イヴリース視点:逮捕
そして正門につくと、街のみんなが勢ぞろいしていて、しかもメインストリートには大量の料理が並んでるのが見えた。
そして、皆が、「魔王様、誕生日おめでとう!」って言ってくれたことで、今朝からの違和感が腑に落ちた。
みんな、この準備をしてくれてたんだ…!
そう思って、胸が熱くなっていた私を、現実に引き戻すメグル。
何となく、悪いこと考えてる気がしたので、皆には見えないようにパンチを食らわせた。
「げほっ」
「あら、メグル大丈夫?」
「……なーんと白々しい。あと、心読むなし」
「ってことはやっぱり、何か失礼なことを考えてたのね?」
言質も取ったところで、みんなのところへ降りていく。
メグルもついてくると思ったら、……あれ? 消えたわね。
ま、いっか。そう思って、気持ちを切り替えて料理を食べつつ皆との会話に花を咲かせる。
「魔王様ももう、17ですか」
「早いわねー、この前まで赤ちゃんだったのに」
「ホントにな。俺も女房も年取るわけだ」
………こ、この人達…
乙女の年齢をズバズバいうとは、どーゆー了見よ。
メグルなら単純に殴って解決、ってできるのに……。ある意味こっちの方が大変ね。
そう思いつつ、会場を回っていく。
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しばらくして、会場の一部がやけに騒がしいことに気が付いて、そっちに行ってみることに。
するとそこには、料理を食べているメグルがいた。
それだけならまだいいのだ。
そのメグルは、いつの間にかマスクを外していた。
メグルが人間だって初めは気が付いていなかった皆も、(あの食いっぷりは目立つから)それを見て気が付く。
人間だ、ってね。
そして周りから、
「……何のために来たんだ? そもそも、なぜいるんだ?」
「人間の差し向けた刺客か!?」
「いや、また戦争が始まるのかもしれない」
「殺せ、殺される前に!」
「害をなす前に捕まえろ!」
っていうような声が出るのも必然。なのに、騒ぎの中心にいるメグルはそんな事お構いなしに食事を続けている。
仕方がないので、他の人が動き出す前に「私が行って、捕まえてくるわ」と宣言して、メグルに近づいていく。
「はいメグル、そこまで。
それ以上食べたら他の人の分がなくなるでしょ!」
「げっ、リースか……何すんだよ、せっかく人がおいしく食べてたってのに。
僕は、食事という名の大事なミッションの真っ最中だったんだよ?」
「そんなの、見りゃ分かるわよ。
私は、他の人の分がなくなるからやめなさいって言ってんの」
「分かった。とりあえず全種類制覇させて」
手荒なことはしたくないのでまずは言葉で説得を試みる。
…けど、全く理解してないわね、自分の置かれた環境の事を。
「……全くわかってないんじゃん!?
とにかく、もう食べんのは禁止。……ほら、行くよ」
「えー、やだ」
「全く…。聞きわきのない奴め。硬直魔法」
「なっ——」
聞き分けのないメグルを連れて、お城の地下牢へ。
独房の入り口にかかっている、魔力吸収結界を解除して、メグルをそこに放り込み、結解をまた発動させてから魔法を解除する。
するとメグルは開口一番、「何さらしてくれとんじゃボケェ!」ってさ。
全く……どうやったらこんなに鈍感になれんだろう?
危うく、殺されてたかもしれないのよ!?
「あんたがずっとご飯食べてたのがいけないんでしょ?
あまつさえ、その仮面を途中で投げ捨てやがって!」
というと、メグルは考え込む。
そして、たっぷり10秒ほど考え、顔を上げる。
「……ああ、あのリザードマンみたいな」
何ともとぼけた発言……
「それよ。今してる?その仮面」
「してないね」
「何満面の笑み浮かべて言ってくれてんのよ!?
あんたが能天気に食事してる間、こっちは大騒ぎだったんだから。『人間が出た!』ってね」
「そうだったのか。
途中から周りに人がいなくなって、てっきり僕に遠慮してくれてるのかと」
「……それもあるかもね…」
もう疲れたよ…。そう思っていると、今更ながらにメグルが、ここがどこか聞いてくる。
当たり前だけど、牢屋だ、と返す。
するとメグルは絶句し、そして叫ぶ。
「………。
….…なんで僕が牢屋に入ることになってんだよ!?」




