つかまりました。
マジか……今まで17年くらい生きてきて、こんなとこに閉じ込められたのは初めてだなあ……
っていうか、僕、なんも悪いことしてなくね?
グレーゾーンに入りそうな”あれやこれや”は、全部不可抗力か偶然かのどっちかだったよね。
まず検問も受けずにこの街に入ってきちゃったのは門番がいなかったからでしょ。
お城に入っちゃったのは人がいなかったからで、リースの部屋に入ったのはこいつのせい。
他に何か悪いことした覚えもないんだがな……
「ねえリース、黙ってないでなんか言ってくれ。
僕、なんか悪いことした?」
「あなたは、悪いことはしてないわね」
「じゃあなんで僕が捕まることになってんだよ!?」
「……まあ、しいて言うならあなたが人間だから、かな」
「……人間だから」
そうか。
そういうことか。
この前リースから聞いた話では、人間は魔族の事を迫害してきた歴史があるらしい。
それどころか、二百年前までは、永きにわたって戦争が起こってたんだったよな。
そんな中で膨れ上がった、人間に対する負の感情。
もう二百年もたっているから、とかじゃないんだ。
記憶が風化しても、事実は事実として残る。
そしてその事実は、人間への恐怖と恨みに変わるのか。
目の前に人間がいる訳でもない。
魔族の国と、一番近い場所に位置するエルガルド領にいてさえ、魔族の話を聞かないんだ。
それは、こっちの人たちも同じだと考えられる。
きっと、人間と会ったことのある魔族の方が少ないだろう。
リースの、初めて会った時の反応からも見て取れる。
そうなったときに、人間は怖いもの、そういうイメージを持たれても不思議ではない。
何せ、噂とかそういった類のものは独り歩きするものだから。
だったらこの扱いもうなずける。当然の処遇だよな。
いや。むしろ、問答無用で処刑、とかにならないだけいい方なのか。
そこまで考えたら、なんか力が抜けちゃって、僕は、牢屋の壁に背中をあずけて、上を向いた。
ああ。
この国では、人間って怖いものなんだね。
戦争で同族を傷つけたうえ、住処を追いやった野蛮人。
「……ふふっ」
その評価は奇しくも、エルガルドにいたころに聞いた、魔族への評価と一緒じゃないか。
知らないものは怖い。
知らないから怖い。
経験してもいない歴史と照らし合わせて、互いに嫌悪し合う。
なんて滑稽なことなんだろう。
思い返してみると僕も、この前までは、魔族の事を野蛮人だと思っていたんだっけ。
本当に、滑稽だな。
出会ったのは今日だけど、その短い付き合いでも分かった。
この人たちは、いい人だ。
思い込みで避けているのがもったいないくらい、いい人たちだ。
リースの誕生日を町中で祝い、見知らぬ人とも協力してケーキを作り上げる。
手間を惜しまず、愛情を込めて作ったんだろうな、ってことがわかる料理の数々。
なんなら、人間の方が人情味に欠けているかもしれない。
そう思えてきた。
こんな人たちを、悪く思っていたなんてな。
今となってはとんだ笑い話だよ。
…………これから、僕はどうなるんだろうな……
「ねえリース、僕はどうなるんだ?」
「メグル。
……あなたの処分は、三日後に開かれる元老院で決定すると思うわ」
「そうか」




