きの表情を浮かべた。

「……どうして?」

「私には、もう故郷はありません。……ですが、この村の子供たちに、私の故郷で起きたような悲劇が起きないように、剣術を教えたいのです。……そして、あなたたちの故郷を、守る手伝いをしたいのです」

 レオニードは、真剣な表情で、ルナに言った。


 ルナは、レオニードの言葉に、深く考え込んだ。

 レオニードは、かつての敵だ。

 しかし、彼の言葉は、嘘偽りのない、真実の言葉のように聞こえた。

 ルナは、フィオナとミリアに視線を送った。

 二人は、ルナに微笑みかけ、うなずいた。

「……わかったわ。私たちと一緒に、子供たちに、剣術を教えてあげて」

 ルナの言葉に、レオニードは、涙を浮かべた。

「ありがとうございます! ルナ様!」

 レオニードは、ルナに深々と頭を下げた。


 こうして、かつての敵であったレオニードは、三姉妹の仲間となり、新たな物語が、始まろうとしていた。

 それは、辺境の小さな村が、王国を揺るがすほどの、強大な力を持つ、楽園へと変貌していく物語だった。


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