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異世界で必要なものは運だけでした。  作者: 白昼夢
二章 新たな種族とメグルの夢
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イヴリース視点:会話




鬼人族の人を殴って気絶させてしまった……

少しの間やりすぎたことに対して反省して、即心を入れ替えて次の聴取対象を見つけに行く。


この時間だと、…お昼ご飯の準備のために、厨房には人がいるだろう。

そう判断して厨房に向かう。


すると途中で、レオンがこっちに来た。

レオンは、猫の獣人で私の側近? 参謀? みたいな扱いの人。

種族的な特性もあってか身体能力が高くて、しかも頭の回転も速いからお仕事の時に頼りにしてる。


よし、聞いてみよっと。


「ねえレオン、ちょっと聞きたいんだけど。」


「ああ、よかった魔王様。探したんですよ。 

 何でも、この後大事な用があるとかで、お部屋で待っていてほしいそうで」


「そう。お父様が言ってたの?」


「ええ。なので、すぐにでもお部屋に戻って頂けると助かります」


そう言いながら二階へと歩いていくレオンの後をついていく。

部屋にたどり着くと、「絶対にお部屋から出ないでくださいね。絶対ですよ!」と言い残して行っちゃった。


そこまで言われると気になるわね。

ぜひとも言いつけを破って部屋から出たい、と思ったんだけど……

扉があかない。

アイツ、オートロックで外からしか開けられないようにしやがったわね…!

許さないんだから! 扉を開けた瞬間に拳の一つでも打ち込んでやるわ!


そう決意して扉の前に立ち、開くのを今か今かと待ち構える。


しばらく待って、足音が聞こえてきた。そして扉が動く。

レオン、よくも私を閉じ込めたわね? この罪は重いわよ……!


そう思いながら腕を固めて、顔面に拳をたたきこもうとして——。

あっ、この体勢だと顔面に拳を叩き込めないじゃない! ミスった!


「何すんだ!」


「それはこっちのセリフよ!

 魔王たる私を部屋に閉じ込めて、一体何するつもり、な…の……?…」


言ってる途中で気が付く。

レオンじゃなかった。ヒートアップしてて気が付かなかったけど、この人はレオンじゃない。

ちょっと待って。


………私、今、全く関係ない人を拘束してる?

やばっ、謝ったら許してもらえるかな?


もし私の知らない人だったらやだな、そう思ってよく見てみるも、その人には何の特徴もなかった。

獣人特有の耳も、リザードマンの鱗も、私たちみたいな翼も何もない。


そんな種族は、魔族にはいない。

この人は、あれだ。


「人、間…?

 ここにはいないはずなのに……」


そう、この何の特徴もない、という特徴を持つ人類種。

それは、お伽噺の中でしか見たことも聞いたこともなかった、人間。

この森を超えた先に、住んでいると言われる破壊の権化。


ヤバい、距離を取らなきゃ。

いつ攻撃されても不思議ではない。何せ、伝え聞いてきた話では魔物よりも恐ろしい、意思疎通不可能な野蛮な種族だってんだから。


そう思って飛び退り、ソファの向こうに飛び込んで恐る恐る覗き見る。

今まで、人間と仲良くしたいと思ってたけど、いざ対面してみると恐怖心の方が湧き上がってきちゃって、それどころじゃない。


それでも、ここで暴れさせるわけにはいかない。

この城を壊されてしまえば、いざという時に籠城することができなくなってしまう。

一周回って冷静になった頭でそこまで考えて、口を開きかけた時。


「あ……悪魔…?」


そう言われた。人間に。

考えるより先に体が動く。

手に触れたクッションを掴み、即座に投げる。

そんなことを言うやつは、誰であろうと乙女の敵よ! ついでに、私の部屋に入ってきたことも許さないからね。


そんな思考のもと投げたクッションは、見事に人間にクリーンヒットして、1メートルほど吹き飛ばす。


「いや、どんなパワー!? そして、なんの嫌がらせ!?」


「なんの嫌がらせだと!? そんなの分かり切ってるでしょ!

 人を種族名で呼ばないで! あと、人の部屋に勝手に入ってくんな、この蛮族!」


言ってから気が付く。

あれ? この人間、意思疎通ができる、と。

でもそんな気付きも、次に放たれた言葉の前に霧散した。


「じゃあなんて呼べば良いんだよ!? 名前も知らないのに、呼びようがないじゃねえか!!

