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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

もしも会社のトップにブチ切れたら、どーなるかの話

作者: 孤独

タイトル詐欺で済まないが、社長という立場が常々、今働く会社のトップであるわけではない。

なにせあいつ等、会社の上の階にいつも立て籠もってやがる。

立派な本社があれば、そこに籠っているケースが多いだろう。そして、部下達も気に入らねぇ。

天〇りとか言われるような就き方だとしても、……老害じゃなきゃどれほどいいか。

……その役職に就けるだけ、若い頃からやっているのだ。

若い奴は何も知りませんでしたよ。

オギャーと泣いている頃から、働いているおっさんなんだぞって言葉を理解するのには、それくらい生きなきゃ分からなかった。


だから、絶対に”勇気”を持って、その会社のトップにブチギレるというのは絶対にやってはいけない。

そうなる前に部長・課長が止めておく、宥めておく、中間管理職のこーいう胃がキリキリしてくる人間関係。労働環境の改善は非常に大事なのである。


『あいつ、全然、仕事しねぇ』

などと現場の人間は、そーいう人事関係・管理関係に愚痴を漏らすのは当然だ。

だから、人手を増やすなり、人員の配置を考えろって訴える。調整しろ。

『トラブル御免。俺が辞めるまでそのままにしてくれ』

保守的な……と、言われようが、定年を過ぎたらさすがに休ませろって、叫びたくもなる。この役職に就いているのは、日頃からのゴマ擦りと仕事に熱心だったからなのだ。


◇         ◇



「人手不足だーーー!!」


そう叫ぶ世の中。今は、人材不足という進化を遂げている気がする。


「いつもの事だ」


つまりは、昔からこの業界は人が足りていない。

物を運ぶ仕事というのは……



ミーーン、ミーーン



蝉の鳴く声。クソ暑かった日だ。体調を崩しやすい季節である。

そして、その時代。丁度、組織の世代交代とも言える時期だった。老いたる者達が退き、若き者が継ぐ。なんてことはないのだ。


「というわけだ、矢木」

「は?」

「聴こえなかったか?」


だいたい、4人分の働きをしてくれ。

1人は暑さでダウンしてしまい、1人は忌引き、……もう2人に至っては


「役に立たないから、お前がやってくれ」

「はぁ~~~!?」


馬鹿か?馬鹿なのか?この職場、馬鹿なのか?馬鹿しか集まらないのか?

仕事ができない奴なんか見捨てればいいんだ。っていう、極々当たり前な発想を、”ウン”とは言えなかった。だって、こいつ等が結局、回してくるんだ。届けるはずだった荷物が届かないっていう苦情の大変さ、面倒さは、そこで働く者達にはよ~~く分かっている事だ。


”勇気”を持って、仕事を辞めます!!


って言いたい気持ちも、それはあった。


「お前が頑張ればできてるじゃないか!!」


……白い目をするが、実際にできる。


「朝7時から朝8時まで1時間のサービス残業から始め、9時半には出発し、13時に一度戻ってきて休憩に入りながら仕事をし、14時にもう一度出発し、16時になったら他2人の応援をして、18時に会社に戻った後、超勤をつけての、サービス残業で社内の整備やら資料整備などを終えてから、昼食に入るという業務ですね?」

「うむ」

「”うむ”……じゃねぇよ!!」


箇条書きにした時。これでもきつかったよな~って思っていたが、……よくよく考えたら、上にキレた時期はまだ配達にちょっと余裕があった頃だなって思ってしまった。だって、20時に終わるんだぜ。

上の方々はサービス低下・廃止という形で、しっかり現場の意見を反映させていると思います。時間は当然掛かってますが、確かにしてくれます。



「連日この暑さだぞ!蒸し暑いんだぞ、日本の夏はぁっ!!」

「矢木。誇れ。お前の仕事に対する情熱の方がもっと熱い!!頑張ってくれ!!絶対に36度の気温よりお前はすげー。毎日飲んでる500mlのペットボトルの量がそれを物語っている!!お前はできる!」


仕事ができない人には心痛い話だが


「仕事ができない人をクビにしてくださいよ!!なんで俺に毎日仕事させるんですか!!」

「そ、そこを頼む。考えてくれ!矢木以外に誰ができる!?この現場で!」


そうやっている人間だから言える。


「仕事ができないんだから、金払って雇ってるんじゃねぇ!!俺はサービス残業して、配達してるんだぞ!喋ってばっかで、ノロノロしてれば、良いと思ってるんじゃないんですか!!」


……ああ、念のために言いますが。今はこんなサービス残業はしてませんからね(笑)。

モデルとなっているお話は、今から10年以上前ぐらいです。今でもそうなのかって本気にならないでくださいね(笑)。


「ああ、クソ!!」


仕事を辞めてやる!!そう誓っているのに、なんで辞めなかった?

理由は、仕事ができない方達がもうすぐ辞めるのを自分が知っているというのが、理由の1つだからだ。……定年を過ぎてまで、働けるかな?……自分は無理だと思っている。

仕事ができない理由も、体力勝負なこの仕事において、老いを背負ったままでいるのは凄く大変なのだ。そーいうのを間近で見ているからだ。



とはいえ、仕事を辞めたい。

こいつ等が辞めてから、俺をもう一度採用してくれない?って思ったりもしたもんだ。なら、そんなに仕事ができない奴等を手伝うなよって、提案するだろう。

……仕事ができないだけで、人格に関しては非常にまともだと思っているからだ。

なんでそう思うって?



