生きていました。
そこまで話したところでソウレンさんは、一旦話を切る。
そして続ける。
「これは後から知った話なんだがな」
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俺は、意識を失った後も長剣を振り回していたらしい。
生物としての本能で、ここで倒れる訳にはいかないと感じていたんだろうか。
五感をフルに使い、攻撃の気配を感じ取って避け、反撃に出る。
視覚が使えない分、自分から攻撃を仕掛けるってのは隙をさらすことにつながるからだ。
そして運が良かったのか、俺が次に目を覚ましたのは救護テントの中だった。
体のあちこちに傷を負い、満足に手も動かせない状態だったものの、命に別条はなかった。
その時ばかりは本当に、神に感謝したね。
そして駆けつけてきたルークから三日も寝ていたってことを聞かされた。
動けるまで回復するのに軽く一週間くらいはかかるだろうってことも。
で、動けるようになったら即、ルークに冒険者ギルドまで連れていかれた。
「ギルマスいるか?会いたいんだが」
「おいルーク、アポ取ってないのに会ってもらえるわけないだろ」
「はい。少々お待ちください、領主様」
そう言って、対応してくれた受付嬢が下がる。
「はい?
………今、『領主様』って聞こえたんだが、気のせいだよな」
「ああ、ソウレンには言ってなかったか。この前、領主になったんだぜ、すごいだろ」
「言ってなかったかって、何とと白々しい。初耳だぜ、そんなの。
そして領主って、お前なんかで務まるのか?」
「は?それが領主様に対する態度かよこの野郎」
「お取込み中失礼します。ギルマスがお待ちです。どうぞこちらへ」
上役らしき、頭の上がはげた中年男性がやってきて、俺たちを案内する。
それに従って歩きながら何か言い返してやろうとしたところで、ギルマスがお待ちです、とすまし顔のルークにも言われ、閉口。
ちくしょう、なんかむかつくな。
そしてそれ、果たして一領主様の言葉かよ。
そんなことを考えながらギルドの二階へと階段を上がる。
途中でよろけてしまい、ルークの肩を借りつつもなんとかギルドマスターの部屋へとたどり着いた。
「失礼します」
部屋の中は、……乱雑だなぁおい。
立派な机が、積みあがった書類で埋まってんぞ。
崩れ落ちた分が床にまで広がってるし。
この部屋の主はというと、筋肉質の男。
そりゃこうなるわな、って納得しちまうような武闘派オーラが出てる。
「ギルマス?なんですかこの惨状は。どうやったらこんなに書類をため込めるんですか」
案内してくれた人に言われてんぞ。部屋が汚いって。
やっぱりこれがギルマスか。元冒険者なんだろうか?
「仕方がないじゃないか。こんなに回ってきた書類が悪い!」
俺たちが見ているというのに、小学生以下の言い訳をするギルドマスター。
皆があきれて黙っているのをいいことに、さらに言い訳を並べたてていく。
「この前まではこんなことにはなってなかったし。そもそも、モンスターパレードで片づけなきゃならない仕事が増えたのがいけないんだ。
それに、Bランクの冒険者が、一人でモンスターの山を築き上げたせいで、Sランクにまで階級を引き上げるって話が出てきて、これ以上めんどくさくならないように一生懸命反対してたのに、それをどこかのアホ領主が後押ししたせいでギルド本部に提出するべき書類が増えたんだから」
「「「………」」」
よくもまあ、こんだけつらつらと言葉が出てくるもんだ。
その思考の素早さを、書類仕事に向けたらいい話だろ。
「本人の前で『アホ領主』っていうかな普通」
「何を責任転嫁してるんですか。書類が片付かないのはギルマスの怠慢、Sランク云々は当然です」
ほら、みんなに言われまくってるじゃねえか。
もっと言ってやれ、そしてルークに『アホ領主』はないだろ。
「確かにバカかもしれんが、こいつ、見た目と中身以上に結構優秀だぞ」
「ソウレン、心の声が漏れてんぞ、しっかり聞いたからな、あとで覚えておけよ」
「けがの後遺症か、最近物覚えが悪くてな」
「急にありもしない症状持ち出すな」
「知らんな。耳も悪くなってきたようだ」
「悪いのは頭なんじゃねえか?」
「ああん!?」
ルークと俺が不毛な争いをしてる横で、ギルマスが淡々と責められていく。
「どうしてあなたは仕事をためにためているんですか?
……この紙なんて、一か月前に渡したものですよ」
「……めんどくさいじゃん」
おい、反省しろや。
「めんどくさくはありません。やるべき仕事なんです」
「なんで俺がやらなきゃ―」
「ギルマスという職にあるんだから当然です。もしこれが大事な書類だったらどうするんです?」
「すいません…」
……どんどん精神的にやられてってるな。
「そもそもあなたは、ギルマスとしての自覚が足りなさすぎるんです」
その通り。
「………で、何か申し開きはありますか?」
さて、どんな言い訳が炸裂することやら。
「俺もともと冒険者やってたわけ。それがなんでかギルマスになってんだよ」
へー。
「ホントは俺に務まる職じゃなかったわけ。
そもそも、実際に現場に出て体動かす方が得意だし」
見た目通りだな。
「この前のモンスターパレードだって、指揮取るよりも戦いたかったし」
そうだったんだ。
「だからな、ほかの人にこの席譲ってもいいかな?
ちょうどそこで適任者、えーとソウレン君だっけ?がうなずいてくれてるわけだし」
うんう……ん?
「どうだろう」
「いいんじゃないですか、私としては仕事をきちんとやってくれたらそれで十分です」
「じゃ、そういうことで」
「よかねえよ、誰の話してんだ」
「ああ、ギルマスからの命令だ。ソウレン君。ギルマス、やって、くれ」
圧がすげえな、圧が!!
おい、拳握って威嚇するな、怖えよ。そして職権乱用するな。
「なあ、ここでもし、やらないって言ったら?」
「断る」
「なんでてめえが断ってんだよ、立場逆だろうが!
そしてそこの傍観者AとB!なんか言ってやれ」
「僕としてはソウレンがギルマスになってくれたら嬉しいかなー」
「私は、仕事をやってくれるのでしたら」
.........俺に味方はいねえのかよ。
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余談:白い世界、ブラフマー
「え?なんであの時、ソウレンを助けたのかって?
感謝されてたと?
わしは知らんよ、全部運のおかげじゃもん」
そう言って新たなモンスターのキャラデザに取り掛かった。
「いやはや、それにしても恐ろしいもんじゃ。
モンスターは、人と魔族の緩衝材として置くつもりだったんじゃが。おかしいのう、キャラデザに注力するあまり、たくさん種類がでてきて、気が付いたら一大勢力となってしまっておる。
仕方がないから、新型モンスターの構想は、紙に書くだけにとどめておくわい」
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ソウレン:「神としての立場放棄しやがったなこの廃神。おかげさまで死ぬとこだったぞ」
昨日は更新できずすみませんでした。
しばらく、更新が不定期になるかもしれません(というか確実になります)が、宜しくお願い致します。




