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2話 何故?

大きな赤い絨毯が、30メートルくらい先まで続き、向こうに数段の横広の階段があり、そして大きな玉座があって、そこに一人の人が座っているのが見えた。


歩いて中に入ると、扉からは見えなかった場所、両脇に数十人の人間が立ち並んでいる。


俺達は聖職者に連れられるように、前に進んでいき、そして10メートル前くらいで立ち止まされた。


玉座には、体は小さくも豪華な冠を被り、金色のマントを纏い座っている老人がいた。

玉座の隣に立っている男、側近のジュレイが、


「王の御前である。」


そう言うと、端っこの金髪女性、その隣のイケメンが膝をついた。

片膝をつき右手を左胸に充て、少し俯いている。


映画とかでしか見た事ない仕草。


しかし隣の黒エルフの女性は微動だにしないで堂々と立っている。


俺はとりあえず金髪二人に合わせて、見よう見まねで片膝をついて、左手で右胸に手を充てた。


「私の住んでいた世界、そして私の国ではこの姿が礼儀の姿勢だ。」


言われる前に、という感じで黒エルフの女性は言い放った。


玉座の隣にいた男性が


「何という野蛮な習慣。だから黒エルフは…。」


そう言うと、王は


「良い良い。仕方ない。わざわざ来られたのだ。」


そう言うと、


「私がドーヴァ王国12代王、タリウス・ストーニ・ドーヴァである。」


その威厳に満ちた声は、その謁見の間に響き渡った。


「此度は突然の事、誠に申し訳なく感じもしている。


しかし、我々もその運命、いや命運をお主達に託すしかないものでもある。


我々のドーヴァ王国の目の前には、魔物が跋扈し、いつ我々の国も滅ぼされるかわからぬ状況である。


既に、隣のライナーク王国が魔物達に蹂躙されて10数年。


我々は生き残らねばならない。


そんな折、我が国の予言において、実際に4人の世界を救うかもしれぬ勇者達が本当に現れたのだ。


これを運命と申さずして何というであろうか。」


そう言って、王は玉座から身を起こし、階段を下りてくると、俺達の前まできて跪いた。


周りの者たちがざわついている。


側近のジュレイがやめさせようとするが、王が


「良い。」


そう言ってから


「どうか、このドーヴァを、イースロー大陸を救っては貰えないだろうか。」


すると、イケメンが


「ドーヴァ王、我々は何かの因果によって転移された者です。


しかしそれもまた運命なのでしょう。


必ずやこの国を、この大陸を平和に導く事をお約束致します。」


「そうか。頼もしい言葉である。」


そう言ってドーヴァ王は微笑んだが


「え、ちょっと待ってよ。」

メクニアが口を挟んだ。


「予言かなんか知らないけれど、私達はさっきまで元の世界で普通に暮らしていたのよ?最初から分かっててきた訳じゃない。急によ?

王様?あなたが今から急に、その魔物達のいる集落かなんかに転移させられて、それが運命だから、って言われて納得できますか?」


まわりはシーンとなった。


本当にそうだよ。

この金髪女性、もっと言ってくれ。


「…、もっともな話じゃな。」

王も言った。


「でも、実際こうやって転移させられたんだから、やらなきゃいけないっていうのも、…まぁわかる。じゃあ何か見返りみたいなのは無いのかしら?」

メクニアは言った。


すると、ドーヴァ王は後ろの側近のジュレイに目をやり頷いた。


「こちらからは当然。報酬や魔物討伐の為の資金、人材援助、住居などの支援は十分にさせていただきます。」

ジュレイは渋々の様子で答えた。


「そのお言葉が聞けて何よりです。王陛下、謹んでその依頼受けさせていただきます。」

メクニアは嬉々として言った。


金髪女性さん?

