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7つ星魔法使いの日常  作者: 四季
2章
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ラースの森特別演習⑧

 アリアを無事、転移魔法でオースティンへと運び終え、目の前のそいつと向き合う。

 並の魔法使いだったら、確実に倒せるくらいの魔法をぶつけたはずなのだが、そいつはピンピンとしている。


「おぉーーー! 会いたかったぜぇぇー!!」


 今こうして向き合うと、やはり7つ星レベルの魔素を持っている。簡単にはいかないだろう。


「やっぱり目当ては俺ってわけ?」

「そりゃそうだろぉー! 楽しみたいんだよ俺は」

「だとしたらなぜ、あの子に手を出した?」

「おーおー。そんなに怒んなよ。正当防衛だぜ? あの嬢ちゃんが先に手を出して来たんだよ」

「だとしてもやりすぎだろ」

「まぁー、最悪殺しても良かったか、その方がお前も本気になっていたか?」

「もういいよ、お前」


 その言葉と共に、俺は 天啓 と 固有魔法 を発動する。鎮魂歌と戦って確信した。俺は全盛期の40%ほどしか能力を出しきれていない。前回同様直ぐに勝負をつけなければ、対応された時に危うい。


 俺は全身から 雷 を出し、直ぐに付加魔法を込める。蒼雷へと変わった魔法を指先へと凝縮。座標をあいつに合わせて、力を込める。


「群青」


 過去に、炎で代用した事はあるが、本来は雷で行う。1番展開までの時間も短く、威力もそれなり。


 瞬きをする間もなく、蒼雷はあいつに届いた、はずだった。


 あいつの体の前から竜巻の様なものが発生したかと思うと、直ぐに俺の蒼雷を渦の中へと巻き込んで無かったものにされた。


 強い。


「あん? まじかよ」

「なんでお前が驚くんだ?」

「おいおい……ショックすぎるぜ。そんな事あんのかよ」


 そいつは、先ほどまでのハイテンションとは打って変わって、見るからに落ち込んでいく。


「弱くなっているとは聞いてたが、ここまでかよぉーーーー!! ちくしょーーーーー!」


 ビリビリと体に響く様な大声で叫ぶ。


「東レンメールの時と別人じゃねえか!!」


 東レンメール……!!

 戦争参加者かこいつ。


 東レンメール戦役、4年前だろうか、ヘガドルとレンメール共和国の戦争で、戦地となった東レンメールから来ている。こんな奴いたか?


「東レンメールって、お前もあの戦いに参加してたのか?」

「おめさんとも、直接やり合った中だったが、まあ当時のあめさんからしてみれば、俺なんて雑草に過ぎなかったか。まあ話はこれくらいでいいか」


 あいつの周りの魔素が右拳に集結する。

 固有魔法は風。属性系か。


 属性魔法系の固有魔法は、10年前までは、外れと言われていたのだが、莫大な魔力や魔素を持ってすれば、付加系の固有魔法よりも強い、と言われ始めている。


 地面を蹴る、どんっと音が聞こえたかと思えば、すぐさま俺に襲いかかる。

 俺も直ぐに魔法を展開させる。


「豪風ぱーーーんち」

「刹那」


 どごぉーーーーーーーーん


 っっ。ほぼ互角。いやちょっと圧されたか!?


 直ぐ様、次の魔法の展開を急ぐ。


「豪風きぃぃーーーく!」

「麒麟」


 俺と魔法はあいつの袈裟から斜めに入り、あいつの足は俺の溝を捉える。

 とてつもない衝撃により、俺の体は近くの木へと叩きつけられた。


「がはっ」


 腹を肉体強化で守っていたはずが、それすらも貫かれ、肋が何本か折れているのがわかる。

 直ぐに治癒魔法で回復をするが、あいつは余裕そうにこちらに向かって歩いてくる。

 最中、何かに気づいた様で、慌てて通信結晶を取り出して、何者かと会話をし始める。


「あいあいー! マスターか。……。順調も順調だぜ。こうも弱いとげんなりだけどなぁ。……。ん?ああ、まだだけど」


 こちらに向き直り。


「もう終わるよ」


 と言い、通信結晶を落として、再度突進をしてくる。


 こいつが誰かと会話している間に、取り出しておいた剣の鞘を抜き、竜巻を纏った手と交錯する。


「おいおい! だっさい詠唱は言わないのかい?」

「俺をダサいだって!? 詠唱はそいつのセンスと生き方が出るんだぜ! お前の面白味のないネーミングセンスよりは、幾分ましだろうがよぉ」


 がきんっ


 俺の剣は弾かれ、やつは直ぐにガラ空きの胴を目掛け、拳を振る。


「霧雨」


 俺の魔法は、弾かれた剣と、大男の上にあった魔素を繋いで、間にあった遮蔽物を両断した。


 大男の腕は、赤い血と共に宙を舞う。


 俺はすぐに追撃に移ろうとするが


「風の闘気ぃぃぃぃぃ!!」


 大男の身体から出る豪風により、中断した。


「がはは!! 今のは悪くない魔法だなぁ。だが、付加魔法まで突っ込む余裕は無かったか」

「やっぱり治癒魔法は使えるんだな」

「戦争経験者からすると基礎中の基礎だろぉ」


 男の腕はすぐに元通りに再生した。


「んで? どうすんだ? 次はなにを見せてくれんだよぉ!」


 正直こいつはかなり厄介だ。属性固有魔法をここまで練り上げて、治癒魔法も扱える。こいつの魔素もほとんど減ってない様にすら感じる。


 俺の頬から汗が滴った。

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