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東京綺譚伝ー光と桜とー  作者: 月夜野 すみれ


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第八章 疑惑と涙と ー後編ー

 頼光と四天王の話し合いは続いていた。

(これ)から如何致(いかがいた)しましょう」

「季武は今まで通り六花ちゃんに()いてろ。一人は学校の近くで待機。残り二人は情報収集だ」

「核を盗ったと言う事は酒呑童子達は既に再生されてると思われますが、其方(そちら)如何致(いかがいた)しますか」

 金時が訊ねた。

「今回酒呑童子の居場所を教えてきたのは土蜘蛛だろう。再生させたら(おそ)らく(また)我々を(おび)()(よう)とする(はず)だ」

(それ)までは捜さないのですか?」

(みやこ)()た頃、酒呑童子は(ほとん)ど噂に()ってなかっただろう。貴族の娘が(さら)われて陰陽師が占いで見付けなければ大江山に()るとは気付かなかった」

「そう言われてみれば……」

「酒呑童子は(いにしえ)から人間界に住んでいたが討伐員に気付かれない(よう)に細心の注意を払っていた。今回も向こうは我々に見付からない(よう)にしている(はず)だ」

「では待つしかないのですね」

 貞光の言葉に頼光が頷いた。


 綱がネットカフェでニュースを検索しようとブラウザを立ち上げた途端、検索サイトのニュースが目に飛び込んできた。

 人間の手足が道端に落ちていたと言うものだ。

 詳しく見ようとした時スマホが振動した。

 金時からだ。

 同じニュースを見付けて知らせてきたのだ。

 ()()えず綱が記事を詳しく読むので金時は他に似た事件が無いか調べる(よう)に伝えた。

 記事を読み終えた後、他のニュースを検索したが特に(これ)と言ったものは出てこなかった。

 綱は場所を控えると季武と貞光に連絡して金時と()の場所へ向かった。


 夜、四天王は居間で頼光に報告をしていた。

「一応周辺を見て回りましたが鬼の気配は有りませんでした」

 頼光と四天王はマンションのリビングに集まっていた。

「穴も()いていませんでした」

「遺体の一部を見てきましたが、(あれ)は確かに()ぐれ者の喰い残しです」

(ただ)、喰ったのが鬼かどうかは……」

 今は鬼以外の()ぐれ者も都内に()る。

 喰い残しを見ても種族までは分からなかった。

「綱達から連絡を受けた後は俺がスマホでネットを検索してたんですが他には見当たりませんでした」

 貞光が言った。


「…………」

「季武、何か思い付いたのか?」

 頼光が考え込んでいる様子の季武に声を掛けた。

「いえ……」

 季武は首を振った。

 (それ)でも頼光に視線で(うなが)されて口を開いた。

「酒呑童子達は俺達が捜してる事は気付いてる(はず)です。(それ)に茨木童子はつい()の間まで人間だったんですから死体の一部が見付かったらニュースに()る事も知っているでしょう。喰い残しを人目に付く所に放置するでしょうか」

