冒険者になれました。
起きたら体力が戻っていたので一安心。
でも相変わらず体が痛いけどね。
痛いところを見ると、打ち身になってる。これが本物の刀だったら僕は………
今日もなのかと思うと気が重いけど、まあ行きますか。なんか楽しい…訳でもないな。
と、そんなこんなで瞬く間に刀をもらってから一週間が過ぎ去り、僕はソウレンさんとギルドに来ていた。
事の発端はお昼ご飯を食べているとき。
「メグル、そろそろ冒険者になれるぞ」
とソウレンさんに言われて、「なります!」と即答したのだ。
で、ソウレンさんの出勤ついでに冒険者ギルドまで来たわけだ。
ここに入るのも本当に久しぶりだわ。
この街に来た日に追い返されたっきりだっけ。
……ん?追い返すように言ったのって、たしか「ギルマス」=ソウレンさんだよな。
全く、僕に剣を教えてたのって、偶然とはいえソウレンさんのマッチポンプだったわけかひどいな。
抗議の目でソウレンさんを見るも、意に返さずにさらっと受け流されるばかりか、「着いたぞ」だって。
言われなくてもわかってるっての!!まったく…
「遅かったですね、ギルドマスター」
えっと、この人は副ギルドマスターの、名前は確か……エイブルズさんか。
その人が、目を三角にして入口で待ち構えていた。
「いやー、すまんすまん。こいつとちょっと話してたからな」
「嘘ですね」
今日遅れたのは、ソウレンさんが真剣を使った鍛錬(別名僕いじめ)が楽しくなって、エンドレスでやってたからでしょ。
その分僕も、痛い思いしたくなくて必死でやってたから結構上達しちゃったんだけどね。
死に物狂いでやると、案外何とかなるもんなんだ、ということを身を持って体験したよ。
ホントに、あれ当たったら痛いのに、ソウレンさんにはかすりもしないんだよ。
しかも、攻撃したらそのすきをついて反撃されるんだ。
仕方ないから、一瞬刃でソウレンさんの刀を引っ掛けて、叩き落としつつ斬るという技を身に着けたんだよ。
ホント、繊細な技術が必要で、一瞬でも遅れれば切れないし、一瞬でも早ければ攻撃が飛んでくるし、大変だったんだからな。
そんなことをオブラートに包んで話したら、エイブルズさんの目が三角どころかもう二角になってるよ。
そのままソウレンさんに刺さりそう。
「この子はそう言っていますが。話してたんじゃないんですか?」
「見解の相違ってやつだな。『拳で語り合う』っていうじゃないか」
「はあ……まったくあなたって人は……」
!?、ソウレンさんが口論に強くなってる。
前までは僕でも勝ててたのに、この頃言い負かされてたのも、スルー技術が上達してたのもこのせいか!
「で、メグルを連れてきたのはギルドに登録したいからなんだ」
見事に話題転換した!弱みに付け込んで、相手が黙った瞬間に追撃されないようにしやがった!
むう、強い………
「わかりました、こちらへどうぞ」
そう言われて僕はエイブルズさんについていく。
ソウレンさんもついて来ようとしてたけど、「仕事があります、お部屋へどうぞ」の一言ですごすご退散していった。
口論に強くなっても、さすがに、自分のやるべきことは、さすがに、分かってるようで一安心。
でも、僕の時とは態度が全く違うんだよね。なんせ、どう考えても、
巻き藁を斬る→ソウレンさんとの立ち合い
ってのは段階飛ばしすぎでしょ。やることべきが事わかってないダメな大人の代表格みたいな人だと思ってたよ。
「ではこちらに手をのせてください」
「はい」
前回も見た、ボードみたいなやつ。
どういう仕組みかはわからないけれど、僕のステータスが映し出されている。
ソウレンさんに見てもらった時ほどは詳しくないけどね。
でも、武技のらんがあるってことは、僕のよりかは詳しく出てるようで。くやしい。
「あ、あの時の迷い人様でしたか!その節はどうも。御神によろしくお伝え下さい」
「は、はい……」
神様にあった事なんてないっちゅーねん。どうしろってんだ、僕に。
少なくとも神様がいるんなら、文句言いたいこといっぱいあるよ。
指折り数えてみる。
運が良すぎてゲームがつまんないことでしょ、魔力がないことでしょ、なぜか僕のスクールバッグがなくなってたことでしょ、あとそもそもこっちに転移させてきたことでしょ、その時に説明も何もなかったことでしょ、どうせならアフターケアも万全にしてほしかったってことでしょ、チートスキルとか全くなかったことでしょ、………
ほら、軽く考えただけでこんなにある。
数えている内に冒険者カードの発行が終わったらしく、渡してもらう。
「こちらがメグル様の冒険者カードになります、あのクソマスター…じゃなかった、ソウレンから冒険者ギルドについての説明は受けられましたか?」
「いいえ?全く説明のせの字も」
「では説明させていただきます」




