起死回生の一手です。
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長剣を使い始めてしばらく。
このころになると体力にも限界がきて、もう周りを見る余裕すらなくなる。
無我夢中で剣を振ってるうちに、周りの魔物が減ってきたことに気が付く。
よく見てみると、周りが魔物の死骸で囲まれていて、それが一種のバリケードの役目をしている。
ここで迎え撃つより外に出た方がいいと判断し、抜け出したときあたりに声が響いた。
『これから、魔法の一斉掃射を行う。
すべての冒険者は城壁の中に入ること
ー弓隊、放て!』
「おいおい、入るまで待ってくれ」
そう突っ込みながら門に走っていく途中に冒険者を襲っていたモンスターを切る。
そしてそのまま二人で門の中に駆け込む。
その瞬間。
『魔法、放て!』
という声と、爆音が聞こえる。
危機一髪だった……もう少し俺らの事も考えろっての。
門の向かいの家に壁にへたり込んでしまうと、もう体が動かない。
ああ、体が鉛のように重い。
俺はいったい、今日一日でどんだけモンスターを切った事やら。
城壁の向こうが、燃えるように赤くなっている。
『魔力の残っている魔術師は攻撃を中止し、火がこちらに来た時のために「ウォーター」、「アイス」系の魔法の準備を』
あっ、ルークの声だ。あいつもあいつなりに頑張ってるんだな。
俺も頑張ったぜ。もうこれで動けなくてモンスターに負けても、悔いはない。
それにしても、何をしでかしたんだ?この明るさと言い、「火がこちらに来た時」発言と言い、どんな火力で魔法ぶっ放したらそうなるんだよ。
頭の上を影が横切り、ふと見上げてみるとルークが立ち尽くしていた。
なんかあったのか?そう思って声をかける。
「おーいルーク!なんかあったのか?」
「あ、いた」
城壁をすごい勢いで駆け下りて、俺の方へ来る。
その必死の形相に逃げたくなるけど生憎体が言うことを聞かない。
「おいソウレン、この惨状、お前がやったのか?」
「なにが」
そう答えると、より表情を険しくしたルークに城壁の上まで引きずってこられる。
「これだ」
「……。。」
眼前に広がる光景に、俺は驚く。
地獄と表現するべきか、モンスターを火種として、業火があたりを焼き尽くしていたからだ。
「ルーク、この火は俺の仕業じゃない」
「そっちじゃねえ。南門にいた魔物の数が、いくらなんでも多すぎると思ったんだ」
「?それと俺に何の関係がある」
「見やがれこの死骸の山!このおかげでモンスターが南門に流れてってんじゃねぇか」
確かにルークの言うとおりだった。
門の前にモンスターの屍の山があり、モンスターはそこを避けて通って行っている。
その山が壁となり、モンスターのほとんどが城壁の左側へと行ってしまっているのだ。
「……確かにこれやったのは多分俺だ。でもな、こんなに積みあがったモンスターが悪いんだ。俺は悪くねえ」
「分かった。一人でこんだけのモンスターを討伐したことは誉めてやろう。でもな、…加減があるだろ」
「しょうがないじゃねえか、切んなきゃ街が滅びるぜ?」
「……でもよ、ほかに何かしようがあったろ。
南門を守ってたやつらは、悉くモンスターの腹ん中だ」
「………すまん」
(ほとんど聞き流していた)元の作戦では、一番被害が見込まれる東門に、練度が高い冒険者をまとまった数配置するということだった。
そのあてが外れて、比較的軽く見られていた南門にモンスターが流れて行ってしまったら……
容易に想像がつく。俺たちでも苦戦したんだ、C、D、E、Fランク の駆け出しのやつらが善戦できたとは思えねえ。
ほんとに、すまなかった。
心の中で手を合わせる。
そして目を開いたとき、火の勢いはだいぶ収まっていた。
炎はもう門のそばまで到達しており、魔術師たちの魔法によって消火されていく。
「やっぱり、いくら魔油と言えども水分の多い生物をこの量焼き尽くすのは無理だったか」
「じゃあもう一度出てくるわ」
重い体を引きずるようにしていこうとしたとき、ルークに肩をつかまれ、何かを渡された。
「これ飲んでけ、HPポーションだ。気休めにはなるだろ」
ルークにお礼を言って瓶の中身を飲み干す。相変わらずまずい。
でも疲労が取れていくのがわかる。
この状況では、この上なくありがたい。これでまた戦える。死ぬ確率が下がり、希望が見える。
もう少しやってみようか、という気になる。
そして愛刀から血糊をふき取り、長剣は背中に背負って、モンスターを屠りに行く。
ここで俺が倒れたら、ここまでやってきたことが無駄になる。
絶対に、しのいで見せる。
そしてこの街に平穏を取り戻す。
俺のせいで散っていった若い命のためにも。