「仮に別の()ぐれ者だとしても人間を喰ってる(ヤツ)()の辺りに()るなら討伐は必要だ」

 頼光が言った。

「綱と金時は喰い残しが発見された辺りを見回れ。貞光は学校の前で待機だ」

「は!」


 深夜の住宅街をほろ酔い加減で歩いていた男性の前に誰かが立ち(ふさ)がった。

 男性が口を開く前に()の人物が顔の前に手を(かざ)した。

 ()の途端、男性の目がどんよりと曇った。

「もう()ぐ記者が来るから取材でこう言いな」

 ()の人物は記者に話す内容を男性に告げると姿を消した。


 翌日、季武と六花が学校に入ったのを見届けると、貞光はスマホでネット検索し始めた。

 綱と金時は昨日、()ぐれ者の食い残しが見付かった場所を見回っていた。

 貞光がニュースサイトを検索していると昨日とは別の場所で人の遺体の一部が見付かったと言うニュースが出てきた。

 ()のニュースの関連記事を検索していると目撃者が()ると分かった。

 大手の新聞社やTV局で目撃者の話が出ていなかったのは「鬼が人を喰っていた」と言うものだったからだ。

 大手は酔っ払いだと思って相手にしなかった(よう)だがブログに毛が生えた程度のニュースサイトは嬉々として取り上げていた。

 (ただ)、色々見て回ったが結局何処(どこ)かのサイトが載せたものを転載しているだけで(みな)同じ事しか書いてなかった。


 ()のとき午後の休み時間を告げるチャイムの音が聞こえてきた。

 貞光は他の三人にLINEでニュースの事を伝えた。


 綱が()ぐに向かうと返信してくると季武が待ったを掛けた。

 酒呑童子の可能性が有るなら四人で行った方が()いから放課後、季武が六花を家まで送ってから合流するべきだと主張した。

 金時が(それ)なら此処(ここ)に出た(ヤツ)が別口だった時の可能性を考慮して放課後までは()の辺を探索すると返事をしてきた。


 六花をマンションに送り届けると季武は貞光達と合流してニュースの場所に向かった。

此処(ここ)だよな」

 綱が言った。

 四天王が辺りを見回しているとき不意に悲鳴が聞こえた。

 四人は同時に駆け出した。

 最初に角を回った貞光が声を上げた。

「見ろ!」

 貞光の視線の先には腕が落ちていた。

此方(こっち)に血の跡が付いてるぞ!」

 金時はそう言うと血の跡を追って走り出した。三人が続く。

 四人はマンションの前で立ち止まった。

「酒呑童子達の気配だ」

 綱がそう言った時、ガラスの砕ける音と共に破片が降り注ぎ酒呑童子と茨木童子、熊童子が飛び出してきた。

 四天王が四方に跳んだ。


 季武は近くのマンションの三階のベランダの柵の上に立つと上から酒呑童子を狙い撃ちし始めた。

 酒呑童子が矢を()けていく。

 茨木童子が綱に斬り掛かった。

 金時が酒呑童子に、貞光が熊童子に向かっていった。

 三人が戦っているのは路上なので季武は人間が近付いてこないか気を配りながら酒呑童子達に矢を放っていった。


 突然季武に向かって何かが飛んできた。

 季武は咄嗟(とっさ)に近くの街灯に飛び移りながら飛んできたものに目を()った。

 白い塊が季武が立っていた柵の後ろのサッシに貼り付いていた。


 土蜘蛛の糸か!


 季武は街灯を蹴ると向かいのマンションの屋上に飛び上がった。

 上から気配を探ってみたが土蜘蛛の気配は感じられなかった。

 ()の時、綱に何かが飛んでいくのが見えた。


「綱! 右だ!」

 季武の声に綱は茨木童子の刀を弾きながら後ろに跳んだ。

 綱と茨木童子の間を土蜘蛛の糸が通り過ぎていく。

 季武は糸の飛んできた方に視線を向けたがやはり土蜘蛛の気配は見付からなかった。

 不意に目の隅に何かが映った。


 後ろに跳んで()けながら其方(そちら)に目を向けると屋上の柵の向こうへ消えていく土蜘蛛の姿が視界に入った。

 一瞬だった。

 季武は駆け寄って柵に飛び乗り、下を見たが何も()なかった。


 見えたのに気配を感じなかった。

 かなりの手練(てだ)れだ。


 ビルの反対側からは相変わらず剣戟(けんげき)の音が聞こえてくる。

「うわ!」

 ()の声に急いで戻ると綱が土蜘蛛の糸でマンションの壁に貼り付けられていた。

 茨木童子が好機(こうき)と見て刀を振り(かぶ)って綱に向かっていく。

 季武は立て続けに矢を放った。


 茨木童子が矢を()けながら後ろへと跳んだ。

 季武はマンションから飛び降りると茨木童子に矢を放ちながら綱に駆け寄った。


 腰に下げていた刀を抜くと土蜘蛛の糸に斬り付けて綱を自由にした。

 ()の背後から茨木童子が斬り掛かってくる。

 綱が季武を飛び越えて茨木童子に髭切を振り下ろした。

 茨木童子が()の太刀を受ける。

 二人の刀から火花が飛んだ。


 季武は再び弓を手にするとマンションのベランダの柵の上に立った。

 矢を(つが)えようとした時、近くから人間の悲鳴が聞こえてきた。

「俺が行く!」

 季武はそう言うと悲鳴のする方へ向かった。


 季武が駆け付けると、腹部を喰われた死体が転がっていた。

 ()の時、再び叫び声が聞こえてきた。

 綱達が()るのとは反対の方向だ。


 引き離す気か!


