イヴリース視点:違和感
数奇に満ちた出会いがあることに関係なく、次の朝はやってくる。
「ふあ~ぁ、よく寝た」
朝起きた私は、着替えを済ませてダイニングへと向かう。
「みんなおはよう」
「「おはよう(ございます)、魔王(様)」」
いつも通りの挨拶を済ませ、席へ着く。
何時ものことなんだけど、基本的にお肉を使った料理だから、毎日の食事にこれといった目新しさはない。
まあ、美味しいからそれでいいんだけどね。
と思っていると、今日の朝食が運ばれてくる。
コックさん、私が寝てる間にも働いててくれてるのよね、もう足向けて寝られないわ。
「あら?いつもよりも豪華な気がするけどどうしたの?」
内心で感謝をしながら料理に目を向けて、少し気になったことを聞いてみる。
「それは、今日が魔王様のおたん——」
「何でもないわよ、いい食材が手に入ったから」
すると、答えてくれようとした配膳係の人の口をふさいで、何かをごまかすように言うアンビーさん。
あ、アンビーさんっていうのは、気さくな性格な私の乳母さんね。
毎朝魔王ちゃん、って言われるのは思うところがあるけど、何を言っても「いいじゃない、かわいいんだから」で躱されちゃうのよね……
それにしても、何を隠しているのかしら?
頭をひねってみても、心当たりはない。
まあ、心当たりがないってことは、大したことじゃないか私の関わっていないことの話かだろう。
じゃああんまり考えなくても平気かな?
そんな事を考えつつ、完食する。
いつも通り仕事が待ってんだろうなー、そんなことを思いながら席を立ち、執務室へ行こうとしたところで呼び止められる。
「魔王様。先代様からの言付けです。
今日くらいは俺が代わりを務めてやるから自由に過ごしてくれ、とのことです。」
「あ、……分かったわ」
何でよ?
いつもなら、めんどくさいからお前がやれ、俺は肉体労働の方が向いてるんだ、って言ってくるような人なのに。
どういった風の吹き回しかは知らないけど、厄介ごとのにおいがする……
……まあ、考えてても分からないものは仕方ない。せっかく手に入れた休みだし、久しぶりに街に出てみようかしら。
そんなことを考えつつ、身支度のために自室に向かう。
しばらく服とにらめっこしてから出てきたリースは、魔王城の正門へ向かって歩いていく。
それにしてもこのお城、外観だけは立派なのよね。
真っ黒の見た目にたくさんの尖塔のついた無駄にデカいこのお城。
主にモンスターパレードの時の襲撃から身を守るために、アダマンタイトの外装にしてあるから、黒い外観は仕方ないにしても、この広さじゃねぇ。
魔国の国民全員を収容できるように作ってある、って聞いてるけど、それにしても限度ってものがあるでしょ。
広すぎて、お城の中を歩くだけでも疲れるし、城内は二階を除いて開放してあるのに、ほとんど誰も来ないからはっきり言って持て余してんのよね、この広さと強度だけが取り柄みたいなお城。
そこまで考えて、ようやく正門までたどり着いた。
まったく、ほんっと広いんだから……
そう愚痴を言いたくなる気持ちは抑えて、せっかくの外出なんだから楽しくいこう!
そう思ってたのもつかの間、いざ街に出てみるとだぁれもいなかった。
何で? 今日はなんか、おかしい気がする。というか、絶対おかしい!
アンビーさんもなんか隠してたみたいだし、急に仕事がなくなるし、皆が家にこもってるし。
どう控えめに見ても、これは異常事態よ!?
お城には人がいたんだから、適当な人を捕まえて吐かせるわよ!
そう決意してお城に戻った私は、普段はあまり見かけない鬼人族の人を捕まえて、拘束魔法で締め上げる。
「みんなして何を企んでるの?
教えなさい!」
「うぐっ!………言えません…先代様のご命令です」
「……」
なに考えてんのよクソ親父! 私をのけ者にすんのはやめなさい!?
もしかして、仕事引き受けたげるって言ってたのはこのせいか!? 有難迷惑だってんだよ!!
心の中で思う存分叫んだあと、できる限り優しい声色を意識して言う。
「教えてくれてありがとう、じゃあほかの人に聞いてみるわ」
「……魔王様が悪魔族の資質に目覚められた…怖え」
「………」
ボゴッ!
すごく何というか、私に似合わない言葉が聞こえた気がしたので、聞き間違いかと思ってつい一発殴っちゃった。
…ピクリとも動かないけど、大丈夫よね?
鬼人族の頑丈さを信じよう。




