パーティーは組んだほうが……
「僕、やっと冒険者になったんです!」
アバントさんと宿に帰る途中、そう報告する。
アバントさんは、冒険者としては先輩だし、何か役立つ情報を教えてくれるかもしれないから、伝えておいて損はないはず。
「よかったな、メグル!
パーティーは決まってるのか?」
「…………」
「…………そうか、まだなんだな。
パーティーは組んどいたほうがいいぜ?いざという時に一人なのと、仲間がいるのでは全然違う」
「そうですか……でも、知り合いもいないですし……」
「だからソロでやろうと思ってるんです」
「そうか………メグル、お前さえよければ、ちょっとの間、うちのパーティーで『見習い』してみないか?
街の中と野営では、必要なものも技術も何もかもが違ってくる。
だから、まずはそれに慣れるための、『見習い』」
「いや、それじゃあアバントさんに悪いですよ」
「いいんだ、うちのパーティーにゃ、トランプの恩があるからな」
アバントさんはこう言ってくれてるけど、僕は役に立てる気がしないし、迷惑かけちゃうかもしれない。
でも、ここで好意を無碍にするのもな………
そう考えて、「パーティーメンバーの方がいいって言ってくれたら……」
と返した。
『いくらアバントさんの紹介とはいえ、見ず知らずの人をパーティーに入れるほどお人よしじゃないはず』
そう高をくくる。
「じゃあ明日みんなに聞いて、お前に伝えるわ。あと、お前ポーション類は持ってんのか?」
ポーション……
全く持ってないや。そもそもどこにあるかもわからないし。
「持ってないですね……」
「そうか。じゃあ、それも買ってくぞ。
ポーションは言ってみれば、冒険者の命綱だからな。あって損はない」
そう言ってアバントさんに連れてこられたのは、白くて清潔そうな建物。
『ブラフマー教会』と書いた看板が掲げられている。
ブラフマー?変な名前。
そう思いつつ中に入ると、地球の教会と大差ないように思えた。
なんか拍子抜け。
そしてそこでポーションを手に入れる。
一本銀貨2枚だってよ。高いけど、命に比べたら安いもんだ。
そう腹をくくって、HPポーションを10本、金貨2枚分買う。
教会の人には、MPポーションはいらないんですか?って聞かれたけど、生憎私魔力0ですから。
そこは安上がりでいいね。
教会を出てからアバントさんに質問してみる。
「なんで教会なんですか?」
「建前上は、神のご加護を受けた水がポーションだからって言われてるな。だが早いところ、教会がその製造法を秘匿してんだよ。
多分なんかの魔道具で作ってんだろうと俺は思ってる」
「そうっすか…」
生々しい話だな。でもまあ、そういうもんなのか。どこの世界にも、金儲けが一番って人がいるんだな。
それで怪我が治って死なずに済むなら妥当な値段かもしれないけど、製造法を秘匿していなかったら、もっと安く買えて死ななかった人もいただろうに………
そんなことを話していると宿、『鹿涼亭』が見えてきた。
帰り着いた宿のドアを開けて、アバントさんがラオバンさんとババ抜きに興じるのを眺める。
ミラさんは晩御飯を作ってくれてるし、僕は参加してもつまんないからね。
二人の対戦を眺めていると、アバントさんはポーカーフェイスがなってないことに気が付いた。
ラオバンさんがジョーカーに触ったら明らかにニヤつくし、ジョーカーじゃないのを引いたら明らかに落ち込む。
それなのに接戦を繰り広げているのはなぜかというと、ラオバンさんが異常に鈍感なのだ。
普通、これだけの表情の変化があれば気が付くだろ!と思うくらいのアバントさんの顔芸には目もくれず、カードをにらみつけている。
それはそれは、親の敵でもいるのか?ってくらいに。
そんなことを考えてると、いつの間にか晩御飯の時間になっていた。
アバントさんは、ここで晩御飯を食べていくというので食べて行ってもらうことに。
ここ『鹿涼亭』では、晩御飯に限り食堂としても営業している。
連日お客さんが詰めかける、大盛況!……というわけではなく、満席になるのが珍しい代わりに、ガラガラなこともないちょうどいいくらいの繁盛度合いだ。
だからそのシステムを利用して、アバントさんも晩御飯にありつくというわけだ。
そして食べ終わったら、僕は、いつもならすぐにベッドにくるまって寝るのだが、今日は違った。
昼買ったレタスと玉ねぎを切って、マジックバッグから取り出したハンバーガーにはさんで、戻す。
それを33回繰り返したら、終わり。
これで当分は、食料に困ることはない。
では今度こそ、おやすみなさい。




