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7つ星魔法使いの日常  作者: 四季
2章
21/30

ラースの森特別演習③

 すっかりと日は落ち、辺りは静寂に包まれていた。


 俺たちアルバスの生徒達は、焚き火を真ん中にして円となって広がる。


 時刻は19時。辺りでも精霊や魔獣の気配が消えつつあり、1日目も終わりへと近づいていた。


 他の生徒達は、午前中に川遊びをしたり、お昼ご飯と夜ご飯作りに疲れてぐったりとしている。

 その点俺は、水着を忘れて川遊びにも参加していないし、軍学校時代の山や森での演習に比べたら楽すぎるため、まだまだ大丈夫だ。


 すると


 俺の魔力感知魔法が届くギリギリ範囲なので、1キロ近く後方ではあるが、そこそこ強い魔獣の魔素を感知した。

 中級魔獣ほどだろうか。上級には届かないだろうけど、クラス基準に置くと、そこそこ脅威になり得るくらいのレベルであることは間違い無いだろう。


 俺たちのクラス、アルバスは他のクラスよりも奥地へと拠点を置いたため、魔力感知が反応した地点からだと俺たちのクラスが1番近い。


 おもむろにセルーニョ先生が立ち上がる。


「皆さん、今朝も早起きでしたし、明日も早起きになります。天幕に入りゆっくりしてください」


 周りの生徒達は


「はぁい」


 と、少し気の抜けるような弱々しい声を出し、各自天幕へと向かう。


 ミハエルが俺の方に来て


「イブ君? 天幕に行かないの?」


 と呼ばれたので、取り敢えずは先生に任せて天幕へと向かうことにする。

 反応のあった魔獣はゆっくりとこちらの拠点へと近づいているようだ。


 俺は急いで天幕に戻り、周りの生徒達が 恋バナだー とか まだまだ夜更かししちゃおうぜー 的な話で盛り上がっていたが


「俺は寝るわ」


 と一声かけて布団にくるまる。


 千里眼魔法で、ここから約500メートルほど離れた地点へと座標を合わせる。


 5つ星魔法使いのアリアにしても、魔力の節約で初日は魔力感知を切っているだろう。先生もいるしね。


 そのまましばらく待っていると、魔獣が姿を見せる。


 中級魔獣 大毒蛇 だ。


 その姿は、全長10メートルほどの大きな体躯で、舌をチラチラと左右に振りながらゆっくりとこちらに向かってくる。

 知能もそこまで高くないが、皮膚が硬く、常人の常駐魔法では傷一つつけることはできない。そのまま毒に侵され死ぬなんて事も考えられる。


 突然大毒蛇の動きが止まり、口を少し開けて前方へと威嚇をする。視線の先に座標をずらすと、セルーニョ先生が大毒蛇の元へと近づいていく。

 大毒蛇もゆっくりと首を振り、今すぐにでも攻撃ができるような臨戦体制へと移った。


 勝負はあっけないほど一瞬でついた。


 セルーニョ先生の固有魔法、 地 で大毒蛇の真下の地面の形状が変化し、まるで落とし穴にでも引っかかったかのように奈落へと堕ちていく。


 まじか。驚いた。

 魔素の綱引きが無かったとは言え、一瞬で魔法を発動させ、かなり多くの魔力消費が予想される大規模魔法を、あたかも簡単かのように発動させたのだ。


 事前にアレフ校長に聞いた情報によると 先生は5つ星と聞いていたが……

 魔法使いそのもののレベルが上がっているのか、それ以上の感覚へと陥った。


 先生はその場で ふぅ と一呼吸おいた後突然俺の千里眼の示した座標の方へと向き、俺が見ている景色越しではあるがばっちりと目があってしまった。


 千里眼魔法も魔素のモヤが残るため、視認は出来ないものの優秀な魔法使いとなると感覚で分かる。

 とは言っても雑で粗い魔法使いの千里眼だったら分かるが、特殊作戦教育にまで参加した、俺の千里眼に気づいていたとしたら……


 先生は10秒ほどこちらを見ていたがら、プイッと顔をずらし、俺たちの拠点のある方向へと歩き出した。


 びっくりした――


 魔素のブレとは言っても、俺の魔素が抽出されているわけでは無いため、あの場から 誰の魔法 かを特定するのは不可能ではある。


 俺も、千里眼魔法を切り、布団から出て、途中だった就寝準備の続きを始める。

 俺が観察を始めてから30分も立っていないはずだが、周りの生徒は静まり返り、そこらじゅうから寝息やいびきが聞こえる。

 朝も早かったし、緊張もあるだろうしな。


 静かに天幕から出ると、丁度 先生も帰って来ていた。

 1人寂しく焚き火の前に座り、ぼーっと考え事をしているようだった。

 俺からしてみれば、関わりたくは無いため、拠点の炊事場へと行き、歯を磨いて顔を洗った。


 再度天幕の方へと戻ろうとすると。


 げっ


 タイミング悪く、セルーニョ先生も天幕へと戻るタイミングだったらしく、ばったり出会ってしまった。


「おや?イブ君。まだ寝てなかったんですか?」

「はい。この時間だとまだ寝れなくて」

「そうですよね。まだ7時ですからね」


 ん?俺の魔法、時刻表示では、8時となっている。

 8時ですよーと言おうとしたが、少し考え直す。


 時刻表示というのは、時報のようなものでは無く、発動後、自分の視認する範囲に現在の時刻を映し出すと言うものである。


 かなり少量ではあるが魔力は使用されていると言うわけだ。

 とは言え、かなり少量なので、別に発動してようがしてまいがそこまで関係はない。


 が……


「まあ普段10時以降に寝てるので」


 と、曖昧な回答。そりゃビビるよ!!


「そうですよね。でも明日も早いので、できるだけ早く休んだほうがいいですよ?」

「ええ。そうですね。それじゃ」


 探られているのは間違いない。

 恐らく俺が魔法を併用しているのではと探られたのだと思う。魔法感知に千里眼あとは時刻表示。もちろん大した魔力も消費しないため、楽勝ではあるのだが、3つ星魔法使い程度では、併用するとムラができてしまうのだ。


 500メートル先の魔力感知に、千里眼、とてもじゃないが4つ星はないと厳しい手法。


 やはり 先生は、千里眼の正体は俺だと並んでると言う事だ。


 考えてもしょうがないため、今日はもう寝ることにする。

 まだ1日目だしね。

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