61/161
第二部プロローグ-ナイチンゲールの旅立ち
ヒョロヒョロと美しく啼く声が、私を明け方の浅い眠りから呼び覚ました。
「サヨちゃん……?」
枕元に置いた鳥かごを見たが、そこにいつもの怠惰な小鳥の姿はない。再び歌う声がして、私は誘われるように開け放たれたままの小窓を見上げた。
その窓枠には、小さな影がとまっている。影は紫に輝く空を背負うように身をかがめると……その羽をふわりと広げた。
「……行くの?」
私の問いに、小鳥は「さぁ?」とでも言うように、小さく首をかしげてみせる。
「ええ、どっちよ!」
思わずツッコミを入れて、私は笑った。
次の瞬間──。
薄茶色の小さな鳥は、朝焼けの空へと消えて行った。