 あと、部屋に入ってきたのは不可抗力だ! お前が引きずり込んできたんじゃないか、被害者はこっちだよ!

 この暴力ゴリラ!!」


ぼ、暴力ゴリラ…?

言葉の暴力を受けて一瞬固まった私は、油を注がれた火のごとく燃え上がる怒りのままに動いた。

今までで一番と思えるほどのスピードで人間に接近し、その顔を掴む。


「あん!?人間、私の目を見て言ってみなさい、もっかい、同じことを!!」


後で思い返しても、かなりの威圧感だったと思うんだけど、人間ときたら、ふてぶてしくも言い返しやがった。


「近い近い近い!!

 そしてその注文はムリ。……今言ったこと、覚えてないから」


かっちーん、と来た私は、そのまま拳を打ち込もうとして気が付く。

あれ? 人間を全力で殴って殺したら、ぐちゃぐちゃになって種族の判別がつかなくなって、そしたら私捕まっちゃうんじゃね? と。


仕方がないのでその辺に落ちていたクッションを拾い、滅多打ちにする。

そうしてるうちに怒りも収まって来た。


「ふん。参ったか」


「参った参った。うん、ホントに………ゴリラ(ぼそっ)…」


「あんだとてめえ!?全く反省してないじゃない!この人間!!」


素直に降参してくれたから、怒りを収めようとした瞬間のゴリラ発言よ!

確かに今腕力で解決したのはゴリラっぽかったけどさ、……っぽかったけどさ。


図らずも認める形になっちゃって、何で私は魔法を使わなかったの? と後悔した。

そしたらもっと楽に制裁を加えられたのに。ゴリラっぽくもなんなかったのに。

畜生! 半ば八つ当たり気味に人間の胸ぐらをつかみ、揺さぶる。


人間は全く動じない。どころか、「一つ言っていい?」なんてぬかしやがった。

……でもまあ、こっちにも非はあるし…。まあ、言い訳くらい聞いてあげないこともないか。


「弁明なら聞くわよ?」


「それでは。……人間って言うな、僕には、メグルっていう立派な名前があるんだよ!

 ついでに初対面の人間をフルボッコにすんな、この悪魔!」


弁明どころか、全く反省してない人間の、厚顔無恥な発言。

っていうか、また言ったわね、悪魔って!

そう思って、感情のままに言い返す。


「フルボッコにした件は反省しないわ。あと、クッション使ってやったでしょ。素手だったらこんなもんじゃないわよ?

 そして、私にも、イヴリースっていう、立派な名前があんの!!この高尚な魔王様の事を、種族名で呼ぶんじゃない!」


「あぁん!?お互い様だろうがリースちゃん?

 ……って待って、お前、魔王なの!?」


勢いよく言いきって、慌てたように今更な確認をする人間…メグル。

ふん、ざまあみろってのよ、少しスッキリしたわ。

あ、でも、『シバ』と混同されるのは嫌ね。


「リースって呼ぶな馴れ馴れしい。

 あ、勘違いしないでよね?私、魔王だけど魔王じゃないから」


「……??」


あっ、頭にハテナがいっぱい浮かんでる。

ついでに、この辺で少し意趣返ししてやるのも悪くないわね。

恩着せがましく説明してやろうっと。

そんなことを考えてると、メグルの頭にビックリマークが浮かんできた。


まずい、私の言おうとしたことに気が付いたか? そしたら意趣返しできなくなる。

そう思ってると、的外れなことを言い出したメグルに、ずっこける。


「魔王の娘だから、まだ魔王じゃないってこと?」


「ちゃうわい、れっきとした魔王よ私は!

 もし知りたければ、頭下げたうえで『お願いします』って言えたら、教えてあげてもいいわよ?」


「この……お願いします(ぼそ…)…クソッ、弱みに付け込みやがって」


「んん?聞こえないわよ?もっと大きな声で」


しょうがないわね、私は優しいからせつめいしてあ・げ・る。

取り敢えず何も知らないメグルには、魔族のお伽噺を教えてあげた。

ついでに、こんなの常識だよ、とか、知らないんだー、メグルってバカ? とか言ってやったら、あっちも言い返して来たから全く話が進まなかったじゃない。


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