第十六話 「迫りくる影」
アルフレッドという貴族が村を去ってから、三姉妹は、王都の貴族たちが自分たちに敵意を抱いていることを肌で感じていた。
村は、ルナの指揮のもと、着実に発展を遂げていた。
道は整備され、商業が発展し、村人たちの暮らしは豊かになった。
しかし、その繁栄は、王都の貴族たちの嫉妬と羨望を招き、新たな災いを呼び寄せようとしていた。
ある日のこと。
ルナのもとに、一人の旅の商人がやってきた。
「ルナ様。お久しぶりでございます」
その商人は、以前、王都へ向かう道中で出会った商人だった。
「まあ、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
ルナは、商人に微笑みかけた。
「はい。ルナ様のおかげで、私も商売が順調でございます」
商人は、ルナに感謝の言葉を述べ、続けた。
「……ところで、ルナ様。一つ、お気をつけください」
商人の言葉に、ルナは、警戒した。
「どういうことですか?」
「王都では、ルナ様たちの村について、悪い噂が流れております。……なんでも、悪魔と契約して、村を豊かにした、と」
商人の言葉に、ルナは、息をのんだ。
その噂は、アルフレッドが流したものに違いない。
ルナは、胸騒ぎを覚えた。
「……ありがとうございます。教えていただいて」
ルナは、商人に礼を述べ、商人は、王都へと帰っていった。
ルナは、すぐにフィオナとミリアを呼び出した。
「二人とも。王都で、私たちの村について、悪い噂が流れているみたい」
ルナの言葉に、フィオナは、怒りを露わにした。
「なによ! あたしたちが頑張って村を豊かにしたのに、悪魔の力だって!? ふざけんじゃないわよ!」
ミリアは、不安そうな表情で、ルナに尋ねた。
「ルナ姉……どうしよう? このままだと、村が……」
「大丈夫よ。……この噂を流したのが誰なのか、突き止める必要があるわ」
ルナは、冷静に答えた。
三姉妹は、この噂の出所を探るため、再び王都へと向かうことにした。
村人たちに、王都へ行くことを告げると、村人たちは、心配そうな表情を浮かべた。
「ルナ様。どうか、お気を付けて」
「ああ。もし、何かあったら、すぐに私たちに言ってくれ!」
村人たちの言葉に、ルナは、微笑んでうなずいた。
王都へ向かう道中、三姉妹は、怪しい人影に後をつけられていることに気付いた。
「……ルナ姉、誰か、私たちを付けてるみたい」
ミリアが、ルナに小声で告げる。
「ええ。……気を付けて」
ルナは、フィオナとミリアに指示を出した。
「フィオ、いつでも戦えるように準備して。ミリア、援護をお願い」
ルナの合図で、三姉妹は、怪しい人影に反撃を開始した。
現れたのは、四人の男たち。
彼らは、冒険者らしい格好をしていたが、その雰囲気は、どこか胡散臭かった。
「おい、小娘ども。おとなしく、ついてきてもらうぜ」
男の一人が、下卑た笑いを浮かべて言った。
「お断りします!」
フィオナが、大剣を構え、男たちに斬りかかる。
「ちっ……生意気な!」
男たちは、フィオナに武器を向ける。
しかし、フィオナの力は、男たちを圧倒していた。
フィオナは、次々と男たちを倒していく。
ミリアは、弓を放ち、男たちの動きを封じ、ルナは、魔法で男たちを牽制した。
男たちは、三姉妹の強さに驚き、やがて、逃げ出していった。
男たちを追い払った三姉妹は、王都へとたどり着いた。
王都の街は、以前と変わらず賑わっていたが、どこか、不穏な空気が漂っているように感じられた。
ルナたちは、カインに会うため、銀翼団の本部へと向かった。
しかし、本部の前には、多くの騎士たちが集まっていた。
その様子から、ただならぬ事態が起こっていることを察したルナは、カインを探した。
カインは、本部の隅で、一人の騎士と話していた。
「カインさん!」
ルナが声をかけると、カインは、驚いた表情でルナを振り返った。
「ルナ! なぜ、ここに!?」
「カインさんこそ、どうしたんですか? この騒ぎは?」
ルナが尋ねると、カインは、重い口を開いた。
「……アルフレッドという貴族が、国王に、君たちの村が反乱を企んでいる、と訴え出たんだ」
カインの言葉に、ルナは、絶句した。
そして、その背後から、見覚えのある声が聞こえてきた。
「へへっ、見つけたぜ、小娘ども」
声の主は、レオンだった。
「レオン!?」
レオンは、にこやかに微笑みながら、ルナたちに近づいてきた。
「お前たちには、ここで、反乱の罪を償ってもらうぜ」
レオンの言葉に、ルナは、怒りを露わにした。
「そんな濡れ衣、認めるわけにはいきません!」
レオンは、ルナの言葉に耳を貸さず、騎士たちに命じた。
「こいつらを、捕らえろ!」
騎士たちが、ルナたちに迫ってくる。
ルナは、フィオナとミリアに視線を送り、三人は、それぞれの武器を構えた。
「……やるしかないわね」
三姉妹と、王都の騎士たちとの、新たな戦いが、今、始まろうとしていた。




