第十五話 「領主としての第一歩」
三姉妹が故郷を豊かな土地に変えたという話は、あっという間に近隣の村々に広まった。
三姉妹の村は、かつては痩せた土地で苦しんでいたが、今では青々と茂る作物と、活気あふれる村人たちの笑顔で満ち溢れている。
村は、ルナたちが発見した特別な鉱石のおかげで、豊かな実りをもたらすようになった。
村人たちは、この鉱石を「ルナの奇跡」と呼び、三姉妹を敬愛するようになった。
ルナは、故郷を豊かにしたことで、領主としての自覚が芽生え始めていた。
「領地を豊かにするためには、農業だけじゃなくて、商業も発展させないとね」
ルナは、故郷の村を、近隣の村々を結ぶ商業拠点にすることを考えた。
そのためには、まず、村から他の村へ続く道を整備する必要がある。
ルナは、村人たちを集め、道を整備することを提案した。
「この道を整備すれば、他の村の人たちが、私たちの村にやってきて、商売ができるようになります。そうすれば、私たちの村は、もっと豊かになります!」
ルナの言葉に、村人たちは、目を輝かせた。
「ルナ様の言う通りだ!」
「よし! みんなで、道を整備しよう!」
村人たちは、ルナの提案に賛同し、道を整備する作業に取り掛かった。
フィオナは、道の整備作業に、率先して参加した。
「ここの岩、邪魔だなぁ! よっ、こらしょっと!」
フィオナは、巨大な岩を軽々と持ち上げ、道からどかす。
村人たちは、そんなフィオナの怪力に、驚きの声を上げた。
「フィオナ様、すごい力だ!」
「ああ! これなら、あっという間に道が完成するぞ!」
フィオナは、村人たちの言葉に、少し照れながらも、嬉しそうに微笑んだ。
ミリアは、道の整備作業を、後方から支援した。
「みんな、怪我しないでね!」
ミリアは、怪我をした村人がいないか、注意深く見守る。
そして、怪我をした村人がいると、すぐに駆け寄り、薬草をすり潰した軟膏を塗ってあげた。
「ミリア様、ありがとう!」
「もう大丈夫だよ!」
村人たちは、ミリアの優しさに、感謝の言葉を述べた。
三姉妹と村人たちの協力で、道は、あっという間に整備された。
そして、その道を通って、近隣の村々から、多くの商人がやってくるようになった。
村は、商売で賑わい、活気に満ち溢れた。
そんなある日。
ルナのもとに、一人の男がやってきた。
男は、王都の貴族らしい、豪華な服を着ていた。
「あなたが、この村の領主、ルナ様ですか?」
男は、ルナに尋ねた。
「はい。私がルナです」
ルナは、男に警戒しながら答えた。
「私は、王都の貴族、アルフレッドと申します。……あなたに、お願いがあって、参りました」
アルフレッドは、ルナに言った。
「あなたの村が、豊かになったという噂を聞きつけました。……そこで、私たちの領地でも、あなたの村と同じように、作物を育ててほしいのです」
アルフレッドの言葉に、ルナは、驚きの声を上げた。
「……私たちの村と同じように?」
「はい。あなたの村の、あの特別な鉱石を、私たちの領地でも使いたいのです。……どうか、私たちの領地にも、その鉱石を分けていただけないでしょうか?」
アルフレッドは、ルナに深々と頭を下げた。
ルナは、アルフレッドの申し出に、戸惑った。
この鉱石は、自分たちの村を豊かにするための、唯一無二の宝だ。
これを、他人に分けてしまってもいいのだろうか。
ルナは、フィオナとミリアに視線を送った。
フィオナは、眉間にしわを寄せ、ミリアは、不安そうな表情を浮かべている。
ルナは、アルフレッドに言った。
「……申し訳ありませんが、そのお話は、お断りさせていただきます」
ルナの言葉に、アルフレッドは、顔色を変えた。
「な……なぜです!? あなたには、相応の対価をお支払いします!」
「この鉱石は、私たちの村を豊かにするためのものです。……これを他の方に分けてしまっては、この村の価値がなくなってしまいます」
ルナは、冷静に答えた。
アルフレッドは、ルナの言葉に、怒りを露わにした。
「生意気な! たかが辺境の村娘が、貴族の私に逆らうとは!」
アルフレッドは、そう言って、ルナに掴みかかろうとした、その瞬間――。
フィオナが、アルフレッドの前に立ち、大剣を突きつけた。
「これ以上、ルナ姉に近付くんじゃない!」
フィオナの迫力に、アルフレッドは、怯んだ。
アルフレッドは、悔しそうにルナたちを睨みつけ、言った。
「……覚えておけ! この借りは、必ず返させてもらうからな!」
アルフレッドは、そう言って、村を去っていった。
アルフレッドが去った後、ミリアがルナに言った。
「ルナ姉……大丈夫? あの人、なんだか怖かったね」
「大丈夫よ。……でも、これで、私たちを妬む人たちが、増えてしまったかもしれない」
ルナは、そう言って、遠くの空を見つめた。
辺境の小さな村の領主として、彼女たちの新たな戦いが、始まろうとしていた。




