プロローグ
真っ白で殺風景な部屋の中に一人の老人が座っている。彼の名はブラフマー、創生の神である。
「おっと、魔王『シバ』の成長が思ったよりも早く、強大なものになっておる」
ブラフマーは水晶玉のようなものを覗き込んで呟いた。
そう、彼が見ているのは数多ある世界の一つ、「ディマイス」。創造神ブラフマーの最高傑作である…はずだった。
たった今、予想外の不具合が生じるまでは。
彼がこの世界の創生までにかけた時間は一万年。
並々ならぬ熱意を注いで完成させたこの世界に、「ディマイス」と名付けたのは、ブラフマーにとって最後の作品であり、人類の行き着く先を見てみたいという思いからであった。
それは、今まで作って来た世界に生まれた’’人類’’がことごとく自滅という道を歩んで行ったことに彼が心の何処かで失望していたからかもしれなかった。
そのために、魔物という全人類の共通の敵を作り、人間同士で争えないようにした。
しかし、なぜか魔物を生み出し、総括する魔王「シバ」が想定以上に強くなってしまったのだ。
「ふむ。原因は人類全体の幸運値が想定より下がったことか。それによって運悪く人の子らの敵が強大になる条件がそろってしまったようだ」
そこまで言ったブラフマーは暫く瞑想し、呟く。
「わしはあまり干渉ができないからの、他の世界から多くの運を持った者を連れてくるしかないのう」
そして目をつけたのは相葉 巡。
本人曰く、「どこにでもいるオタクで運が悪いだけの平凡な中学生」である。
「こやつは幸運値が人並外れておる。最適な人材じゃが、そのまま転送したとして果たして生きていけるかの?」
ブラフマーはそう思案し、結局マジックバッグ(容量無限)とさしあたり必要なディマイスの通貨を持たせることにした。
メグルの持ち物をコピーしてはマジックバッグに詰めて、お金を入れる場所を考えた末、財布の中のお金を抜き取って「わし神様じゃし、そもそもこれコピーだから問題ないのじゃ」、と用意しておいた硬貨と入れ替える。
「これで準備はできた。後はその幸運値に賭けるとするかの。意味も分からず転送される少年には気の毒じゃが……」
水晶玉に触れ、念じる。
「『転送』っとな」
ブラフマーが自分の作った世界に干渉できないのは、あまりにも強大な力を持っているためです。
世界の秩序を保ち、ほころびを生まれさせたくないがためにメグルが犠牲にさせられました。
.....若い頃はそうでもなかったようですが……




