1-1 異世界転移はそんないい物じゃねえ
やっとの思いで終わらせた今日のノルマ。
体はもう既に限界に近づいている。
「ジロー君、ノルマ終わったなら、もう帰っていいよー」
上司に言われたその言葉で、家にやっと帰れることを自覚する。
「では、俺はこれで。おつかれ様です」
「おつかれー」
最後に一言言葉をいれ、俺は会社を出た。
ーーもうこの会社には来れないことを知らずに
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家に帰り、自分のパソコンを開く。
それはもう一種の儀式のように、とても素早く一つアプリの所ヘとカーソルを動かす。
クリックする。開かない。
もう一度クリック。開かない。
あれ…おかしいな…
いつもならすぐにゲームのタイトルが出てログインできるのに…
なにかのバグかと思い、再起動する。
俺のパソコンはかなりのお古なので再起動に少しだけ時間がかかるので、ここで自己紹介をしておこう。
俺の名前は榎本 二浪。
「二浪」は「ニロウ」ではなく「ジロウ」と読む。
表社会で使える長所が何一つ無く、いまは底辺社畜コースを走っている真っ最中だ。
ゴール見える気がしねえけど。
あと、そんな俺でも唯一誇れる物がある。
それは…と言っている最中だが、パソコンの再起動が完了できたので自己紹介中断。
今度こそアプリをクリックしようとしたが、その横になにか怪しいファイルがある。
…「天命団」?
こんなファイルは作った覚えもないし、どっかから貰ったわけでもない。
普段の人なら無視するだろうけど、なにか名前からして特別そうな臭いがしたので、少し面白半分でクリックしてみる。
その瞬間、パソコンから急に眩しい光が出てきた。
それを人間的本能で目を手で抑えて耐えて、光が収まった頃には、絶対に俺の家ではないどこかに移動していた。
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…何処だ、ここ…
周りには誰もいない。見えるのは終わりの無さそうな平原と、何年ぶりに見たかわからないとても綺麗な青い空。
一言で言うならば、「ファンタジー世界」だろうか。
それにどこか既視感を感じたが、そう思い始めた瞬間に、
空から少女が舞い降りてきた。
翼生えてる少女が。
は!?おかしいだろ!?なんで少女が舞い降りてくる!?
なんで少女に翼が生えてる!?
そんな混乱状態の俺に、少女が話しかけてきた。
「よく来てまいりました救世主様。私は『天使』のミカエルでございます。」
は?救世主?天使?なんだそりゃ僕知らない!
「貴女の名前は?」
そんな俺など容赦なしに、ミカエルとか言う少女は俺に問いかけてくる。
そんな唖然とした顔をみて察したのか、ミカエルは少し切なさそうに
「すみません…まだ説明不足でしたね」
と謝ってきた。
やめて…俺が悪いみたいにになんじゃん…
「…とりあえず、この状況を説明してくれ」
ミカエルにそうお願いしてみると、
「はい!わかりました!」
と、どうやら説明をしてくれるそうだ。
ったく、かなりかわいいじゃねえか。