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9話 一軒家

そして次の日。


俺は「上」に呼ばれた。


「じゃあちょっと行ってくる。」


「はい。いってらっしゃいませ。」


ネネはそう言って俺を牢の中から送り出してくれた。



俺は歩きながら色々考えていた。


ネネがいてくれてるからと言って、穏やかになってはいない。


ネネと話せば話すほど、この国の理不尽さ、この世界の理不尽さに辟易している。


俺が魔物と初めて戦った、ハムルがいなくなってから約1か月以上は経っている。


どこかで戦いたい気持ちが溢れてきている。



謁見の間ではなく、客間に通された。


国王は不在らしい。


側近のディネツ、団長のロキア、ゼニア、メクニア、レイラ、そして今回はラクリア州辺境伯のシュッテ伯という人がいた。


シュッテ伯はとても温厚な表情の初老というか、気の良いおじさんの様に見えた。


俺達はディネツ以外、テーブルを囲むように豪華なソファに座っていた。


「本日はお招きいただきありがとうございます。


私はラクリア州の辺境侯爵、シュッテと申します。勇者の皆様にご挨拶したくこちらにいさせていただきます。」


丁寧な優しそうな言葉使いで好感が持てそうな人だ。


俺の隣に座ってるメクニアが、俺の肩に指をちょんちょんとあて、俺の耳元で


「あの人、貴族よ。気を付けて。」


と耳に唇が触れそうなくらいに近づき小声で伝えてくれた。


メクニアの距離感に俺は少し驚いたが、メクニアは気にもしていない様子だった。


斜め前にいるレイラが俺達を睨んでいて、メクニアはレイラにウインクして微笑んだ。


ゼニアもその様子を見ていたが、ゼニアはメクニアではなく俺を睨んでいたように見えた。



「それではご報告を。」


ディネツがそう言うと、


「では、私から。」


ゼニアが言った。


「レジナでは、圧倒的な戦力をもって魔物を駆逐している。私もレベルがようやく5になって力も少しずつ戻ってきた。」


「アネイ。変わらない。ただ、騎士が増えて困っているくらいだ。」


レイラはそれだけを言った。


「レイラ様。騎士の皆も剣聖であられるあなた様の剣技を間近で見たいのでしょう。それは結果的には我が国の騎士のレベルを上げるものにもつながるものです。」


シュッテ伯が穏やかに言った。


「そうであってくれればそれで良い。」


レイラは冷ややかに言った。


「レイラ様。お住まいは如何でしょうか?」


ディネツは聞いた。


「いや、特に。あんな広い家をいただいたが、要らない。

寝て、食べれる場所があればそれで良い。」


あくまでレイラは戦う事に趣を置いているみたいだ。


「剣聖様。もしもあなたが貧相な家に住んでいると思われると、国は勇者様にちゃんと礼節を持って接しているのかと思われるもの。

国王もそんなつもりは毛頭ないはず。どうかその慈悲をお察しいただければ。」


シュッテ伯はまた優しく言った。


「そうであるなら。他にはない。」


「れ、レベルは?」


ゼニアがレイラに言った。


ふと、考えてレイラは言った。ステータスを見たのだろう。


「8だ。」


「8,か。本当にレベルは上がりにくいのだな。」


「あまり気にしてはいない。」


ゼニアはレベルに何故か敏感だ。


「良いかしら。」


メクニアが言った。


「セルカもそんなに変わっていないわ。ああ、ちなみに私のレベルは4よ。


私のまわりも、魔法使い見習いが多いかしら。


正直、皆脆弱に感じるわ。


まぁ今のところ、豪邸もいただいたし、いう事はないわ。


ただまぁ、セルカまでが遠いわね。


ゼニア、レイラ、誰か変わってくれない?」


悪意もなくメクニアが言った。


「私達は国の為に転移してきたのだぞ。勝手な事ばかり…。」


ゼニアは言ったが、


「確かに。私もそれは思っていた。アネイだけで状況はよく掴めない。私はチェニに行きたい。」


レイラもメクニアに同調した。


「あら、気が合うわね。」


メクニアが言うと、レイラは


「気など合ってはいない。ただ、アネイだけでは魔物の動向などが把握できないと思っただけだ。」


「承知致しました。ロキア団長、如何でしょうか?」


