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7つ星魔法使いの日常  作者: 四季
1章
12/30

満月の夜

 時刻は19時15分


 俺は、学校から提出された課題をやり終え約束のための準備を始める。


 20時にアリアを呼んではいるが、果たして彼女はきてくれるのか。

 来てくれないのであれば、どんな手を使ってでもこちらから出向くしかない。


 俺の盛大な勘違いだったとしたら笑い話で済まないのだが、残念ながらその可能性は極めて低いだろう。


 俺は制服に着替え、ブーツの紐を結ぶ。

 すると後ろからルームメイトであるミハが話しかけてきた。


「イブ君外出?」

「うん。ちょっと出てくるよ」

「気をつけてね!」


 短い会話を交わし寮の廊下へと出る。


 オースティンの寮では外への外出は基本的に授業終了後17時30分から22時までの間となっていて、生徒一人一人の魔素と魔力で記憶されているため、外部の人間は許可がないとはいる事はできない。


 何故外に出るかは、この中だと魔法が使えないためである。


 俺はそのまま歩き出し、予定よりかなり早いが、アリアとの約束の場所 中庭へと向かう。

 庭園だと他の生徒がいることが多く、密会には向いていないため今回は中庭に呼び出した。


 中庭へと着くと、既にアリアが来ていた。


「約束の時間19時30分でもよかったかもな」

「あの手紙どういうつもり?」


 早速本題。まあ時間が限られてる以上本筋は早く終わらせた方が都合がいい。


「取り敢えず外に行こう。ここじゃ魔法は使えない。君のお友達もその方が都合がいいだろうしね」

「外へは……行かない」

「大丈夫」

「もう、この結界の中にいないとどうなっちゃうのかわかんないのよ」

「それも含めて大丈夫だよ」


 俯き気味に話していたアリアがこちらを向いて怒鳴る。


「だから!!! なにが大丈夫なのよ!! 私が今どんな思いで、どんな状態なのかも知らないくせに!!」


 アリアの状態は、おおかた俺の推測通りなのだろう。


 抑魔結晶を使ったとしても凄腕の魔法使いからは魔素や魔力の根底は見える。

 だから俺の魔力の根底を見た悪魔がすぐにでもアリアを自分の手中へ収めるために呪いを強めているのだろう。

 アリアの体は1年前から呪いに蝕まれている。それも最上級魔獣クラスの奴に。


「君に今どの段階まで呪いが進んでるのかまでは知らない。でも君もそれを俺にいうことはできないだろ。口封じの関係で」

「ええ! そうよ。だからあんたに出来ることなんて一つもないのよ」

「でも君はここに来た。俺を頼ってもいいと思ってくれた理由はあるんじゃないのか?」

「ええ。でもあんたはこの口封じの魔法すら解けないんでしょ! それならもうそれが答えみたいなものじゃない!」


 アリアの目から涙が流れる。

 俺のポンチョの襟を掴んで顔を近づけて続ける。


「期待させるようなこと言わないでよ……もうこれ以上絶望したくないの……」


 そう言うとアリアは俺の胸に顔を埋め泣き出した。


 頭を撫で少し彼女が落ち着くまで時間を置く。


「アリア、はっきり言うと今の君に取り憑いているのは悪魔だ、断じて家族ではない」

「でも、私の名前を何回も呼ぶ声は……」

「悪魔は人の記憶を奪う魔法を使える。勿論君が前にした声真似の魔法だって簡単に使いこなす」


「それでも俺ならその悪魔を退けることが出来る」

「貴方悪魔悪魔っていうけど、どのくらい強いのか知らないの? 7つ星魔法使いですら殺された事だってあったのよ?」

「それも知ってる」

「何で勝てると思うのよ……5つ星の私がいるから?」

「いや、君を人質に儀式を進めなければいけないから儀式の間は君は魔力は使えない」

「人質って……そんなの失敗したらどうなるの」

「君は悪魔への供物となり、その場で体を奪われる」

「そ、そんなの飲めるわけないじゃない」


 これは全部本当のことで嘘は1つもついていない。


「大丈夫。絶対に負けない」

「そんなの信じられるはずがないでしょ! 悪魔がこの街に誕生するってどう言うことかわかってるの!? 人が大勢死ぬ、もう私みたいな子は出ないでほしいの!」

「優しいな君は」

「こんな時になに言ってんのよ……」

「ただそう思っただけさ。そうはならないよ。絶対」


 アリアはまだ何か言いたげな顔をしていたが、あえて言わせずに彼女の手を取ってその場に立たせる。


「約束するよ。君の呪いは今日解ける。そんで明日からは何も後ろめたさなく、笑って友達と話せるようになるよ。」


 アリアは大粒の涙を流しながら黙ってこちらを見ている。


「たかが数日前に会った中だけど、俺はやっぱり君には傷ついてほしくないんだ。大丈夫。絶対うまくいく」


 俺はそういいアリアに手を差し出す。

 アリアは少し考えていたが、そのまま俺の手を握る。


 そうして2人で学校の外へと出ていき、満月の中広い広場へと向かう。


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