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異世界で必要なものは運だけでした。  作者: 白昼夢
二章 新たな種族とメグルの夢
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イヴリース視点:思い出したこと




「えーと、…気がついたら話せてました?

 あと、お城に入ってきたのは誰もいなくて仕方なく。僕は怪しいものじゃないです」


……うん、つっこみどころが多すぎる。

まず、言葉っていうのは気が付いても話せたりしないんだよ?

そこの追及はもう置いとくとしても、なぜに自分の罪を自白したの?


だぁれもそんな話はしてなかったはずなんだけど。……自白したことで、メグルに何かメリットがあるわけでもなさそうだし。


……ま、自白してきたんなら答えてあげるわよ。


「知ってた。

 私達魔族は人間に悪感情を持ってるって言ったでしょ?

 そもそもここに来た時点で真っ当な人じゃないってことくらい分かるわ」


「そうだったのか…」


「ま、私は別にそんな感情はわかないけどね。話してて悪い人じゃなさそうだったし。

 だから今すぐどうこうしようとかは思わないわ」


「………。…!…やった、助かったありがとう!」


そう言われて、満更でもない私に、メグルが近づいてきたと思ったら、抱きしめられた。

っ、ちょっと!? メグル!?

顔が熱い。今までこんなことされた経験なんてない。

小さい頃に夢に見た、竜を乗りこなす騎士の人の話。

その人に、迎えに来てほしいと思ったことが、唐突に頭に蘇る。

でも、とりあえず離れてもらおうと思って、声をかける。


「……メグル、そろそろ放してくれない?」


その声に反応したメグルは、私から勢いよく離れて、顔を真っ赤にする。

……あれ? 今まで自分が何してたのかに気が付いてなかったのかな?

って、そんなわけないか。


「ごめんっ!」


メグルが謝って来たけど、照れ隠しに突っぱねる。


「……前言撤回。メグルは悪い人じゃなくなかったわ。

 …スケベ!アホ!間男!!」


「…リースさん、ほか二つは認めるとしても、アホはなくないっすかね?」


「あんたはアホじゃないのよ!?

 誰にも声を掛けずに街に入って来たことでしょ、お城に不法侵入して、あまつさえ部屋をのぞいて回った事でしょ、そして何より、このかわいいイヴリースちゃんを、会ってすぐにキズモノにしたじゃない!?

 それをアホというのよ!!」


「あーにが傷物だぁ!?たかが抱擁くらいで一々大げさなんだよ!!」


「全く反省してないわね!?

 なに?また殴られたいわけ!?」


なんだかんだ言って、メグルとはこの距離感がちょうどいい。

こいつには、竜騎士なんて似合わない。

きっと、非日常を運んできてくれたメグルに、少しだけ憧れちゃってるだけなんだ。


そんなことを思いながらメグルに圧をかけていると、慌てて言ってくる。


「おいやめろ!こっちだって刀を抜きたくはないんだよ!!」


「ほー?素手では私に勝つ自信がないと……?

 やーい弱虫!!」


「てめえ言わしておけば……

 剣聖の弟子である僕をなめてかかった事、後悔させてやる!」


メグルはそういうと、腰につけていた変わった形の、あれは…武器かしら? を外して向かってくる。

少なくとも、その辺の理性は残っていたようで一安心。


あと、私の魔法と体術に、あなたごときが勝てるかしら?

そう、余裕で迎え撃った私だったけど、何分メグルの力と体捌きがすごくて、意外と苦戦した。

とはいえ、圧勝と言って差し支えない勝ち方だったけどね。

メグルに馬乗りになった状態で決着がついた。


「このか弱い乙女に負けた今の気分は?」


「最悪……」


そういうと、メグルは跳ね起きて、その拍子に転げ落ちた私に指を突き付けて言う。


「冒険者歴3週間のこの僕をなめるなよ!?」


「言ってることがさっきとまるで違うじゃん。さっきの自信はどこ行ったのよ、『剣聖の弟子』さん?」


「くっ、忘れろや!」


「絶対忘れないわよ。ずっとからかってやる!!」


そんな話をしていると、扉の向こうからリオンの声がした。


「魔王様、お城の門まで来てください」


その声に反応して私は出ていこうとしたけど、その途中でメグルが縋り付いてくる。


「リース、この不法侵入の間男のことを、匿ってくれ!!頼む!」


……まあ、メグルは人間だしね。

去年の仮装大会(企画は私)の時に使った、リザードマンマスク。

それを引っ張り出してきて、メグルに渡す。


「……何とかしてあげるから、取り敢えず当たり障りのないことで会話してなさい」


「……了解」


言っておいて、何とかって何よ!? と自分の中で声がする。

仕方ないじゃない、もう打ち合わせなんかしてる暇ないわよ。アドリブで乗り切るしかない!

あっ、メグルに、そのマスクを外さないように言わないと。

そう思って口を開きかけた矢先、待ちかねたリオンに再度呼び掛けられる。


「急にお部屋に閉じ込めたからと言って拗ねないでくださいよ」


「拗ねてなんかないわ」


流石にこの後も部屋にこもっているのは怪しいので、扉の前に立ち開ける。

もうロックは解除されているようで、部屋の扉は内側からでもすんなりと開いた。


メグルと共に部屋から出ると、案の定リオンの懐疑的な視線が向けられる。


「おっと。あなたは?」


とっさに二人して口をつぐんでしまうと、より疑いの視線が強まった。


「あなたの種族と名前を答えなさい。

 ……魔王様を害してはいませんでしょうね?」


「名前はメグルです。種族は、……」


聞かれたメグルが、うろたえたのがわかったので、助け舟を出す。


「メグルはそんなに悪い人じゃないから大丈夫。

 暇だったから、廊下を通りかかったところで捕まえて、ちょっとの間話し相手になってもらってたのよ」


もっと追及されるかと思ったけど、リオンはほかのところに引っかかったらしい。


「そうでしたか。…魔王様は、そのおかげで私たちがどれだけ大変な思いをしたかご存じないようで」


「…?何があったってのよ」


部屋に閉じ込められていた私には、何の話か見当もつかない。

でも、その言葉の端々からリオンの疲れと怒りが見て取れるわね…


「人手が足りなくて、冗談抜きで魔物の手も借りたいぐらいだったってのに!何でここで貴重な労働力を捕まえてたんですか!」


いつもは温厚なリオンの乱暴な言葉遣いに、私は、取り敢えず謝るという選択をした。


「…なんかよくわからないけど、ごめんなさい」


「分かればよろしい」


そう言って、いつもよりも頼りない足取りで歩きだすリオン。

よっぽど疲れてるのね……

そんなことを思っていると、メグルがリオンに耳打ちして、リオンもメグルに返答する。

あの二人、今日初めて会ったはずよね?

ちょっと気になったので聞いてみた。


「どうかした?」


「誕生日おめでとうございます、魔王様」


メグルがかしこまった口調で言って来たので、笑いをこらえて答える。


「ああ、そういえばそうだったわね。ありがとう」


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