誕生日です。
「で、押し負けてギルマスになっちまって、今に至るわけだ。
で、Sランクになった時についた二つ名が『剣聖』」
「そうなんですかー。
結局重役出勤でいいんですか?」
「いいんだよ、簡単だし。ぶっちゃけ、ただハンコ押してればそれでいい。
そしてなんかもっとないのかよ、涙なくして語れない、俺の半生についての感想は」
「涙も感想もありません。
あ、でも、なんでルークさんが領主になったのか知りたいです」
「……俺の半生に対する質問じゃねえしそれ。
まあいい。ルークはもともと領主の家の子だったんだが、
『先代領主から「うちの家訓は『領主たるもの強くあれ』だ。この町は冒険者たちによって繫栄してきたのだから、その気持ちを学んで来い」って言われて冒険者をやってた』
だそうだ」
「へぇ、人生いろいろあるんですね」
「ああ、ホントにな。
俺がギルマスになって、かつ武器屋もやってるなんて当時の俺に言っても信じねえだろうな。今でさえ夢かと思う事もあるくらいだ」
「で、重役出勤でいいんですか?」
「良いんだよ、ってさっきも言ったろ」
「そうじゃなくて、昼食べてからかなり時間経ってるけど良いんですか?」
「…………!」
ソウレンさん、おひさまの位置を確認して血相を変えて立ち上がる。
「ヤベぇ、早く行かないと。エイブルズが怖いからな」
「エイブルズさんって?」
「さっきの話に出てきた副ギルドマスターだ。
あいつ、淡々と怒りやがるからな、それが一番こたえるんだ」
そう言って、僕はとっとと帰れと追い出され、ソウレンさんは目で追えないほどのスピードで走り去る。
危ないからやめときゃいいのに。
ドンガラガッシャン!
ほーら言わんこっちゃない。
ソウレンさんが走ってった方向から破壊音が聞こえてきた。ソウレンさんにぶつかられた人、お気の毒に………
多分あれ、まともに当たったら骨折じゃ済まない気がする。
………無事なんだろうか。
(あ、ソウレンさんの心配は、するだけ無駄だからね。無駄に労力使うことないよ)
正直、気にならないこともないけれど、あっちに姿見せたらめんどくさい事になる気がする。
だから行かない。
………さて、宿に帰るか。
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ソウレンさんの過去と仕事を知った日から早ニヶ月。
そして、こっちの世界に来てから三ヶ月。
午前中はソウレンさんと特訓して、午後は筋トレしてからダラダラする、そんな代わり映えのない毎日。
そこにイレギュラーが入り込む。
そう、今日は僕の誕生日なのだ!
尤も、日本の暦と照らし合わせてって注釈が付くけどね。
これで僕は17才、高校一年な感じです。
やったね!
それをラオバンさんに言ったんだけど、素っ気なく
「そうかい、おめでとう」
の一言だけ。
すごい寂しかったから、よくよく話を聞いてみた。
そしたらどうも、誕生日パーティーとか、プレゼントといった文化が無いみたいなんだよ。
それじゃああんまりにも悲しいじゃん?
だから、ミラさんにも断って厨房を貸してもらった。
ケーキは無理でも、せめてクッキー位は作ってみようと思ったんだ。
で、作り始めてしばらく。
重大なことに気がついた。
砂糖がない!!
よく考えたら、こっちでは砂糖って高級品なんだよな。
こっちに来てから料理する機会がなくて、すっかり
忘れてた。
困ったぞ。卵とか小麦粉とか、混ぜちゃったよ。どうしよう。
………仕方ない。ホットケーキに変えるか。
これなら、比較的安いハチミツをかければい。
ハチミツも量が無いし、混ぜ込んで甘くするよりはかけたほうが少なくて済むでしょ。
というわけで急遽ホットケーキにしたからちゃんとできるか心配だったけど、意外といけた。
材料も似てるし、頑張ればいけるもんだね。
そんなこんなあって、ラオバンさんとミラ結構待たせちゃった。
二人とも、後ろで見てたけど、暇してないかな。
そう思って振り返ると、ミラさんは目を輝かせてた。
「こんな料理、初めて見たわ!」
だって。
一方ラオバンさんは……
寝てる。
食堂の椅子に移動して、そこで寝てる。
それで良いのかよ、この宿の支配人だろ。
まあ焼いたホットケーキをお皿に乗せて、ラオバンさんのところに運ぶ。
ラオバンさんを起こして、一緒に食べる。
「美味しい!」
「美味いなこれ。どうやって作った?」
好評だったようで何より。
自分でおやつに作ったりしてたから、こういうお菓子系は得意だったりする。
……これ、よく考えたら自分の誕生日ケーキの代わりだよな。
何で僕が作ることになってんだか。
まあいいや。
二人にホットケーキを振る舞ってから部屋に戻り、(実際はこっちが振る舞われるのが正解では?)
ベッドに寝転がったところでなんとなく、年齢がステータスに反映されているのかが気になった。
よく考えたら、しばらくステータス画面見て無いな。
どうなってることやら。ワクワク。




