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7つ星魔法使いの日常  作者: 四季
2章
18/30

劣等感

 訓練を終え、オースティン男子寮へと戻った俺は、1日で1番幸福な時間ランキング1位(俺調べ)の温泉へと直行した。


 相変わらずの清潔感に綺麗な内装……おっ今日は薔薇の香りの日だ!


 オースティンでは日替わりで入浴剤が変わる為、毎日のこの時間が大好きなのだ。


 温泉へと浸かると何やら同学年っぽい生徒達が授業について話している。

 同じクラスでは無いな……多分!


 その生徒達は、俺に気付きニタニタと笑いながら話しかけてくる。


「君ってこの間アイリスと揉めていた子だよね」

「ええ。いかにも僕がイブ•レッドパールです」


 飄々と話す俺にその生徒は大笑いしながら続ける。


「やっぱりそうかー! すげえよなお前! 学校であんな揉め事起こした奴初めて見たぞ」


 俺の背中をばしばしと叩き2人で笑っている。

 いわゆる体育会って奴だろうか。

 しょーじきかなり不快である。


「何で揉めたかは知らねえけど、そんな本気になんなよ」

「君たちは本気になることないの?」


 うんと言ったら 寂しい奴だな! と吐き捨てて逃げてやろうと決めていたが、少し捻った回答が返ってきた。


「たかが学校だろ?4年間適当に授業を受けてたら軍でも魔法協会でもどこでも雇ってくれるんだぜ?本気になんてならねえよ」

「そうそう。勉強なんて好きな奴がやれば良いんだよ」


 間違ってはないが、この学校を買い被りすぎているのに気づいてないらしい、そこまで優しい学校ではないと思うが、まあ


「全員が君たちみたいな考えだったら国なんてとっくに終わってるね。結局なんでも差し与えられたら贅沢になっていくもんだな。1つの国が終わる時ってのは教える人がいなくなった時だ。無理矢理にでも勉強させてくれる今の環境をもっと大切にした方がいいよ」


 そう。教えてくれる人がいる環境なのに教わらないってのは大損していると思う。その人は自分の嫌な事に耐えて 教えれる立場 になっていると言うことに気付けないうちは一人前になんて程遠いいのだ。


 その生徒達は、初めはキョトンとしていたが、直ぐにお互いの顔を見合わせてニタニタを再開した。


「ほらまた本気になった」


 俺はため息を吐いてその場から立ち、出口へと向かった。


 その2人は俺のことを目で追いながら、


「あいつ息子もチビだぞ」


 と言いやがった。

 死刑決定。


 おっと危ない危ない。

 流石に今ここで先ほどアレフ校長から頂戴した通信結晶で、息子を馬鹿にされたので魔法使っていいですか?なんて聞いたら俺の死刑が執行されてしまう。


 俺はグッと耐え、脱衣所へと向かい、制服へと着替えた。


 脱衣所から出ると時刻は19時20分になっていたので、そのまま食堂へと向かい食事を済ませる。

 いっぱい食べると大きくなると言う噂を聞いたので、お腹がはち切れるくらい食べてやった!にしし。





「うぷっ」


 調子に乗って食べ過ぎてしまった俺は、腹ごなしの運動のために、夜の中庭に散歩目的で来ていた。


 庭園では、ライトアップされた花々や、夜にも関わらず綺麗な色で空を浮遊している精霊達の姿もあり、映画のワンシーンの様な美しさがあった。


 庭園の奥へと進むと、編入して2日目にアリアと話した噴水広場があり、少し懐かしい気持ちになる。まだ1ヶ月とかしか経ってないんだけどね。


 ベンチへと向かうと人影があり、まさかと思ったが予想の人物とは違った。


 同じクラスであり、特別演習でも同じ班である アリスが1人でベンチに座っていた。

 緊張しつつも俺が 


「こんばんは」


 と言うと、ぴくっとなりながら


「なんだー。イブくんかびっくりしたよ」


 と笑顔で返してくれた。

 アリスは桃色っぽい美しい髪を腰まで伸ばしていて、顔もかなり整っている。そんな子に笑顔で返答されるとものすごく緊張するのが男ってもんだ。

 戸惑いつつも話を続ける。


「何してんの?こんな時間に」

「あはは。んー……少し不安になっちゃってさ」

「不安?」

「うん。今日の訓練でも魔法を使うのに皆んなより時間かかっちゃってたし」

「そう? そんなことなかったと思うけど」

「イブくん1番前だから私のこと見えてなかったんじゃ……

 」


 ぎくっ。適当言ってるのがバレた。


「いやあ、全体練習の時も結構良かったと思ったよ?」

「あはは、そう言ってもらえると嬉しいかな」

「アルバスは優秀な生徒が多いから焦っちゃう気持ちも分かるけど、素質を認められているのは事実だよ」


 俺がそう言うとアリスは嬉しそうにニコッと笑い


「確かにね! そう言われてみるとそうだった。ちょっと弱気になってたかな。ありがとう」


 と言い、俺におやすみといい寮へと戻って行った。


 ミハも前、同じ様な事で不安を感じてたけど、優秀がゆえなのであろう。劣等感って言うのは一口に悪い感情ではない。周りと自分を比べると言うのは度が過ぎなければいい感情なのである。


 よし。俺も頑張ろう。


 特別演習に向けて俺も気合を入れ直した。




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