この国の名前を知りませんでした……
そして呆れはてた目を向けてくる3人からの視線に耐えながら、話を聞く。
「ここ、フェイシニオス王国は、魔族の住む魔窟と隣接している国なんだよ。
その中でも、今俺たちが出てきたエルガルド領は、魔族ににらみを利かせ、あいつらの使役している魔物どもを排することで栄えてきた街。
だから、冒険者がたくさんいるし、領主様も元冒険者だったって」
「魔族は、よくわかんない言葉を喋るの。
こちらを見るとすぐに向かってくる、野蛮な種族だから、もし出会っちゃったら情けはいらないわよ。
魔物を使役して、こっちにけしかけてくるのも魔族の仕業って言われてるわ」
「あれ?『言われてる』ってことは違うかもしれないってことですか?」
「まあ、ね。でも、魔窟に近づくほど魔物が多くなっていくし、モンスターパレードもそっち側からやってくるんだからそう考えるのが妥当でしょ」
「ちなみに、あっちの森を抜けたところが魔窟だから、あっちには近づくなよ」
そう言ってアバントさんが指さした方は、僕が街を見つける前に通って来た森の方じゃないか。
危なかったんだな………もう絶対、近づかないようにしよう。
「と言いつつ、今日目指すのはその森なんだけどね」
「おいリーエン、簡単にばらすなよつまんない」
「でも、ずっと怖がらせるよりはましじゃないですか」
「今から怖がってるよりはいいだろ」
「男二人組があんな話してるけど、アバントが言ったほど怖いとこじゃないから。
森は広くて、何日か歩かないと抜けれないし、今日はそこまで奥に行くつもりはなくて、ただそっちの、魔窟との境の森に魔物が多いから行くだけよ」
「なんだ、良かった」
ルミリアさんの話に、ほっと胸をなでおろす。びっくりした、魔族に会ったらどうしようかと思った。
それにしても、魔族の話す言葉だと、魔物と意思疎通できたりするのかな?どうなんだろう、気になる。
そのことを聞こうとして口を開く。
「あの――」
「おいルミリア、種明かししたらつまらん…いや、緊張が解けちゃうじゃないか」
「そうだよ、もっとどんな反応するか見た……じゃなくて、緊張が解けたら危ないんですから。
死んじゃう可能性が上がるんですよ、油断してると」
「………(じと目)」
お二人様、心の声が駄々洩れですが?
ホントに性格の悪いことで。リーエンさんなんて、もう「優男というイメージに反して腹黒すぎる。実は頭がきれるんじゃなくて、ねじくれ曲がった作戦立ててるだけじゃないのかな………性格と同じく」
と思うけど、声には出さないでおく。
僕は、どこかの誰かさんとは違うからね。
そう思ってたら、どこかの誰かさんが目ざとく言う。
「僕は腹黒くないから。ただ単に、人とは違う視点で物事を捉えてるだけだから」
「へっ!?なんでそう考えてるって思ったんですか?」
「声に出してたよ、思いっきり」
「………」
なん…だと、僕の心の声も漏れてたのか………
これじゃあ、どこかの誰かさんの仲間入りしちゃうじゃないか。
それだけは嫌だ~!
「それにしても、ひどい言いようだったね、メグル君。
ちょっとこっちへおいでよ」
「怪しい人にはホイホイついてっちゃダメなので、遠慮しときます」
「……ちっ」
「おい二人とも、森はもうすぐそこだぞ、気を引き締めろ。あとメグル、俺の盾を返せ」
「そうでした、すいません」
マジックバッグの実演をしたまま僕が持ってた盾を返して、森の中を進む。
時折、ガサッていう音が聞こえるけど、それが生物の立てた音なのか、風の音なのかがわからない。
ソウレンさんと鍛錬してて気が付いたんだけど、僕は気配を感じ取れないらしい。
僕は、魔力がないから魔力が感じられなくて、気配という魔力の作用で生まれるものも感じられないんじゃないか、と考えている。
とはいっても、証明できなければ、それはただの想像なんだけどね。
だから、僕が魔物に反応できるのは、結構近づいてきてからなんだ。
それじゃあみんなよりワンテンポ反応が遅れちゃう。
「魔物だ、ホーンラビットだと思う!」
ほらね。
……右斜め前から来るのか。そちら側の茂みから不自然な音が聞こえてきた。
でも、リーエンさんが教えてくれたおかげで、慌てずに対処できる。
こういう時に、やっぱりパーティーはありがたいもんだな、と実感するね。
そして襲ってきた魔物たちを屠りつつ、森の奥へと進んでいく。
「そろそろオークの縄張りだ。」
「はい」
アバントさんの声が聞こえて、より一層気持ちを引き締める。
初陣であっけなく死にました、原因は油断でした、とかなったらソウレンさんにも、蒼のたてがみの人たちにも顔向けできない。
せめて足を引っ張らない程度に、しっかり頑張ろう。