ディネツがそう言うと、ロキア団長は


「国王様に言上した上で、検討しましょう。」


そう言った。


「さて。ユーマ。お主には特にないが。」


ディネツはわざとそう言った。


「はい。郊外で小さな小屋で良いので、牢からは抜けられませんか?」


「戦って功績すらないお前に家だと?盗人風情が良く言うものですね。」


グッと我慢した。


「俺にも従者がつきました。従者と牢にいるのも気が滅入ります。」


「従者。ああ、あの獣人奴隷ですね?」


「奴隷だと?」


レイラは驚いた。


「ユーマ。貴様は獣人を奴隷にしてるというのか?」


レイラの口調はまるで奴隷を持つ人に対する怒りの様な口調だった。


「違う。ある日この人達が勝手に連れてきて、俺と奴隷契約をさせただけだ。


俺にとっては従者だ。奴隷じゃない。


だから俺は今、この人に奴隷じゃない暮らしをお願いしてるんだ。牢で暮してるんだよ俺達。それを知らないだろ?」


「ふん。」


ディネツは不貞腐れた。


「ディネツ殿。奴隷とは?」


ゼニアも喰いついた。


「ああ、いや、一応我が国には奴隷制度がありまして。一応ですよ。このユーマに、盗人シーフに付ける従者などこの国にはおりませぬ。そこで渋々奴隷をあてがった訳でございます。」


ディネツは困った様に言い訳をした。




嘘つき。


この国は大々的に奴隷を利用しているくせに。良い恰好して。


ゼニアやレイラもそれを知らないのか?


良い側面だけ見せて裏を見せない。差別至上主義だっていうのに。



「そうでございますなぁ。魔物達と戦う最前線のお国柄、どうしても国を治める為には必要な処置でございます。


何卒そこら辺はご勘弁願えないであろうか?」


シュッテ伯がそう言うと、


「そうですね。国を治める為には致し方ないものですね。秩序が乱れても、国民が困ってしまいますし、我々が国政の事に口を出すのも差し出がましいものになりますね。」


ゼニアはそう言った。


「ユーマ。その獣人に手荒い真似をしようものなら…」


レイラは俺に向かって敵意丸出しで聞いてきた。


奴隷の実態も知らないくせに。


この人は話にならないな。ネネを見てもいないのに。


俺はレイラを無視した。


気持ちを持ったら奴隷紋が反応するかもしれない。


「如何ですか?俺達が街を歩くときでさえ手枷足枷をつけられてるんです。


それでは彼女が危険です。


だから郊外で良いから、とお願いしてるんです。」


俺は奴隷に対してのレイラの反応を見て、少し彼女を利用した。


「俺と彼女は街の住民に対しても罵声を浴びせられ、石を投げつけられています。俺の奴隷紋は住民に対してさえ反応します。

俺はシーフで盗人。

もう逃げる事も何かを盗む事も、怒りも憎しみも思う事も出来ません。

手枷足枷を外したところで、何も出来ません。」


「そんな事をユーマはその獣人にさせているのか?」


レイラは言った。


「俺じゃない。こちらの人達がそうさせてるんだ。」


俺は言い返した。


「それはわかりませんね。シーフは人を平気で騙しますから。」


ゼニアはディネツに言った。


「言っている事さえ本当かどうかわかりません。ここで良い顔してても本当は奴隷に酷い事をしてるかもしれません。」


ゼニアはそう続けた。


「ユーマ、貴様という奴は…」


レイラは完全に俺に敵意を見せた。


「そうかしら?」


メクニアが割って入った。


「彼が嘘でもつくなら奴隷紋が反応するのではなくて?」


「そんな奴隷紋が?」


シュッテ伯も興味を持った。


「そうみたい。この前も謁見の間で勝手に奴隷紋が反応してたわよね?誰かさんの嫌味に怒ったんじゃないかしら?」


そうメクニアはディネツを見ながら言った。


「私はそこら辺に興味はないけど、ただ、彼が嘘をついたらきっと奴隷紋は反応するわよ。


ユーマ、何か嘘を言ってみれば良いのよ。」


メクニアは俺に隣で視線を合わせて言った。


意識して奴隷紋を反応させるのはキツイ。


身体が強張る。


しかし、今のこの会話の状況では、やった方が良いんだろう。


しかし嘘と言っても…。


「そうねぇ。きっとこの類の奴隷紋はただの嘘では反応しないわよ。


ユーマ、ごめんね?


