新たな町に着きました。
この風景、知ってるぞ。
これはもしかして、こっちに来たばっかのころ、森を抜けた後に見た草原じゃないか!?
……いや、心なしか草丈が低い気がするけどまあ気のせいだ!
うん。そうだ。そうに違いない。
よし、忘れよう。
…僕は、やっと街に帰り着ける!
やったー!
そう思ってウキウキ気分で進んでいくと、なんとその先に街が見えてきた。
でも……なんかいつもの街と違う気がする……
何だろう?違和感があるというか……
城壁の材質とかは同じに見えるな。
けど、サイズが少し、大きいか?
そして、近づいていくと違和感の正体が分かった。
お城だ。
城壁の奥に、黒い、お城のシルエットが見える。
それは、いつもの街になかったものだ。
つまり、別の街に来ちゃったってことか。
でもまあ良いか。門番さんあたりに街の名前を聞けば今僕がどこに居るかくらい分かるでしょ。
そう思って門のところまで歩いていく。
しかし、
「……あれ?誰もいないな。不用心過ぎないか?
でもまあ…誰もいないし、勝手に入っていいんだよね………」
そう思って、街に入っていくと衝撃の光景が広がっていた。
街を取り囲んでいると思っていた城壁が、途中で途切れている。
よく見ると、そこから先は切り立った崖になっている。そしてその先は、僕が出てきた所よりも黒々とした森が広がっていた。
あそこには魔物がいっぱいいそうだけど……
そっか、崖が急すぎて、魔物が上がってこれないから城壁が必要ないんだね。
頭いいな~。崖のところに街を作ろうって考えた人。城壁の材料も半分で済むし、そもそもそっちから魔物が上がってこれないんだったら、警戒の必要もないもんね。
人員も見回りの範囲も、半分で済むってわけか。
は~、ほんとに、この街を設計した人、頭いいな~。
そしてそんな街に立ち並ぶ家々は、僕のいた街とはそれほど変わらないように見える。
「……でも、誰もいない………」
ただ、明らかに異質なのが、人が全くいない、ということ。
見渡す限り、家、家、城、そして崖。
今までいた町と同じくらいの規模なのに、ここまで人通りが少ないと最早ホラーですらある。
町全体に生活感が残っているのに、誰もいない。
時々動くものが目に入って、そのたびに振り向くけど、それは洗濯物だったり家畜だったり……
この街が、なんだか気味悪く思えてきた………
でも、ここがどこかを聞かないと、また森で迷子になる。
それだけは絶対に嫌だ。今度こそ、死ぬかもしれないし。
よし、背に腹は代えられん。
この大通りをまっすぐ行ったところに見える、でかいお城に行ってみよう。
そこならさすがに、人がいるだろ。
そう思ってみたけど、今度は心の中の僕が言い争いを始める。
…やっぱ、人がいなくても森に戻る方が怖いな…
…いや、これまで大丈夫だったんだから…
…だからと言ってこれからも無事かどうかは…
…でも、誰もいない町ってのも…
「……いや、人はいるはずさ!いなかったら…その時はその時だ!!煮るなり焼くなり、好きにしてもらおうじゃないか!!」
そう決心して、お城に向かって歩いていく。
……それにしても立派なお城だな。真っ黒で、威圧感があって、尖塔がいっぱいそびえたってて。
…………。
………それって、魔王城の特徴じゃね?
……ゲームとか、ラノベの挿絵とか、漫画とか、その他もろもろで描かれてる、おどろおどろしい魔王城の特徴そのままな気がするのは……気のせいですか?
……もしかして僕、ヤバいところに来ちゃった?
さっきの決心が、一瞬で揺らいで倒れて転がっていく。
「やっぱ無理!」
そう叫びつつ、後ろを振り向く。
けど、開け放たれた門から森が見えると、転がってった決心が、またもとの位置に戻ってきて直立する。
「よし、行くか!」
威勢よく言ったはいいものの、怖いものは怖い。
これを、前門の虎後門の狼っていうのかな?
この場合は、前門の魔物の森、間の広場の人のいない町、後門の城だなー。
そんな風に現実逃避しちゃうくらいには怖い。
けど、現実逃避が許される時間はすぐに終わりを告げる。
お城の入り口さえも開け放たれていて、そこに人は、一人もいなかったのだ。




