裏側:お城の街
お城の街、裏側
「今日は魔王様の誕生日。年に一度の誕生日だ。みんな受かれてんなー。
でも、それもそうか。あのかわいい魔王様の誕生日ともなれば、皆気合も入るってもんか。
…かくいう俺も昨日飲みすぎて二日酔い気味。ふあ~あ。やばいトイレ。って、トイレ街中にしかないじゃないか。急がなきゃ!」
誰にともなくそう言って、門番がトイレに行く。
その直後。
門番がトイレへ行くために開け放った門に向かって、歩いてくる人影が一つ。
メグルである。
「……あれ?誰もいないな。不用心過ぎないか?
でもまあ…誰もいないし、勝手に入っていいんだよね………」
そう呟き、家々の立ち並ぶ、街の中へ勝手に入っていった。
そのころ、とある一軒家の中では。
「今日は、魔王様の誕生パーティーだ。
魔王様も食べる料理を、皆で持ち寄る伝統だからな、腕によりをかけていっぱいご飯を作るぞ!」
「りょうかい、パパ!
でも、ママはどこ行っちゃったの?」
「ママはな、魔王城へ、大事なお仕事をしに行ったんだよ。いまごろは、特大ケーキを作ってると思う。去年は俺がその役だったし。
だけど、今日の夜か、明日の朝には帰ってくると思うぞ」
そう言って、親子は仲睦まじく料理を作り始めた。
魔王様の誕生パーティーでは、街の人が自分たちで一品ずつ料理を持ち寄ることになっている。
それをみんなで食べるのだから、近所の人たちのためにも、手は抜けない。
皆、一心不乱に食材と向き合っている。
窓の外、大通りをふらふらと歩いてくる者には、気づかないほどに——
「……でも、誰もいない………」
メグルはそう呟き、そのままお城の方に歩いていく。
そのころ。お城の地下にある、厨房では。
「おいみんな、こっちだ!大広間の飾り付けが間に合ってねえ!」
「大広間は後だ、後!最悪、パーティー中にやればいい。
魔王様、パーティー中は大通りに出て、料理を食べてるはずだ」
「こっちのケーキの材料を運ぶのも手伝ってくれ!」
「誰か手、空いてる?」
「いや!みんな忙しすぎて無理だ!」
「魔王様のサプライズのために、町中から動けるやつを全員集めたってのに」
「もっと呼んできますか?」
「ダメよ。そんなことしたら、この後のパーティーの料理を作って並べる人が足りなくなるわ」
「あー魔王様がこっち来ちゃう!だれか気をそらして!サプライズが台無しになる!」
「俺が行く!なんか理由付けて部屋に返すから、皿洗いやっててくれ!
すぐ戻る!!」
「ああっ!パーティー用に大通りに並べるテーブルとテーブルクロス、忘れてた!誰か物置からとってきて」
「後でも行けるか?
それ、人手が必要だろ。今取られたらかなりきつくなる!」
「いや、もう運ばないと間に合わない!」
「じゃあ私たちが行くわ」
「待った!ついでにお城の門、開けといてくれ!この後、物出し入れするなら今のうちに」
「了解!」
と、こんなようにてんやわんやの大騒ぎ。
と、そんな中やって来たメグル。
「……いや、人はいるはずさ!いなかったら…その時はその時だ!!煮るなり焼くなり、好きにしてもらおうじゃないか!!」
独り言がいささか多い気もするが、名誉のために流してあげよう。
そして何を思ったか、振り返りながら——
「やっぱ無理!」
震えた声で言う。
そして、メグルが振り返っている間にお城の門が開け放たれ、立っていた門番も、人手不足解消のため連れていかれる。
「よし、行くか!」
そして決心を固め、城に近づいていったメグルが見た物は、開け放たれた門と、無人の城だった。
運がいいのか悪いのか、それは本人にも分らない。
でも、この偶然が、のちに世界を大きく変えていく——