そうじゃないだろう。

もう戦う前提になってる。


「そなたは何かあるのか?」

王は仁王立ちしている黒い肌の女性に言った。


「…、今は従い戦わせていただきます。私は騙される事を嫌います。王の命令ではなく、私自身の判断で。自分で見て感じて決めます。

ただ、今はそれしかないのでしょう。お受けいたします。」


「うむ。」

王は頷き

「して、そなたは?」


王は俺をジロッと睨み言った。


答えられる訳ないじゃないか。

俺に何が出来るって言うんだ。

魔物討伐?

包丁握るのだってそんなに今も慣れてないのに?


「…、頑張ります。」


俺は小声で答えた。それしか言えなかった。


「頼んだぞ。」


王はそう言ってゆっくり玉座に戻っていき


「今日はこちらへ参られてすぐではある。急な話。ゆっくりと休まれよ。そしてまた明日、話をしたいと思う。」


そう言うと、もう一人の側近のディネツが、


「それではこちらで勇者様方のお部屋をご用意しておりますので。」


と。


「今日はゆっくり休むがよい。」


そう言ってドーヴァ王は玉座の後ろへ下がっていった。


金髪二人が立ち上がるのを見て、俺もとりあえず立ち上がった。


そしてまたその謁見の間を出て行った。




それぞれ城内客室で泊まらせて貰えるようになったが、イケメンの部屋にすぐに呼び出されて行った。

イケメンの部屋も俺の部屋と殆ど同じ作りの部屋だった。

俺が行った時には、既に女性二人もイケメンの部屋にいた。


「どんな要件だ?」

黒エルフの女性が言った。


「ああ。我々自身がお互い何も知らない、というのもおかしいだろう。名前だってわからない。ちょっと自己紹介くらいしあっても、とね。」

とイケメンが言うので


「じゃあ、アンタからしたら?」

と金髪女性が言うと、当たり前の様にそのイケメンは


「私はゼニア。ゼニア・マイルズ。ゼニアで良い。21歳。

私の世界では勇者をやっていた。

私の世界でも魔物、魔王が居て、私はパーティと一緒に魔王を倒した後だった。ちょうど凱旋して祝勝会を催していて、私は少し気分が乗らずに部屋で休んでいたら転移していた。」


