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異世界で必要なものは運だけでした。  作者: 白昼夢
二章 新たな種族とメグルの夢
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ケーキを作ってました。

こっちにしよう。


そう思って僕が向かったのは、上に載せるフルーツを切ったり剝いたり全力で叩きつけたり(←!?)している人のところだ。


これは後で知ったことだけど、叩きつけられていたのは、アイアンフルーツって名前の果物。

名前の通りめちゃくちゃ硬くて、そのままじゃ食べられないんだけど、繰り返し打撃を与えることによって柔らかくなるらしい。

そしてその歯ごたえは固いグミとアイスクリームを合わせたような感じで、新しくておいしかった。


で、その人たちに声をかける。


「僕にも手伝わせてください」


「助かった。もう速攻でこの山の下ごしらえしなきゃいけないんだ、切実に魔物の手も借りたいくらいだったからマジで助かるぜ」

とのこと。

それもそうか、ケーキの生地に生クリームを塗るとこまで行っておいて、フルーツがないってのもあれだもんね。


そしてそのリザードマンらしき人の目線をたどると……おお、すごい山。


さて、ちょっとトイレへ行ってくるか。

そしてもう戻ってこない方針で。

そんなことを考える。


けど、やんないわけにはいかないだろうな…

なんせこの、期待に満ちた視線……


よし、久しぶりにいっちょやったるか。

実は僕、日本にいたころ沢山料理したから、包丁さばきには自信があるんだよね!

そう活を入れ、作業を始める。

下ごしらえした果物から順にケーキに使われて消えていく。

 ・

 ・

 ・

一生懸命に、借りた包丁を振るうことしばらく。

やっと、すべての下ごしらえを終えることができた。


はぁ、疲れた。


息を吐きながら後ろを振り返ると、天井ぎりぎりまでの高さの巨大なケーキが鎮座していた。

真っ白に輝く生クリームを、さっき切ったフルーツが彩っている。

こんなの食べるのがもったいないって程のクオリティーに仕上がっている。

いや全く、これを見てるとついさっきの苦労もへでもないって感じになってくる。


それにしても、せっかくケーキが美味しそうなのに、それが出来上がっていくところを見逃すなんて。

なんてもったいない事をしたんだろう。


あわよくば味見したかった……


でも、やっと仕事が終わった感じだ。

良かった、これであの美味しそうな料理を食べれる。どんな味か、楽しみだな〜。


そう思いながら厨房を出て、階段に足をかけた時、はたと気が付いた。



……あのケーキ、でかすぎて厨房の入り口の扉から出せなくね?


よく考えてみれば、いや、よく考えずとも、天井に届くくらいのケーキを運び出すのは無理があるよね。

みんなはどうするつもりなんだろう?


気になったので見に行くことに。


厨房に戻ると、中では割れんばかりの大拍手が起こっていた。


まあ気持ちはわかるよ。

でもそれ、ここから動かせないよ。ほかの人に食べてもらうどころか、見てもらうことすらムズいよ。

お城の厨房って、あんまり人を招くような場所じゃないよねぇ。

大丈夫なのか?


「君ももっと喜びな。

 この後、大広間で街のみんなに切り分けちゃうんだから、今のうちにね?」


流石に僕がただ突っ立っているのを見かねたのだろう。近くの……この人の種族は何だ?

額からきれいな角が一本生えている、ピンクの髪の女の人だけど…。


まあいいや、種族名は置いといて。とにかくその人が声をかけてくれた。


運び出せないこと、言うべきか言わないべきか。

この場に水を差すようで悪いかな。いや、でもどうせ運び出すときには気づくんだし、言っちゃえ!


「あの、このケーキどうやってこの部屋から運び出すんです?」


「それはねー、きっと、………。ちょっと料理長に聞いてくる」


そう言って一番奥にいた、屈強な男の人の方へ行くお姉さん。

僕もついていく。


この男の人、オーガとかそっち系の魔物の感じがするな。

常人とは思えない、めっちゃ屈強な肉体。あと、手にはデカい泡だて器。

生クリームが付いてるってことは、さっきボウルを抱え込んで泡立ててたのはこの人だったのね。


お疲れ様です。


そんなことを考えながら見ていると、お姉さんが口を開くごとに絶望した顔になっていく。

すごく面白い顔芸だな。もはやお笑いの新たなジャンルを確立しそうだ。


そして最後には真っ白く燃え尽きた。


「なんと、最後の最後で落とし穴が……」とか言ってるけど、普通に考えればわかるよね?

そもそも、天井に届くくらいに大きくしたのが間違いだったんだ。


「魔王様への親愛の情を込めているうちにどんどん大きくなってしまったのか…」


その言葉と同時に膝をつく料理長。


最早呆れを通り越して心配になって来たよ。ホントにこの人が料理長でいいの?

まあ料理の腕はいいのかもしれないけど、こんなんで大丈夫なのかなあ?

メニューとか、破綻してない?


そんなことを思って眺めていると、周りの人たちもおんなじよーな反応をしていることに気が付いた。

全く…誰も気づかなかったの?このケーキが運び出せないことに?

おかしいって……


とまあそう考えるわけですけど。

ずっとこの状況でもいられない。そろそろこのコントを打ち切ろう。


もうちょっと見ていたかったけど、床に倒れ伏しているみんなに向かって声を張り上げる。


「あの、そんなに悲観することないですよ……多分」

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