マンホール
「こんな所にマンホールあったっけ?」
俺は、一緒に歩いていた彼女に聞く。
「マンホール?いつもそんなの気にして歩いてるの?」
「いや。よく通る道だから違和感があって…」
道路工事なんかしてなかったし、工事の跡もない。
「前からあったんじゃない?」
「そうかな。」
「早くしないと映画始まっちゃうよ。」
彼女に引っ張られる形で、駅前通りに出た。日曜だというのに人がまばらだ。
そこで彼女も異変に気付いた。
「ねぇ、マンホール多くない?」
普段は人が多いから足元なんて見ないが、今日は道がよく見える。
歩道には大小様々なマンホールがずらりと並んでいた。
「あっ」
振り向くと彼女が居ない。
立っていたはずの場所にはマンホール。
今までそこにマンホールがあったか?
俺は不安になった。
…いや、そんなはずはない。
彼女の名前を呼びながら、もと来た道を戻る。
「おーい、どこだー。」
さっきの道。来たときよりも、明らかにマンホールが増えている。
俺はその道を戻ることができなかった。恐怖で走り出す。
突然、視線が下がる。
道に吸い込まれるような感覚。
マンホールが一つ増えた。