あなた、ディネツの事好き?」


なんていう質問するんだよ。答えられる訳ないじゃないか。


「す、好きだ。」


奴隷紋が反応した。電撃が走った。


「ほらね。嘘をつくと反応する。まぁあれだけ嫌味を言えば仕方ないわね。」


また不貞腐れた顔をするディネツ。


「もう一度質問するわ。あなた、ディネツの事好き?」


「嫌いだよ。」


そしてまた電撃が走った。


俺はのたうち回った。


「こ、これはまた…。」


シュッテ伯も驚いている。


「今度は…、感情が伴ってるから反応した。


彼は嘘をつけない。怒りや憎しみを持つだけで反応してしまう。そして言葉を発する事でも反応する。


あなた、この国を愛してる?」


メクニア、俺を殺す気か?


「愛してるよ。」


そしてまた奴隷紋の反応。


「彼は嘘をついた。この国を愛してないから反逆と受け取られてる。


あなた、この国を愛してないのに、この国に尽くすの?」


「尽くすしかないだろう…。」


反応せず。


「正直に言わないと反応する。でも嘘はつけない。国に反抗すると反応する。


でも国に従えば反応しない。


この奴隷紋、尊厳がないわね。」


メクニアが言うと、全員が静かになった。


「ゼニア。シーフが信じられないのはわかるわ。でも、これじゃあ人を騙すどころか、思った事さえ言えない状態っていう事なのよ?」


メクニアは冷ややかに言った。


「メクニア。君はこの盗人を信じるのか?」


ゼニアはメクニアに言った。


「ど、そんな事は…、どうでも良い…。」


俺はもう我慢できそうにない。


「お願いします。これから戦場にも行きますから、どうか牢で暮すのは勘弁してください。」


俺はもう奴隷紋の痛みに耐えられない。


俺は自然に土下座していた。


全員が俺の姿を見て息をのんだ。


ネネの為だ。


あんな場所で過ごさせたくない。


俺は心からそう思った。


スッと立ち上がりシュッテ伯は俺のそばに来て片膝をつき


「わかりました。ユーマ殿。私が国王に直訴してそうする事をお約束させます。


そして、私のラクリア州の最前線、ボーダで戦ってみてはいかがでしょうか?


従者の方と参られると良いでしょう。


ディネツ、それで良いですね?」


ディネツは慌てて


「は、はい。仰せのままに。」


「よろしい。ユーマ殿。お顔をあげてください。」


「ありがとうございます。」


「但し、それだけでは私がシーフに対して寛大な姿勢と取られてしまいます。


そこで条件を付けさせていただきます。


ボーダまでの道のりを、ご自身の力だけで来てくださいますかな?


