夢囚人の名探偵~人喰い観覧車~
■登場人物
夢路 醒:夢の中の探偵。
木根間 :今回の依頼人。
■「夢囚人の名探偵」シリーズについて
夢に囚われている少女探偵「夢路 醒」が、夢を使って依頼を解決する話です。
今回で5作目になります。前作を読まなくても支障はありませんが、宜しければ前作もご一読頂けると嬉しいです。
・1作目「夢囚人の名探偵~夢路 醒の事件簿~」
・2作目「夢囚人の名探偵~回命時計の使い方~」
・3作目「夢囚人の名探偵~ピンクのランドセルの女の子~」
・4作目「夢囚人の名探偵~文化祭の来夢~」
この作品は、「第6回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞」の応募作です。
テーマは「観覧車」。
「ここは?」
木根間は目の前にいる白い影のような少女に問いかけた。
「夢の中よ。」
「え…」
「あなたは病院のベットで寝ているわ。」
「病院?俺は助かったのか?」
その質問には答えず、少女は自己紹介をする。
「私は“夢路 醒”。探偵よ。」
「探偵?」
「私の依頼人さん、話を聞かせてくれない?」
醒は木根間を客用のソファに案内し、自身も一人用ソファに腰掛けた。
「俺は観覧車に乗っていたんだ。」
木根間は混乱する頭を整理する為に話し始める。
「失礼だけど、男が一人で?」
「只の観覧車じゃない!人を喰う観覧車なんだ!」
木根間の語気が荒くなった。
(雲行きが怪しいわね。)
醒はティーカップをローテーブルへ置く。
「俺は行方不明の母と妹を探していた。最後に遊園地で観覧車に乗るって言っていたんだ。そして海上の遊園地に辿り着いた…」
「それで?」
「俺は確認に行った。見た目は古い普通の観覧車さ。実際に乗ってみたが何も起こらなかったよ。」
しかしゴンドラが頂上に差し掛かった頃、天井から水が垂れてきたという。
「何かと思って見上げると、鋭い歯が並び、涎が垂れていたんだ!」
(は?)
「ゴンドラが俺を喰おうとしていたんだ!奴は生きた観覧車だった!」
(これは…)
「俺はドアを壊して海へ飛び込んだ!海から奴を見ると、他の客は喰われてゴンドラから血が滴っていたよ。」
(はあ…)
「だけどそれで終わりじゃなかった。奴は追ってきたんだ!」
(はいはい。)
「俺は必死で泳いだ。だけどサイズが違いすぎる。あと少しで追いつかれるところで…」
木根間は息を整える。
「血の匂いに誘われて、巨大ザメが現れたんだ!」
(……)
「観覧車と巨大ザメが戦う中、俺は持ってきたダイナマイトを投げ込んだ!」
「どうなったの?」
「奴らごと大爆発さ!奴らは海に沈んでいったよ!」
そこまで聞くと醒は手をかざした。
「あなたの記憶を見せてもらうわね。」
しばらく目を閉じた後、醒は言った。
「あなたはスキーで骨折して入院したのね。そして寝る前にこの映画をスマホで観ていたみたい。」
『人喰い観覧車vs巨大ザメ』
「あー!」
木根間は全てを思い出した。
「ありがとう!おかげで頭がスッキリしたよ。」
「私も良い暇潰しになったわ。」
木根間を送り出し、夢路総合病院の眠り姫は静かな時間を取り戻した。
まじめな話にしようとしたのですが、途中から路線を変更しました。皆様の良い暇潰しになったなら幸いです。
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