 (しか)し人間が襲われているのが分かっていて放置しておく訳にはいかない。

 季武は声が聞こえた方に向かって駆け出した。


 土蜘蛛は季武を(おび)き寄せる(ため)だけに次々と人を殺していった。

 十人近く殺され、他の三人からかなり離れた場所で悲鳴は止まった。

 十分引き離したと見て()めたのだろう。

 (いく)ら気配を探っても()ぐれ者の気配は無かった。

 季武は急いで綱達の()る方に戻った。


「ーーーーー……!」

 貞光が熊童子を真っ二つにした。

 熊童子が消える。


 貞光は身構えて熊童子の核が間違いなく異界に戻ったのを確認すると酒呑童子の方に向き直った。

 ()の時、土煙で辺りが覆われた。

(また)か!」

 綱達が煙の外に飛び退()いた。


 季武は土煙を見ると街灯の上に飛び乗った。

 上から辺りを見回したが酒呑童子達は消えていた。


「全員無事か!」

 季武が声を掛けた。

「おう!」

 三人が其々(それぞれ)返事をした。

「季武、其方(そっち)如何(どう)だった?」

「逃げられた」

 季武を引き離す為に悲鳴を上げさせて殺しては()ぐに移動すると言う事を繰り返したらしいと話した。

「一瞬だけ姿は見たが最後まで気配は分からなかった。念の為、()の辺をもう少し探索した後でマンションへ戻って頼光様に連絡しよう」

 季武がそう言うと、四人は四方へ散った。


 頼光は黙って四人の話を聞いていた。

「茨木童子と熊童子以外の手下が()なかったという事は待ち伏せでは無いな」

「酒呑童子達が飛び出してきた部屋の住人は喰われていました。どうやらマンションを移動しながら住んでいる人間を喰っていた(よう)です」

 部屋の住人を残らず喰ってしまっていれば行方不明に気付かれにくい。

「やはり鬼と土蜘蛛は手を組んでるのでは」

「土蜘蛛は我々と鬼をぶつけたいのだろう。鬼のアジトの近くで人間の死体を残したのはお前達を酒呑童子達の()る所へ(おび)き出す(ため)だ」

「ですが土蜘蛛は俺達を攻撃してきました」

 綱が言った。

「姿は見たが気配は全く無かったんだな」

 頼光が季武の方を見た。


「はい、姿を見たのも一瞬でした」

「おれ達を酒呑童子と戦わせて如何(どう)する気なんだ?」

「土蜘蛛連中が、オレ達と鬼共(おにども)何方(どっち)が勝つかで(かけ)でもしてんじゃねぇの」

「だったら酒呑童子に加勢するのイカサマじゃん」

「人間喰う(よう)な連中がフェアプレーなんかしねぇだろ」

(それ)じゃ賭けになんないじゃん」

「そんな事は如何(どう)でも()い!」

 頼光の一喝に綱達が口を(つぐ)んだ。

(それ)より如何(どう)やって酒呑童子や土蜘蛛を倒すか考えろ!」

 頼光が四人を叱責(しっせき)した。


「酒呑童子は潜伏しているのでは?」

「どうせ(また)土蜘蛛が(さそ)い出してくるだろう」

「熊童子しか()なかったと言う事は短時間で大量に生み出す事は出来ない訳ですね」

 季武が言った。

「そうだな。今回は四天王を創ったが大江山では茨木童子だけで、他は四天王を含め(みな)異界(むこう)から呼び込んだ鬼だったからな」

「となると()ぐには手下は揃えられませんね」

「手下なんて壁に穴空けるだけじゃん」

 綱が言った。

「ある程度呼び込むには時間が掛かるし、大勢待機させるには(それ)なりに広い場所が必要だろ。都内に人気(ひとけ)の無い場所で(それ)だけの広さが有る所は多くない」

 季武が答えた。

(しか)幾度(いくど)倒した所で土蜘蛛に核を奪われたら切りが有りませんが」

(それ)に付いては上と相談してくる」

 頼光が言った。

 話し合いの結果、今まで通り季武が学校へ行き、一人が学校近くで見張り、残り二人がネットカフェで情報収集する事になった。


 数日後の夜、夕食を食べたあと頼光達はリビングで話し合っていた。

「やはり茨木童子に今の時代の知識が有るのは痛いですね」

 貞光達の報告を頼光は腕組みをして聞いていた。

 昼間授業を受けている季武以外の三人はネットでニュースやSNSなどを検索していたが酒呑童子や土蜘蛛の手懸(てが)かりは一向に(つか)めなかった。

「……五馬という子だが、お前達が学校の近くで見張っていたのに(さら)われた事に気付かなかったんだな」

「はい」

 季武も頼光に指摘されるまで気付かなかったが、頼光四天王を知っていて(しか)()の四人と名前が同じなのも知っているのに、民話好きの人間が()の事に全く触れないのは不自然だ。

