ある世界で生まれた双子の話。
生まれた時僕は君と同じ白だった
汚れというものを知らない
汚れることを知らない子供だった
僕と君はずっと一緒にいるものだと思っていた
ある日僕は何処かへと連れて行かれた
連れて行かれた先で初めて汚れる事を知った
他人に傷つけられる痛みを初めて知った
体の中で闇が生まれた感覚を初めて知った
二度と君に会うことが叶わぬ事を知った
これが絶望というものだという事初めて知った
その日を境に自らすすんで自分を汚して
汚すとはどういうことかを初めて知った
行くあてもなく彷徨うこの世界は灰色だ
行き交う人は皆生きてない
汚れながら生きることを決めた己の両手は
余すところなく真っ黒で
もう元には戻れない
無機質な灰色の四角い建物と建物の隙間に
真っ白で綺麗な人影が見えた気がした
白い影は暫く動かなかった
こちらも動くことはなかった
暫くして白い影は揺れ動いたかと思えば
何事もなかったかのようにその場から消えた
建物の隙間はいつもと変わらない
灰色の世界が続いていた
もう二度とあの白い影を見ることはないだろう
もしあの影が再び何処かに現れていたとしても
汚れながら生きると決めた己には
もう二度と見ることはないだろう
たとえそれが失った片割れであろうとも
願わくば二度とあうことなどなきように