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7つ星魔法使いの日常  作者: 四季
2章
27/30

ラースの森特別演習⑨

 ここまで追い詰められたのはいつぶりだろうか。


 戦闘の最中ふとそんなことを考える。

 今のまだ幾千と戦闘は行ったつもりだが、一合で終わることが多かった。


 久しぶりに魔法を練り上げ、付加魔法にも気を使う。魔素を吸収と同時に回復をするという行為……



 ……。


「おいおい。なに笑ってやがんだよ」


 おっといけない。戦闘中に笑みをこぼすなど本来あってはならないのだった。


「コホンッ

 そういえば君の名前を聞いてなかったね」

「これから死んで行くやつに名乗れっていうのかぁ?」


 自信満々にそう答える大男。


「冥土の土産ってやつだな」

「がはは!! 死ぬ前に俺の名前を知りたいって事かよ!

 いいぜ! 俺の名前は ベルフェゴール お前を殺すおと……」


 先ほどまで10メートルは離れていた距離を今度は俺が一瞬で詰めてやった。あいつの目と俺の目が今日1番近い距離で合った。


「そうか。さよならベルフェゴールゆっくりとおやすみ」


 周囲の魔素が俺の周りに集まる。

 ベルフェゴールも慌てて、綱引きに参加しようとするが、 天啓 を持っている俺にはもう追いつけない。


 俺は人差し指に魔素を込め、ベルフェゴールを指差す。

 それを見たベルフェゴールが体内の魔素を放出する。


「蛍」 「魂の風ぇぇぇぇぇぇ」


 2つの魔法は大きく激しくぶつかった。



 ――――――――――――――――


「く、くそがぁぁぁぁ!!」


 俺の前には体の半分を失い、のたうち回っているベルフェゴールが居る。


「てめぇ! 手ぇ抜いてやがったのか?」

「抜いてないよ。ただ思い出したんだ。少しね」

「思い出したぁ? 何をだよ」


 ベルフェゴールは死にそうな顔で話をしたそうな顔をしているが、体内では早くそして確実に回復を行っているのを俺の目は見逃さない。

 とはいっても……


 久しぶりに楽しかった。

 戦闘を楽しいなんて思うと、いよいよ 狂戦士 とあだ名がつけられそうだが……

 1日でも早く強くなりたかった軍学校時代の探究心を思い出した。毎日強くなる自分が好きで、毎日強さを求める自分が好きだった。


 それをベルフェゴール……こいつが再度教えてくれた。やり方はクソだったけどね。


「なんとか言えよ! 無比」

「……。」


 俺は中指に魔素を込める。

 悟ったように目を閉じ、回復を中断するベルフェゴール。

 意外と潔いんだな。


「ちっきしょぉぉ!! ここで終わりかよぉぉぉぉ!!

 助けてくれよボス!!」


 前言撤回。そりゃ誰しも死ぬのは怖いよな。


「楽しかったよベルフェゴール。次はいい子に生まれてこれるといいな……。 そうそうさっきの答えだけど。」

「あ??」

「喜怒哀楽の 喜怒だよ」


 我ながら抽象的な発言だ。目の前のベルフェゴールも頭にハテナを浮かべたのだろう。あれだけうるさい男が静かになったのだから。


 パシュゥン

 

 ちゃんと守れたよ。



 ―――――――――――――


 フォン


 ポケットに入れていた通信結晶が赤く光る。


「はいはい。こちらイブでーす。戦闘終了。終わりましたよ」


 過去になくテンションの高い俺に戸惑いながらも、あれは校長は、「ありがとう。本当に助かった」 と安堵を溢す。


 あれは校長によると、周囲に魔法使いの反応は無く、ベルフェゴール単独の犯行と推測されるらしい。まあ裏で誰かが一枚噛んでるのは間違い無いが、今回はそれでいいか。


「つっかれたぁ」


 俺は地面に腰掛け、空を見上げる。

 ベルフェゴールとの戦闘の影響で、あたるの木々がごっそりとなくなり、月が綺麗に見える。

 あと数分ほどで、7つ星魔法使いが状況把握のためにやってくるらしいので、それまでは月でも見てゆっくりとさせてもらおう。


 ゾクッッ


 は?


「にゃにゃーー、ベルたん死んじゃったのかにゃー」

「無駄口は良しなさい。黙って仕事をするぞ」


 馬鹿な。俺の魔力感知をすり抜けたのか!?

 俺は慌てて 2人 から距離をとる。


「なんなんだお前ら」


 味方ではないことは確かだろう。

 それに……

 ベルフェゴールほどではないが、こいつらもかなり強い。


「にゃにゃーー! 割と消耗してるのにゃ」

「ボスも言ってたでしょう。楽勝だと」


 魔素からするに 猫妖精(ケットシー) と 吸血鬼(ヴァンパイア) か……

 ヘガドルでは、亜人の入国は認められていない。

 一連の騒動は他国によるものなのか。


「はは。弱くなってる弱くなってるって。好き勝手言ってるようだね」

「事実ですから」

「試してみる?」

「勝てると?」

「余裕だろ」


 その瞬間、3人が同時に固有魔法を展開する。


 猫妖精は 身体強化 

 吸血鬼の方は 魔素を鎖のような形へと変化させる変化系


 猫妖精が距離を詰め、吸血鬼が遠距離で攻撃をしてくる。

 厄介だな、くそ。


 ドスッ


 猫妖精の拳が俺の脇腹を抉る。


「にゃにゃーー、私たちの未来のために死んでねーー」

「こっちの台詞だよ」


 猫妖精が上がった部分は俺の雷で伸ばした 虚像 魔素もかなり詰めておいたので……


「ぎにゃぁぁ!!」


 猫妖精の手から足の爪先にかけて激しい電撃が走る。


「さよならだね!!」


 追撃を加えようとした俺の手に吸血鬼の鎖が伸びてくる。

 すんででかわし、一度距離をとる。


「改めて聞くけど勝てると思う?」

「余裕かと」

「そっちの死にそうな猫妖精は?」

「死にそうになってないにゃあ! びっくりしただけにゃ!」


 ブンブンと拳を振りながら元気アピールをする猫妖精。

 白目を向いてたじゃねえか……


「確かに聞いてたよりはお強いかと」


 メガネを手の甲でくいっとあげる吸血鬼。


「まあ、伊達に2つ名もらってないしな」

「やめなさい」

「え?」

「無比 は貴方じゃない。神なのです。死霊魔法使い(ネクロマンサー) から私を救ってくれた! あぁ、無比よー。無比無比無比ぃぃ」


 何この人急に怖い。

 完全にキャラ崩壊しちゃってんじゃん。


「あーあー、こうなったらめんどいにゃぁ」

「連れて帰ってもらえる?」

「君の首も一緒ならいいよ〜」

「なんなんだよ君たち……」


 アレフ校長との話から5分以上が経過してるのをこの時の俺は忘れていた。



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