「私はメクニア。20歳。向こうでは魔法使いだったわ。

私の世界にも魔族はいたわ。私も勇者パーティと一緒に魔王を倒して、私はその後国の宮廷魔術師になって。宮廷に向かっている馬車の中でこっちにきた感じかしら。」


「魔法使いで宮廷魔術師か。どうりで、何か、詳しい感じで話していたのか。」

ゼニアはそう言った。


「まぁね。さりげなくこちらでも魔法が使えるか試したんだけど…。」


そうメクニアは言うと、掌からポッと風の塊を出した。


凄い。魔法だ。


俺は「凄い。」と驚いた。


「魔法は使えるのだけれど、こっちに来てから急に、自分の魔力が落ちてる気がするの。転移されたは良いけど、なんだか弱くなってる気がするわ。」


「確かに。私も光魔法が使えない。明日から調べなくてはいけないな。」

ゼニアはそう言った。



「私はレイラ。ご存じの様に黒エルフだ。年齢は…、察してくれ。」


「エルフに年齢聞くほど野暮じゃないわよ。」

メクニアは言った。


確か、エルフは長寿だと、どの漫画の設定でもなってたが、本当にその様だ。


「私は二人とは少し違うようだ。

私の世界にも魔物はいたが、魔王はいなかった。国、民族同士で争い、私はエルフの国の戦士として平和になる未来もないような戦乱の中にいた。

前線の森の中で急に、というのが私の状況だった。」


「君は?」


メクニアにそう言われると


「僕は武田勇真。きっとこっちではユウマ・タケダになるのかな?18歳です。大学生。大学生って…、わかるのかな?勉強する人です。

僕の世界では、魔王も魔族も魔物もいなければ、エルフもいなくて。

僕が生まれる前に世界では戦争がありましたが、今はそういうのはなくて。

僕の国では特に争いとは程遠い国で。

本当に平和に過ごしてただけです。

僕には魔法も戦士みたいな特技も何もありません。

皆さんの話を聞いていると、どうして僕がここにいるのか正直わかりません。

戦った事も争った事もありません。喧嘩すらした事ありません。」


「気になるな。」

レイラがそう言うと、メクニアも

「気になる。」


「何がですか?」

と聞くと、

「僕ってなんだ?」

とレイラに聞かれたので

「自分の事です。人前では私とか俺とか言うんですけど。」


「俺、で良いじゃない?」


メクニアがそう言うと


「これから生きていくなら俺の方が良いよ?私は勇者だから良いけど。」

ゼニアも言った。


そんなもんか、と思って


「じゃあ俺で。でもみんな俺より年上だし。」


「ああ、そういうのは要らないわ。たぶんこっちの世界も要らないと思うわ。王や貴族とかには別だけど。きっと僕なんて言ったら、舐められるわよ。」


「あ、はい。ありがとうございます。」


「じゃあ君はユーマだね。」

ゼニアはそう言った。


「ユーマの世界だけは、なんだか私達と違う気がするね。争いも無ければエルフや…、獣人もドワーフも、いないのよね?」

メクニアがそう尋ねると


「居ないです。あ、居なかった。俺の国には人間以外は居ない。ただ、空想上の絵本の中には、獣人もドワーフもエルフも魔族も魔王も居たし、ドラゴンとかもいたけど。」


ゼニアが

「ドラゴンだと?そんな伝説の神獣も伝えられてるのに、人間以外いない。不思議でならない。」


「あと、ピクシーとか妖精?あとは何かな?フェンリルとか?」


そう言うとレイラが

「フェンリルの存在を知っているのか?」


「まあ、あくまで絵本の中だけど。」


「フェンリルは我らエルフの守り神。それを知っているのか。」


「なんか、やっぱり不思議ですよね?」


自分でもそう思う。


俺は思い出す限りのラノベやRPGのゲームの知識を絞り出したが、たかが知れている。


もっとゲームとかやってれば良かった。


そうは言っても、それより居酒屋メニューを覚えた方が身の為だと思って生きてたからなぁ。


そんな事を思っていた。



紹介もほどほどに、ゼニアとメクニアはなんだか気が合うようでお互いの国の事や世界の事を話している。


俺はなんだか居心地が悪くなって、部屋にあるテラスに出た。


テラスからは、城下の街並みが見えている。確か王都と言っていたっけな。

街灯もあるかわからないけれど、家の明かりがいっぱい見えて、なんだか本当に異国の世界に居るんだな、と思い知らされた。


そこに、レイラが来た。


「ユーマ。あなたの世界では、どんな人が、その…、綺麗なの?」

レイラはそんな事を聞いてきた。


「ああ。俺の世界でだったら、メクニアもとても綺麗だと思う。レイラなんかいたら、世界で凄い有名になるくらい美人だと思うよ?」


「まさか。私は肌が黒いエルフって言うだけで、蔑む存在であって、誰も見向きもしない。」


「俺の世界にも肌の黒い人はいたよ?でも格好良い人も普通に居たし、綺麗な女性も居た。ゼニアやメクニアみたいな人を白人と呼んでいて、俺とかはイエローとか言われてて。俺の世界では確かに人種差別みたいなものはあったけど、俺の国の人はそういう見方はしてなかった。だから、初めてレイラを見た時、ビックリするほど綺麗で驚いちゃったよ。」


「きっと、あなたのご両親の育て方が良かったのね。」


「いや、俺の両親は小さい頃に死んじゃって。姉も一緒に。俺はずっと一人で生きてきたよ。お世話になった人は勿論いるけどね。そういう人達に支えられて生きてきたから、まぁ感謝かな?」


「ごめんなさい。私。」


「あ、気にしなくて良いよ。でもありがとう。」


「ありがとう?どうして?」


「こっちに転移させられて、正直全然知らない世界で。僕っていうのも注意させられるくらいだから。

でも、こうやって知らない人でも、俺の両親の事とか話すと、俺と同じ世界の人みたいに、レイラも気を遣ってくれたんだって思うと、人間って、何処にいても同じ想いだなって、今のレイラが謝ってくれたのを聞いてそう感じた。」


