事の顛末
2章終了です!
オースティン魔法学校のグラウンドに降下が完了して、校長室へと向かう俺とレオナ。
「ところでイブ様、何故正体を隠すことになったのですか?」
「隠すつもりはなかったんだけどね。
ヘガドルからしても 何処かに無比がいるって他国から思わせた方が都合がいいんじゃない?」
「抑止力になるでしょうね」
「君も思っただろう? 現状の俺は、あの2人にすらてこずる程度の魔法使いなんだって」
「そ、そんなことありません」
レオナはいい子だ。おそらく今の俺の魔素量は彼女に劣るだろうし、彼女なら一人で ベルフェゴール含む三人を倒せていたかもしれない。正直な話レオナが来てくれていなかったら結構怪しい戦いになっていただろう。
「言いずらいよな。
でも多分そういう理由だと思うんだ。不完全な状態 で表に立たせるより、 無比は完全な状態で裏にいるって思わせたいんだろう」
「……。」
俺たちは学校の校舎内へと歩いていく
校舎の中は驚くほど静かだった。
時刻は24時というのもあるのだが、てっきりあんな事件の後だから軍の魔法使いや、オースティンの教員たちが慌てて物事の収集に動いていると思ったが。
ん?
「イブ様」
「うん」
レオナの声かけの意味をすぐに理解した。
よく見ると空気中の魔素がおかしい、普通空気中の魔素というのは一点にまとまることはないのだが明らかに偏りが見える。
「視認妨害ですね」
「ああ、そうだね」
「晴らしますか?」
「もう少し様子を見ようか」
俺がそういうとポケットに忍ばせておいた通信結晶が光る。
「はい」
通信妨害を警戒して、あえて名前は言わない。
「イブか」
アレフ校長の声だ。
「はい。俺はどうすればいいんですか?」
「今学校内の結解の張り直し、および強化を行っている。
レオナはその場待機、イブはいったん寮に戻ってくれ」
「了解しました。ルームメイトにはなんと伝えれば」
「そうだな、 君には話しておこうまずは」
この日アレフ校長から言われた今回の事件の後始末は
1.ラースの森で起きた緊急ブザーは、生徒たちには誤報ということになっている。
安全確認を行ったのち演習再開と銘打っているものの安全の確認が取れないため一応中止という形になったらしい
2.俺とアリア含め脱出に遅れた生徒が7人いたそうで、生徒のいたずらの可能性があるということで事情徴収という形で別室隔離という形にしている。
3.あの襲撃は計画的なものであるのは間違いなく、ラースの森内の結界がいくつか事前に解かれていたため、学校内に協力者がいる可能性が浮上。
4.一部の軍関係者以外には、レオナが単独で侵入者の撃退を成功させたと伝えられている。
5.今回の襲撃による犠牲者はなし。
ざっと分けるとこんなところだろう。アリアも無事だったらしく隔離教室で待機をしているとのこと。
……!!
それで思い出した。
多分アリアには俺=無比 ってことがばれたかもしれないということを。
ベルフェゴールはおしゃべりな奴だったし絶対に話してる。
記憶を飛ばす?忘れてもらう?
いや、多分あの子なら大丈夫だろう。
関係は短いが大丈夫な気がする。
とは言え、アレフ校長含めレオナにも彼女が無比の正体を知っていると知られるとまずいかもしれないし……
一応明日話に行くか……
隔離教室へと入室し、ベットに横になりながら入学から今日までの日々を振り返る。
「もっと普通の暮らしを尊像してたんだけどな」
オースティンに入学してからの生活は、学生の 日常 と呼ぶには刺激的すぎる気がする。
偶然なのか俺に問題事が吸い寄せられているのか。うーん。
まぁこれも含めて日常か。
普遍な毎日は面白くないしね。
ーーー翌日
身支度を終えた俺は、隔離教室の扉を開ける。
「げっ」
「あ」
目の前の部屋からアリアが出てきた。
まさかの男女混合の隔離フロアだったんかい。
アリアは一度しゃべろうとしたものの口をもごもごとさせ静かになる。
あーばれてるなこりゃ。
「おはよ」
「はいはい。おはよう」
「何よその適当な返事」
「別になんだっていいだろ~
先行くぞ」
もう取り繕う必要はない。彼女なら大丈夫。
俺が歩き出すとアリアはついてこない。
いつもなら来るのに……
「あの」
「ん?」
顔を下に向けたままなかなか言い出さないアリア。
「これだけ言うわ。ありがとう」
「うん。巻き込んでごめんな」
アリアは数秒黙ったのち俺の腕を引っ張り「ほら行くわよ」と走り出した。
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朝のホームルームが終了して、直ぐに校長室へと呼び出される。
アレフ校長からの要件は、昨日の事件に関する事ではあったが、一概に進展はなかったらしい。
軍の凄腕の魔法使いや、この学校のセキュリティを持ってしても、誰がいつどこで、侵入経路を設定したのか分からなかったらしく、今まで以上の警戒が必要になってくるらしい。
その為、学校内にも俺の他に1人7つ星魔法使いを派遣するらしい。
軍からしたら大盤振る舞いだが、確かにこの学校が無くなっては将来の軍の在り方そのものにも影響するかもしれないからね。納得だ。
「その先生は私の正体を知っているのでしょうか?」
「ん? 先生?」
「教員ですよね?」
「生徒だが……」
「7つ星魔法使いが!?」
「我々も最初は教員で、という話だったのが、是非生徒として入学したいと言われてな」
やな予感が凄いするな。
俺は冷や汗をかきながら 「その生徒の名前は?」と問うと校長室の扉が開く。
「本日から2年生のアルバスに編入いたします。レオナ・ベガです。よろしくお願いします」
なんでいっつもこうなるんだよ……
俺の日常は静まりそうもない。