 頼光が言っていた(よう)に綱が聞くなとでも言ったなら()(かく)そうでないなら普通は色々聞くのではないだろうか。

 訊ねたら綱の気に障らないか心配なら六花を通して話しても大丈夫か確認すれば()いだけだ。


「頼光様、少々失礼致します」

 季武はスマホを出すと六花に掛けた。

 スマホをスピーカーにして全員に聞こえる(よう)にする。

「季武君? どうしたの?」

「お前、八田に嘘を()きたくないから俺達の居場所を教えないでくれって言っただろ。八田に俺達が何処(どこ)()るか聞かれたのか?」

「うん。季武君と綱さんが一緒にいるなら差し入れ持っていこうって言われたの。だから、どこにいるか知らないって答えたけど、また誘われたとき場所を知ってたら嘘()かないといけないかもしれないと思って教えないでって頼んだの」

「他に俺達の事で何か言ってなかったか? 例えば頼光四天王と同じ名前の俺達が鬼と戦ってる事に付いて」

 六花が黙り込んだ。


「何か言ったのか?」

「そうじゃなくて……。一度もその話をした事ないなって。民話研究会で頼光四天王が議題だから季武君の話が何度も出たの。うちの学校に四天王と同じ名前の子がいるって。でも五馬ちゃんは一度も話に入ってこなかったの」

「スマホを無くした時、()の子は何処(どこ)()た?」

 頼光が訊ねた。

「一緒にいました」

「六花と一緒に民話研究会に出てたんだな」

「うん、それで、スマホ無くしたのに気付いた後、一緒に探してくれたの」

「有難う。(また)明日(あした)な」

 季武は通話を切った。


「スマホの時はずっと一緒に()たのでしたら関係ないのでは」

「スマホを()って(ひそ)かに鬼に渡すくらいは出来ただろう」

 頼光が言った。

「見鬼なのにですか?」

「見鬼と鬼が(こえ)ぇのは別だろ。六花ちゃんが偶々(たまたま)見鬼で鬼が怖ぇだけだ。五馬ちゃんは酒呑童子や茨木童子見たのに平然としてただろ」

「そう言や六花(イナ)ちゃんは小さいのでも怖いんだっけ」

「他に何か()の五馬って子の事で不審な点は無いか?」

 頼光の問いに視線が綱に集まった。


()の……身体にエリに付けたと思われる(あと)が有るんですが……ずっと何か違和感が有って……イナちゃんの性格は(ほとん)ど変わってませんが五馬ちゃんとエリは……」

「確かに五馬ちゃんとエリちゃんはかなり性格が違うな」

「エリが見鬼だった事は一度も無い」

 季武の言葉に綱達がハッとした顔をした。

「そうだ。イナちゃん以外は誰も見鬼だった事は無い……」

「季武がイナちゃん以外の人間のこと覚えてたなんて意外だな」

「覚えてたのは見鬼はイナちゃんだけと言う事だろう」

 頼光の言葉に三人が納得した(よう)に頷いた。

「じゃあ五馬ちゃんは鬼に(さら)われた訳じゃないのか?」

 四天王が互いに顔を見合わせた。


(さら)われてないなら気付かなくても不思議はないな。鬼が()なかったのなら気配がしないのも当然だし」

「けど五馬ちゃんは如何(どう)やって学校から出たんだ?」

「壁を乗り越えて隣の建物の敷地にでも入ったんだろ」

「五馬ちゃんの気配は感じなかったぞ」

「新宿御苑や代々木公園からの帰りに襲われたとき戦いが終わる前に八田に気付いたか?」

 貞光と金時が「あっ!」と声を上げた。

「自分から()なくなったなら生きてる可能性は高いな」

(しか)何故(なぜ)姿を消す必要が有ったのでしょうか?」

「綱と一緒の時も、()の子が()ると言う手紙に書いてあった場所にも茨木童子達が()た」

 綱が最初に茨木童子に襲われたのも五馬との逢引(デート)中だった。


「鬼に捕まって喰われなかったなんて()ず有り得ないし、仮に喰われずに逃げられたと言う言い訳が通ったとしても、(また)茨木童子達が出た所に居合わせれば流石(さすが)に疑われるからな。かと言って六花ちゃんはミケが()て手を出せない。……如何(どう)した?」