「そう。でもごめんなさい。どの世界にも色んな人がいるけど、私は私としてあなたに謝りたいの。軽率だったわ。」


「そうハッキリ言われると恥ずかしいからやめてよ。充分だから。」


「いや、なんとなく、ユーマに嫌われたくないって思ったから。」


そう言うと、テラスにきたゼニアに


「おい、ユーマ。今日会ったばかりなのにレイラに愛の告白でもしたのかい?

レイラの耳が真っ赤だぞ。」

そう言って笑った。


「いやいやそんな事」


「レイラ、顔まで真っ赤よ。」

メクニアもレイラと俺をいじった。


「やめてよ、そんなんじゃないよね、レイラ。」


俺がそう言うと、レイラは怒って「もう休むわ。」と言って部屋を出て行った。


「あらら。怒っちゃったじゃない。」

メクニアは他人事のように言った。


「私の世界でも、きっとメクニアの世界でもだが、黒エルフは忌み嫌われてる存在。きっとここの世界もそうなのだろう。」

レイラが部屋を出たからか、ゼニアはそう言った。


「そうね。私の世界でも、本当に黒エルフはああいうタイプが多かった。まぁ上手く手懐けるしかないわね。」

呆れた感じでメクニアは言った。


俺はなんだかちょっと嫌な思いになった。




次の日、


俺達は昨日の転移された教会に行った。


そこにはドーヴァ国王、そして昨日も居た側近のジュレイ、ディネツ、そして騎士団団長のロキア、更に教皇のビンシェントがいて、更にはドーヴァ王の娘のアルメリア第二王女が居た。


それぞれに紹介を受けた後、教皇ビンシェントが


「転移されたとはいえ、こちらの世界でどの様な力があるかはわかりません。

こちらの水晶にてこちらの世界の『切り替え』をしなければ、能力も発揮し辛いと思われます。」


「確かに。私の能力も、メクニアも使えないと言ってたし。」

ゼニアは言った。


「この水晶は?」

メクニアが言うと


「これは人々の才能や能力を顕在化させる不思議な水晶です。眠っているものを呼び起こすもので、これによって特別な能力を発揮できるもの。普段はお布施をいただく事で、水晶での顕在化をさせております。」


「なるほど。じゃあ俺達が持ってるものは活かされるというお考えですね。」

ゼニアが言った。


「はい。その様に我々も想像しております。顕在化されると、特別に本人にしか見えないステータスが見えます。」

教皇がそう言うと、

「とにかくそうしてくれ。」

とレイラが言った。


さて、俺はどうなるんだろう。

元々日本で特に何の能力もなく、いわゆるFラン大学に行ってるのに。


そもそも、一日経って、俺は本当にこんなところに居て良いのかってさえ思う。

素直に皆に言って、元の世界に戻してもらった方が絶対に良い。


「あのう。」


俺は勇気をもって言った。


「元の世界に戻る方法はないのですか?」


教皇は静かに答えた。

「はい。私共々予言者様から色々お話を聞き、様々文献等を調べました。

そもそもどのような形で勇者様達が来られるのかもわかっておりませんでした。

我々には転移魔法、召喚魔法なるものは存在しておりません。

故に、申し訳ないのですが、勇者様を元の世界に戻す方法もわからないのが現状でございます。」


「そうですか。」

俺が意気消沈しているとゼニアが


「大丈夫だよ、ユーマ。みんな何かしらこの世界の役に立つ為に転移されたんだから、きっとユーマもそうなる。平和の中で生きてきたんだ。何かそう言った能力がユーマの中にあると思う。


