憶え書き
たとえば、
晩餐のグリンピイスが落ちていた。
つめたい床に、ひたかくすよに。
それをひとは、
“イビツ”と呼んだ。
たとえば、
コックさんが疾るのを やめなかった。
空がなんかい、白んでいようと。
それをひとは、
“デジャブ”と呼んだ。
たとえば、
短調の唄をよろこばしくした。
やさしさだけを、暗譜して。
それをひとは、
“コワイ”と呼んだ。
たとえば、
トマトスープが絶えず 渦巻いていた。
赤黒かった、生々しいくらい。
それをひとは、
“タノシミ”と呼んだ。
たとえば、
橙色の照明のへやだった。
生気はそして、堕ちていた。
それをひとは、
“ノスタルヂア”と呼ぶ。