ユーマ殿だけで来てください。魔物は普通にそこら中におります。


ボーダは国の最前線の一つ。そこで戦う前に、まずはボーダまで来られるだけの戦う力が無ければ、どの道あなたはボーダですぐ魔物に殺されてしまうでしょう。


途中の通行証などは私が用意します。


それが条件ですが、ユーマ殿、やれますか?」


勿論だ。奴隷紋の反応を受けた分の見返りとしては充分だ。


「ありがとうございます。やります。」


「では、頑張ってください。」


そう言って笑って部屋を出て行った。




牢に戻った。


「ユーマ様。お帰りなさいませ。」


ネネが微笑みながらそう言った。


「ネネ、もしかしたらだけど、ここを出られるかもしれない。」


「ほ、本当ですか?おめでとうございます。」


「ネネも一緒だよ?」


「私もですか?」


「俺の従者だから。当たり前だろう。」


少しだけ威張ってしまった。


「期待しないでいますね。」


確かに。


あの、シュッテっていうおじさんが本当に国王に言ってくれればだけど。


あの、ディネツがなんて言うか、確かに油断はできないな。


「ネネ。もう一つ。


ネネは、戦える?」


「ユーマ様。一応私は獣人ですが、戦った事はありません。何か問題でも?」


俺は先程の部屋の話をネネにした。


「そうですか。少し不安にございます。ユーマ様の足手まといになりそうで。」


「俺も正直自信はない。情けないけど。でも、やるしかない。」


「そ、そうですね。私もユーマ様の従者ですから。弱音を言ってる場合じゃないですね。」




数日後、俺とネネはあっけなく牢から出た。


手枷足枷も付けられずに、馬車に乗せられ、シナウのはずれ、城壁に近い小さな小屋の様な一軒家に連れて行かれた。


「きょうからここで住めとの事。一切は全て用意してある。」


それだけ言って、馬車の城兵は帰っていった。


食事ができるダイニングがあり、台所があり、寝室があり。それだけの一軒家。

家財道具はそれなりに揃っている。

家の横に庭があり、一応柵もある。


ダイニングテーブルの上にいくつもの書類、手紙、そして布袋が置いてあり、

そしてテーブルの下に何本かの長剣と短剣、そして簡単な防具が置いてあり

更に野営用の道具が二人分リュックに入っていた。


「ユーマ様。本当に?」


「たぶん。あのおじさん。本当に言ってくれたんだな。」


「嬉しいです。私、本当にうれしいです。」


「ネネが喜んでくれたのなら、なんだか俺も嬉しいよ。」


「ユーマ様。私、頑張ります。」


「俺も頑張るよ。」


そう言って笑い合った。



テーブルの上にあったのは、各都市への入城する為の身分証で、これがあると出入りがスムーズで入城税も要らないらしい。


それとボーダまでの地図。シナウ周辺の地図。


手紙には、それぞれ用意した一式の確認のための明細と、ボーダに着いた時に渡す手紙が入っていた。

準備ができ次第出発と書いてあった。


お金は銅貨100枚入っていた。¥10万円くらいか。


俺はネネと荷物の整理をしたり、家に何が必要か調べた。


寝室はあったがベッドが一つしかない。


「お、俺はあっちで寝るから、ネネが使えば良い。」


「何を言ってるんですか、ユーマ様。私こそあちらで大丈夫ですから、ユーマ様がこちらで寝ていただきます。」


お互い少し照れ合いながら、後は何が必要かな、と話をお互い逸らした。


家には風呂がない。


そもそも水は近くの井戸に取りに行く。


でも全員が井戸に行く訳じゃない。


魔法だ。


ステータスが無くても、結構な人が簡単な水魔法や火魔法が使える。


魔気が体内にある人なら大体使えるそうだ。


俺も簡単な火魔法は出た。


生活に使う程度のものなら出るらしい。


ネネがそれを教えてくれて、そのネネは水魔法も火魔法も使えるそうだ。


庭にある桶にネネは水魔法の詠唱を唱えると、手から水が出てきて桶を水で満杯にした。


「凄い。」


俺は驚いた。


「奴隷になる前から出来たので。」


ネネはそう言った。


「それではユーマ様。体をお拭きしますので服を…。」


「いやいや、それくらい自分でやるから。」


「それはいけません。私の役目でございます。」


恥ずかしさもありながら、俺は正直、ネネにしてもらいたい、ともどこかで思ってしまっていた。


俺は上の服を脱いだ。


「ユーマ様は鍛えていらっしゃるのでとても逞しいのですね。」


ネネは照れながらそう言った。