 考え込んでいる様子の季武を見て頼光が訊ねた。

 季武が顔を上げた。

「……多分、土蜘蛛と鬼は手を組んでる訳では無いでしょう。六花を拉致(らち)しようとしたのは(ぬえ)でした。茨木童子と手を組んでたなら鬼が(さら)いに来た(はず)です」

 他の四人は(それ)を聞いて各々(おのおの)考えを(めぐ)らせ始めた。

()()えず(しばら)く様子を見よう。季武、一寸(ちょっと)来い」

 頼光は季武を連れて部屋を出た。


 頼光の部屋に入り季武がドアを閉める。

「五馬と言う子の事で気に()る事でも有るのか? (それ)とも他の事か? 彼奴(あいつ)らに聞かれたくなくて言わなかった事が有るだろう」

 頼光の言葉に、季武は(わず)かに躊躇(ためら)ったあと口を開いた。

「八田に初めて会った時から何か違和感が有って……」

 季武は初めて六花から名前を聞いたとき何かが引っ掛かった事や、五馬を中央公園に連れて行った時の事を話した。

「綱は痕を自分の目で確かめてます。自分の付けた痕を間違える事は有り得ません」

 間違える(よう)では目印には()らないから意味が無い。

()の子は見鬼だと言ったが、彼奴(あいつ)らに知られたくなかったのは(それ)と関係あるのか?」

「見鬼だと思ったのは六花に鬼を見たと言ったからです。ですが……見鬼でなくても異界の者なら……」

 討伐員は人間を喰いに此方(こちら)へ来ている()ぐれ者を討伐する為に派遣されたのだから近くに()れば大抵は気付く。

 だが高レベルの者だと四天王でも気付けないほど巧妙に気配を隠せる。

 実際、都に()た時、綱は宇治の橋姫に(だま)されいてる。


 茨木童子は人として生まれてきたと言っても持っているのは核であって魂では無い。

 ()して異界の者の核が魂に()らないのと同様に、人間の魂が異界の者の核に()る事は無い。


 エリがどう転生しようと異界の者には()らない。


 (つま)り五馬が()ぐれ者でエリの痕が付いていたのなら、(それ)はエリの皮を()いで自分の身体に貼り付けたと言う事だ。

 そんな事をする者が皮だけ剥いで生かしておく(はず)が無い。

 (おそ)らく喰う(ため)に捕まえた人間から綱の気配がするのに気付いたのだろうし、だとしたらエリは()っくに死んでいる。

「綱も俺と同じく何かおかしいと思ったらしく八田に自分の事を打ち明けませんでした。(それ)で六花が、綱が打ち明けないと自分も話す事が出来ないと言っていて……」

 季武の言葉に頼光は溜息を()いた。


 二十年前の季武を見ているから綱がどうなるかは容易に想像が付く。

 女に手を出しまくっていると言っても痕を付けた三人だけは特別なのだ。


(それ)(それ)として、お前は六花ちゃんにきちんと話せ!」

「何をでしょう」

「我々が怪我(ケガ)をしたらどうなるのかとか、致命傷を負ったらどうなるのかと言う事だ」

「我々は怪我(ケガ)をしませんが……」

 季武が不思議そうに頼光を見た。

 元々人間の姿に似せているだけで身体を構成している物質は人間の肉体とは違う。

 損傷しても()ぐに戻る。

 (それ)は同じ異界の者である頼光も同じなのだから当然知っている(はず)だ。

(それ)をしっかり説明しておけと言っているんだ! 六花ちゃんの前で意識を失う前に! 六花ちゃんが慌てて私に電話してきたんだぞ! 心配を掛けるくらいなら行くな!」

「も、申し訳ありません」

 季武は慌てて頭を下げた。

 頼光にしっかり説明しておくようにと厳命された季武は部屋を出た。


「頼光様、何だって?」

 戻ってきた季武に綱が訊ねた。

「……六花にちゃんと話せって」

「五馬ちゃんの事か?」

「いや、俺達の身体の事だ。怪我(ケガ)はしないとか」

()だ話してねぇのかよ!」

何時(いつ)も一緒に()たのに(なん)で言って無いんだよ!」

「でも如何(どう)してそんなこと頼光様(あのひと)が知ってたんだ?」

「廃工場からの帰りに六花に会いに行って、其処(そこ)で意識を失ったから六花が慌てて頼光様に電話したんだ」

 季武の言葉に他の三人が呆れた視線を向けた。

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