『在宅してたのに不在票を入れてんじゃねぇ!!!すぐに持ってこい!!ボケェ配達員共!!14時までには持ってこい!!(13時頃にコールセンターへの電話)』


この時代のお客様の質があまりにも悪かったから、相対的にそう感じているからに他ならない。


「ああああああああああ」


矢木、叫ぶ!気付かないテメェが悪いだろうが!

……そーいう内心に対して、この時のちょっと上というのはお客様は崇高な存在であり、神様に等しい扱い。SNSもそんなに発展していないからな


「今から配達員を向かわせますので、もうしばらくお待ちください……矢木!!早く行け!!」


お前、ふざけんなよ!5分前に帰って来たばかりなのに、荷物を持ってすぐにお客様のところへお伺いする。午後の配達準備だってあるのに、余計な仕事。


ブロロロロロロ


「このノロマ野郎が!!」

「申し訳ございませんでした。こちらが荷物になってます」

「お前みたいなゆとりは死んでろ!!バーカ!!どーなってんだ、テメェのいる会社はよ!!馬鹿ばっかりじゃねぇか!!」

「すみません(俺が配ってるわけじゃねぇよ……)」


ブロロロロロロ


「お疲れ~」

「ああああああ」


会社に戻って来た時。時間的には他の配達員達が、続々と出発している中で。矢木は戻って来た。「お疲れ~」と、誘導棒を持って麦わら帽子を被る爺さんが、今のこの組織のトップであった。たまにこうして、誘導係をしながら現場の人間と交流するのである。


「はあぁっ!?全然、配達が終わってない!?」


まだ、自分の配達準備が終わってない。しかし、裏技みたいな事を使えば、30分の事が3分でできるぐらいの事はある。手伝いの必要のある人達がトラブルに巻き込まれた自分よりも進んでないとか。


「おらああぁぁっ!!もう俺がやるっ!」


2日連続で昼飯抜きかよ……。昼飯を抜いちまうと、イライラが沸いてくる。タバコを吸うのなら、そっちでイライラを解消できるが。あいにくタバコはしない。もちろん、酒も飲まない。

そして、自分の遅れはもちろん、それも込みで周囲の応援。


ブロロロロロ


「お?なんだよ、お前。休憩とった?」


現場知らねぇのかよ、こいつ……って言いたくなる。……だが、知っていて言っているのが腹立たしい。課長にも、部長にも、言ってきた事だが。もうこの際、関係はない。

仕事辞めたって良いわ。

誘導係なんかしてないで、宥めたり、説得したり……遊んでいたり、……見下したり、……無能だったり……そーいう上司達を、お前が束ねているんだからよおぉぉっ!!

頭の中で、良心という線が切れてしまった。



ブヂンッ



「うっせーーなぁぁぁっ!!休憩なんかとれるわけねぇだろうが!!!毎日毎日、昼飯抜きで配達してんだよ!!こっちはよぉぉ!!お前等みたいに食堂でペチャクチャ喋ってるところじゃねぇんだよ!!俺にはお前等と違って、配達しなきゃいけねぇ仕事してんだよ!!」



◇         ◇



怒った時は、すげースッキリした。そして、凄い罪悪感に襲われて、配達をしていった。

戻って来た時は19時だった。いつもよりちょっと遅い上に



「遅いぞ、矢木!!なんて事をするんだ!」


普段だったら帰っている部長が残って待ってるんだよね。帰れよ。


「なんでトップにキレてんだ、お前!!俺は怒られたんだぞ!!」


知るかよ。一番の原因はテメェだろうが!!仲間にキレ辛いのは、もう辞めるって散々言ってたのに代わりを用意しないし、そのままにさせてるのが悪いし、現場をまるで見てないからだろ!


「休憩はちゃんととったていにして配達をして定時で終わらせる!!この無能が!!半年間、君は給与カットだからな!!社会の常識というのがないのか!君みたいな、ゆとりは!!馬鹿だよ!君!!頭がおかしいの自覚しなさいよ!!ホントにさ!!」

「……すみませんでした」


”勇気”を出して、怒ってみたが……。

結果は減給扱いに終わってしまった。

”勇気”が一つじゃ社会は変わらないものだな。


◇        ◇



「という実話を脚色してみたんだが……」

「おい!恋愛要素やファンタジー要素はどこにある?テーマが合ってねぇし、求められてる”勇気”の欠片を感じねぇ」

「でもこれは割とファンタジー感あるだろ?今の人達にそうだって説明しても、嘘だろ?ネタだろ?って思われるから、ローファンタジーで良いんじゃないかな?」

「ほぼリアルの話だった事を、ファンタジー扱いすんな……もう10年以上前の、沢山のお仕事は、2024年の現代社会においては封印されてるファンタジーなんだよ!」

「じゃあ、恋愛にするよ。『昔のお仕事は冷たくて、お金払いも良くないけど、今のお仕事は温かくて、お金払いも良くて、大好きです♡』って感じの風に……」

「それは洗脳教育が完了した、社畜じゃねぇか!!だいたい、そう感じてるのはテメェだけだよ!!もっと金払え、待遇を良くしろってドーンっと訴えろ!」




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[良い点] ブヂンとした時は読んでてスカッとしました。 矢木さんは最終的に幸せになれたのでしょうか?
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