2-1 偏見で人を見るのはいけないよね
俺はまたもや光に包まれ、とある洋風な館に移動していた。
「さあジローさん、天駆邸に着きましたよ!早速中に入って、仲間に会いましょう!」
ミカエルが念話してきた。
いや急展開すぎるわ。
どこだよここ。
「あ、紹介が遅れました。ここは天駆邸と言って、ジローさん等の世界を救う人達、いわゆる『救世主』が拠点とする場所です」
「拠点?じゃあつまり、俺はこれからここで暮らさなきゃいけないのか?」
「はい。ですがご安心下さい。ここには寝室やキッチンなど、生活に必要不可欠な物は全てが揃っています」
それに、メイドもいますしね、とミカエルは呟く。
「別に過ごすのはいいんだが、そうなると現実世界ではどうなるんだ?俺会社どか行かなきゃいけないのだけど……」
「あ、それについては大丈夫です。今私の仲間がそっちの世界で交渉中ですので」
大丈夫かどうかは置いとくとして、交渉はちゃんと通るのだろうか……
俺の上司とか口硬いし。
「では中に入りましょう!小さい事は気にしたら負けです!」
ミカエルに急かされる。
ま、それもそうなのかな。
考えたくない事は考えない。
今は目の前の事に集中すべし!
「あ、言っときますけど私とはこれで一旦お別れなので、後は中のメイドを頼って下さい」
「え、そうだったのか?」
俺は少し驚く。だがすぐに立て直して
「でも、ミカエルには様々なことを教えてもらったからな。この恩はいつかまた返すから、その日までちゃんと覚えていろよ?」
と、少しカッコつけて言った。
「はい!もちろんです!」
「んじゃ、またな、ミカエル」
「はい、さようなら、ジローさん」
どうか、お元気で。
ミカエルは最後に一言残し、念話を終了させた。
さて、こちらも足を進めようかな。
俺はドアの前に立ち、そのままドアを開ける。
最初に見たのは、メイド服を着た女性の姿だった。
ドアを開けた瞬間に目の前にいた。
「うおっ!?」
驚いて少し後ずさる。
「あら、驚かせるつもりは無かったのですけど……申し訳ございません」
女性は少し謝って、
「よくぞいらっしゃいました、救世主様。私はこの館のメイドの『天使』、ウリエルでございます」
と自己紹介をした。
この人も『天使』なのか。
「ミカエルお姉様から話は聞いております。ジロー様、でよろしいでしょうか」
………え!?
こんな礼儀正しい人がミカエルの妹!?
なんか意外だな……
「……ジロー様?」
「……あ、ごめんごめん……その呼び名でいいよ」
少し焦りながらも、質問には答えていく。
これがジロースタイル。
「わかりました。ではこちらへご案内いたします」
そう言われ、俺はウリエルのあとを追った。
……にしても綺麗だなー、この人。
確かにミカエルも綺麗だったけど、ウリエルはミカエルには無い大人しさというか、大人びている気がする。
こっちが姉と言われても納得してしまいそうだ。
「リビングに着きました。こちらで全員が揃うまでごゆっくりどうぞ」
そう言われて、ここが初めてリビングだと気づく。
カーテン、ソファにカーペット、何もかもが綺麗だ。
ん?ソファに三人ほど俺と同じ待機している人がいる。
「あ、また来たよ」
女子高生らしき一人がこっちに気づくと、残りの二人もこちらを見た。
「あら、かなり強そうな子が来たじゃない。これは遊びがいがありそうだわ……フフッ」
もう一人の成人女性らしき人が一人げに笑う。
正直言ってナイスボディだ。
「そうか?俺には弱く見えるけどな」
最後の一人の男が笑いながらも軽くディスる。
髪の毛は伸ばしているのか長い。
「えっと……はじめまして、俺は榎本二浪と言います。ジローと呼んでください」
軽く自己紹介する。
初対面だと緊張するタイプだ。
「はじめまして。私の事は『魅奈』って呼んで。因みにジョブは『召喚士』だわ」
ナイスボディの女性はミナさんって言うのか。
「……『銃撃者』の友理。ヨロシク」
女子高生の娘はユリか。
「俺は『侍』の『武蔵』。一応言っておくが、ムサシは本名じゃないからな?」
はあ、別にそういうのは気にしないけどな……
「で、お前のジョブは何なんだよ?」
ムサシが俺に尋ねる。
「俺?俺のジョブは『乱妨者』だけど……」
「ぷっはははは!!なんだそのジョブは!?見たことも聞いたこともねえぞ!?だよなぁ?お前らも」
ムサシに対しミナさんとユリもうなずく。
「もしかして、弱すぎて知名度がないのかぁ?ああん?せいぜい俺達の足を引っ張らないよう頑張るんだな!」
開始早々煽られた。
しゃーねーだろ新種なんだから!!
そしてお前のせいで空気最悪になっちゃったじゃんかどうしてくれんだよ!
あ〜どうすればいいんだこれ、言い返すにも火に油を注ぐ物だし……
うーん、うーんと悩んでいたら、ガチャ、とドアの開く音がした。
どうやら誰かが来たようだ。
「えっと……リビングはここで合ってるんだな?」
新しく来たその男は、紳士の様な綺麗な眼差しで、顔つきもちゃんとしていた。
「お?また新しく来たじゃねえか。まさか、お前も弱いなんてこと無いよな?」
ムサシがそいつに対してまた煽る。
「ああ、そういや自己紹介がまだだったな。俺は『聖騎士』の遥斗だ。よろしく頼む」
「ほお……『聖騎士』か……悪くねえじゃねえか。俺は『侍』のムサシだ。よろしくな」
「『召喚士のミナよ」
「……『銃撃者』のユリ」
「『乱妨者』のジローです」
みんなそれぞれ自己紹介していたので、俺もどさくさに紛れて自己紹介をする。
「ほお……一人聞いたことの無いジョブを持ってる奴がいるな」
「そうなんだぜ!ったく、弱いやつがこんな所来るなっつーの!」
「……そいつは弱いのか?」
「ま、まだ決まったことではねえけど、ほぼ確信に近いな」
「なるほどな……お前、ジローと言ったか」
ハルトは俺に近づいて、俺をにらみつける。
「弱いからって、絶対に邪魔はするなよ……?」
忠告された。
お前もそっち側の人間かよ!!くそが!