世界を平和にすれば、もしかしたら帰れるかもしれない。」


「…、そうだね。そう信じる。ありがとう、ゼニア。」

俺はそう言って自分を励ました。


「じゃあ私から。」

そう言ってゼニアは一歩踏み出し、水晶に手を充てた。

「私はちなみに前の世界では勇者だった。」


すると、水晶は大きく光り出し、周りの人々も大いに驚いていた。


「こんなに光り輝くことなど今まで無かったであろう。」

教皇ビンシェントはそう言った。


光が収まると、ゼニアは「ああ、なるほど」と囁いた。


水晶を覗き込んだ教皇ビンシェントが「おお、やはり」と唸って


「勇者、ゼニア様でございます。」

と言った。


教皇が

「「ステータス」と心で念じると、勇者様の目の前に見えるものが有るはずです。」


そう言うとゼニアは、少し目の前を見て、なるほど、と呟いていた。そして、


「確かに私だけにしか見えないみたいですね。」


そう言うと、ゼニアは力を込めた。


すると、ゼニアから光のオーラが顕在し、ビリビリする感覚を俺でも感じる事が出来た。


聖職者達が「おお」と驚いている。


「昨日メクニアが言った通り、だいぶ力が失われているな。レベルも1となっている。レベルとは?」


「はい。こちらの世界では魔物を倒すと経験値なるものが入り、それがレベルアップに繋がります。レベルアップしていくと、自然に能力値が上がり、出来るスキルや魔法が増えていきます。」

教皇ビンシェントが説明した。


思い切りRPGの世界だ。


「流石勇者様だわ。」

と、まるで雰囲気を壊すように、猫なで声で王女アルメリアが勇者様に媚を売っていた。


王女アルメリアはまるで物語の悪女としてThat'sな感じでいた。

綺麗は綺麗だが、そのドラマや映画を見れば、この女最悪だとすぐにわかるくらいに。


こういう人には近づかない方が良い、と俺でもわかった。


「では次は私が。」

そう言うとレイラが水晶に手を充てた。


すると今度は銀色の様な眩い光が水晶から放たれた。


教皇は驚き

「け、剣聖様と。」

そう言うと、アルメリア王女以外の人々が、ドーヴァ国王でさえ驚き、


「剣聖と言えば、1000年前に現れて以降、伝説となっている存在であるぞ。」


また聖職者達が驚いている。


「確かに私もレベル1だな。修行が必要なようだ。」

レイラもその見えないステータスを見ている。


「ええ、なんかやりづらいなぁ。」

そう言ってメクニアがそそくさと水晶に手を充てた。


今度は水晶から赤い光が迸った。


「え、何?」

メクニアがそう言うと、教皇は


「魔導士、ですとぉ!」

と腰を抜かしお尻をついてしまった。


側近のジュレイが

「魔導士もまた、伝説のお人。こちらも1000年前にいらしたこのイースロー大陸を平定するのにあと一歩までとしながら力尽きてしまわれた大魔導士のヘルツェ公以来。しかも今度はお若くして予言から転移されたし者。

本当にこれは凄い事。」


「うむ。光り輝く勇者様に剣聖様。そして伝説の魔導士、と。やはり予言は正しく、そして命運なのだと我は感じておる。」

ドーヴァ国王は大いに喜んでいた。



なんだか場違いすぎる。

俺なんて昨日までただの大学生。

たとえ仮に俺が凄いステータスを貰っても、俺が付いていけない。

帰りたい。

本気でそう思う。


「では、ユーマ様も。」

そう教皇に即されて、俺はゆっくりと水晶の前まで歩いた。


レイラが俺に微笑んで頷いてくれた。


良し


そう思って俺は水晶に手を充てた。


すると、水晶からは最初何の反応もなく、皆が少し異変を感じていると、急に凄まじい勢いで黒い光が放たれた。そして更に、その黒い光はやがて紫色にも変わり、黒と紫が畝って混在するような輝きを放った。


恐る恐る水晶に目を向けた教皇ビンシェントは


「し、シーフ。ぬ、盗人です。」

そう言ってポカンとした。


俺も


「シーフ。盗人?」


そう言うしかなかった。

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