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高瀬川物語(仮)  作者: 日尾昌之
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別れと出会い

私は、フリーライターをしています。

なので、口に出したり、目にしたりした一言一言の言葉の意味とか由来とかが気になるんです。めんどくさい女ですよね。

主な仕事は、フリーペーパーのお店の紹介や、企業のWebメディアのブログやSNSの更新の代行をしています。でも、収入は安定しない、その日暮らしの浮き草稼業です。

高校の時、映画研究会や演劇部に頼まれて脚本を書いた事もあったので、本当は、映画や演劇の脚本家になりたかったんです。

その夢を追いかけて上京したはずだったんですが、何度か訪れた人生の分かれ道の選択を誤って、迷宮のラビリンスに入り込んでしまいました。

念のために言っておきますが、人見知りな性格なので、映画研究会や演劇部には所属はしていませんでした。なので、高校の時から浮き草だったんです。

そんな、自由な生き方をして来たせいもあって、時間を束縛される結婚生活は、私には、向いていなかっようです。

おかげで子供が出来ないは、夫は、マッチングアプリで知り合った人妻と不倫するは、挙句の果てに私まで不倫しちゃいました。私の不倫相手は、クライアントの会社の三つ年上の妻帯者でした。ランチに誘われたのが、きっかけで、ディナーからブレックファーストへ。良くある話です。月に、二、三回、お互いの時間が合う時にだけ会うと言った、時間を束縛しない関係が、心地が良くってズルズルと付き合ってしまいました。

その結果は、離婚。当たり前と言えば当てり前ですよね。

でも、この時は、例の得意技で、お互い様と言う、簡素な理由をつけて納得したつもりでした。


「いらっしゃいませ!」

テーブルを、拭いていた一人の若いてウエイトレスさんが、私を見てニッコリと微笑んでくれました。

その時の荒んだ私の心には、彼女のその元気な声とにこやかな笑顔が何よりの癒しに感じました。このウエイトレスさんが、この物語の重要人物になるとは、この時は、思ってもいませんでした。

「お一人様ですか?」

「待合わせで、後でもう一人きます。」

「そうですか。では、こちらの席へどうぞ。」

通されたのは、一番奥の窓際の席でした。

「ご注文はどうされますか?」

「温かいコーヒーお願いします。」

「ホットですね!」

窓からは、ピンク色の桜の花びらがゆっくりと流れる高瀬川が、すぐそこに見えてました。

私は、暫くの間、そのピンク色をした水面を、ただただボーと眺めていました。そして、気がついたら、また、あの曲をハミングしていました。

「ホット、お待たせしました!」

「あ、ありがとうございます。」

間もなく、香ばしいコーヒーの香りが白い湯気に乗って、私の顔へと漂い始めてました。

「ごゆっくり、どうぞ。」

それは、気分の良い、おもてなしの言葉と笑顔でした。

「ありがとうございます。」

私は、体温より少し高目のコーヒーカップに口をつけて、また、窓の外に広がったピンク色の世界を、ぼーと眺めながら、無意識に、また、あの曲をハミングしてました。

そして、両手の手のひらに挟んだコーヒーカップが、体温より低くなった時、あの野太い声が、その静寂を切り裂きました。







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