確かに魔錬もトレーニングも欠かさずにやっていた。


魔気を体内に流しながらのトレーニングだと疲れにくく、しかも筋力もそこについていく感覚もしている。


背中を向けている俺に、ネネは濡れたタオルで体を拭き始めた。


「初めてですので、ちゃんと拭けてますでしょうか…?」


「うん。」


俺もこんな歳になってこうやって体を拭いてもらうなんて初めてだから、正解なんてわからない。


「良かったです。」


黙々と一生懸命ネネは俺の体を拭いてくれている。


「そ、それではユーマ様、下の服も…。」


「いや、流石にそれは、よ、良くないよ。うん。良くない。しかもここ外だし。」


「そ、そうですよね。私ったらこんなところでユーマ様を裸にさせてしまって。す、すいません。」


「いや、そういう事じゃなくて。」


「え?」


「ああ、桶はとりあえず中に持って行こうか。」


そう言って俺は桶を持って家の中に入った。


桶は重そうだったが、結構簡単に持てた。筋トレのおかげだな。


そして、ネネには寝室に行ってもらい、俺は一人で下の服を脱ぎ、下半身を拭いた。


「終わったよ。」


俺がネネを呼ぶと、少し顔を赤らめたネネが来た。


「ネネも拭くんだよね?俺がするって訳にはいかないから、あっちで待ってるよ。」


「は、はい。」


ネネがとても恥ずかしそうにしていたので、俺も余計に恥ずかしくなって、そそくさと寝室に行った。


俺は一人寝室のベッドで横たわった。


それでも体内に魔気を溜めて流しての魔錬は絶えずしていた。


「お、終わりました。」


どれくらい時間が経ったかわからないけど、ネネはとても恥ずかしそうにしていた。


「2,3日くらいの食材は置いてるんだよね。ネネは食事は作れるの?」


「は、はい。勿論です。小さい事から手伝わされていたので。」


「俺も自分で作れるから作るよ。」


「いえ、ユーマ様はゆっくりなさってください。私は従者です。私がやります!」


そう言って簡単なスープと料理を作り出した。



俺達はそれを食べて、今日は寝る事にした。


「やっぱり、一緒に寝ませんか?」


ネネが言った。


「俺は背中を向けてるから。」


俺は狭いベッドの半分に、ネネに背中を向けるように寝た。


隣にネネがいる。


ドキドキする。


ほんの少しでもネネが動くと変な想像をしてしまう。


「ゆ、ユーマ様?もうお眠りになりましたか?」


「いや、ちょっと緊張しちゃって。」


「わ、私もです。」


俺はネネに背を向けているけど、ネネは俺の方を向いていたが俺は気付いていない。


「ユーマ様。私は…」


ネネがそう言うと


「俺のいた国ではね、16歳はまだ未成年…、大人じゃないってなっていて、その…、ネネはとっても可愛いと思うけど、やっぱりそれは犯罪って言うか…。」


俺はしどろもどろな言い訳をした。


「ドーヴァでは、16歳は大人です。子供も産めます。」


「確かに。確か俺の国でも、女性は16歳で子供は産めるから、ちゃんとした関係なら良いんだけど…。」


ああ、こんな言い分けじゃあ駄目じゃないか。


認めてしまう事に。


「それでは、良いのでは?」


ネネがなんだか少し近づいてきた気がした。


心臓の鼓動が止まらない。


恋愛とか付き合いとか、そんな経験を日本ではしてこなかった。


どうしていいのかわからない。


俺はただ黙った。


「やはりユーマ様は、私が獣人だから…、ですよね?」


「いや、それは違うよ?ネネ。」


俺はハッキリ言った。


「ネネにとってはそれが奴隷とか従者とかなんだろうけど、俺にとってはネネは奴隷でもないし、本当は従者とかとも思ってない。


ただの、普通の、可愛い女の子。


獣人って、確かにネネの見た目は獣人だけど、俺は普通の女の子にしか見えてない。


だから照れるし、緊張するし。でも、獣人だからって床で寝て欲しいとか思ってないし。」


「私も、決してユーマ様をただの奴隷の主様として見ている訳じゃありません。

私はユーマ様の様に、とてもお優しいお方だから…。」



急に、俺の中で、何かがはじけてしまった。


ネネの言葉にキュンとしてしまった。


俺はネネの方へ急に振り返った。


「え?」


ネネは驚いた。


「俺、その…、初めてだから上手くないと思うけど。」


「はい。私も、初めてなので至らないと思います。」




俺はネネを抱きしめた。

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