第十七話 「カインの決意」
銀翼団の本部前で、レオンの言葉に呼応した騎士たちが、ルナたちに迫ってきた。
「待て!」
カインが、騎士たちの前に立ち塞がる。
「カイン、どけ! こいつらは反乱者だ!」
レオンが、カインに怒鳴りつけた。
「……ルナたちは、反乱者じゃない。俺が保証する!」
カインは、ルナたちを庇うように、剣を構えた。
「カインさん……」
ルナは、カインの行動に驚き、感動した。
「カイン! 貴様、王都に逆らうつもりか!?」
レオンは、カインに詰め寄る。
「俺は、真実を語るだけだ。……ルナたちが、反乱を企んでいるなんて、ありえない!」
カインは、レオンに言い放った。
「……黙れ! 貴様の言うことなど、誰も信じない! お前は、昔の失敗で、銀翼団を追放された臆病者だ!」
レオンの言葉に、カインは、一瞬、怯んだ。
その隙を突き、レオンは、騎士たちに命じた。
「捕らえろ! カインも、こいつらの仲間だ!」
騎士たちは、カインとルナたちに、一斉に襲いかかってきた。
カインは、一人で複数の騎士を相手に、剣を振るう。
ルナは、フィオナとミリアに指示を飛ばした。
「フィオナ、カインさんを援護して! ミリア、騎士たちの動きを封じて!」
ルナは、自身も魔法を使い、騎士たちを牽制した。
「〈アイス・ランス〉!」
ルナが放った氷の槍が、騎士たちの鎧を砕き、騎士たちは、後退した。
フィオナは、カインの隣で、大剣を振るう。
「カインさん! あたしが、後ろは守ります!」
フィオナの言葉に、カインは、微笑んだ。
「ありがとう、フィオナ!」
ミリアは、弓を放ち、騎士たちの足元を狙う。
騎士たちは、ミリアの弓矢に足元をすくわれ、思うように動けなくなった。
三姉妹とカインは、騎士たちを相手に、互角に戦っていた。
その様子を見て、レオンは、舌打ちをした。
「くそっ……! こいつら、思ったよりやるな!」
レオンは、自身も剣を抜き、カインに斬りかかった。
「カイン! 貴様の臆病さは、変わらないな! このまま、俺に負けて、銀翼団の名を汚すのか!」
レオンの挑発に、カインは、一瞬、動きが鈍った。
その隙を突き、レオンの剣が、カインの肩を切り裂いた。
「ぐっ……!」
カインが、膝をつく。
ルナが、カインに駆け寄ろうとした、その時――。
レオンが、ルナに剣を向けた。
「動くな! 動けば、こいつの命はないぞ!」
レオンの言葉に、ルナは、身動きが取れなくなった。
フィオナとミリアも、レオンに人質を取られ、動けない。
「はははっ! お前たちも、これで終わりだ!」
レオンは、勝利を確信し、高らかに笑った。
その時、銀翼団の本部から、団長が現れた。
「レオン! そこまでだ!」
団長の声に、レオンは、驚きの表情を浮かべた。
「団長!? なぜ、ここに!?」
「貴様が、カインとルナたちを襲っていると聞いてな。……見過ごすわけにはいかないだろう」
団長は、レオンに詰め寄る。
「団長! こいつらは、反乱者です! 国王様も、そうおっしゃっています!」
「国王様は、まだ、何の判断も下していない。……そして、私は、この目で、ルナたちが、反乱者ではないことを知っている!」
団長は、ルナたちが、王女を護衛したことを、レオンに話した。
「それに、レオン。……お前が、アルフレッドという貴族と、裏で繋がっていることも、知っているぞ」
団長の言葉に、レオンは、絶句した。
団長は、騎士たちに命じた。
「レオンを捕らえろ!」
騎士たちは、レオンに襲いかかり、レオンは、捕らえられた。
そして、団長は、ルナたちに深々と頭を下げた。
「ルナ様、本当に申し訳ない。……このような目に遭わせてしまって」
「いえ……団長様のおかげで、助かりました」
ルナは、団長に微笑みかけた。
その後、ルナたちは、団長に案内され、国王のもとへと向かった。
国王は、ルナたちに謝罪し、アルフレッドという貴族の悪行を裁くことを約束した。
「君たちを信じられず、すまなかった。……そして、君たちの故郷の村を、反乱の村だと疑ってしまったことも、謝罪する」
国王は、ルナたちに深々と頭を下げた。
「いえ。……信じてくださっただけでも、十分でございます」
ルナは、国王に微笑みかけた。
こうして、ルナたちの村は、反乱の村という汚名を返上し、王都の貴族たちからも、一目置かれる存在となった。
そして、三姉妹は、王都を離れ、故郷へと戻ることにした。
カインは、ルナたちに、再び別れを告げた。
「ルナ。君たちのおかげで、俺は、臆病者ではいられない、と知った。……本当に、ありがとう」
カインは、ルナに深々と頭を下げた。
「カインさん……」
ルナは、カインの言葉に、涙を浮かべた。
三姉妹は、故郷へと戻り、村人たちの温かい歓迎を受けた。
彼女たちの冒険は、まだ終わらない。
辺境の小さな村は、やがて、王都にも劣らない、豊かな楽園へと変貌していく。
そして、その楽園を築いた三姉妹の名は、後世にまで語り継がれていくことになるだろう。




