恋愛マスター?①
いや恋愛マスターって何だよ。
もう本当、高校生にもなってそういうのどうかと思うよね。
そんないかにも遊び盛りの小学生低学年が付けそうな称号で有名な生徒が一人、この拓嶺高校には存在するのだ。
……というか俺なんだけど。
◆ ◆ ◆
ここに正直に告白しよう。
俺は全くもって恋愛経験などない。皆無である。
幼稚園時代の記憶はなく、小学生時代は洟を垂らして夏冬問わずあらゆる球技を楽しんでいたし、中学校に至っては私立の男子校だった。
野郎に囲まれた汗くさい学校生活に嫌気がさし、俺は高校受験シーズンを機に、中高一貫校を途中抜け出すような形で共学校である拓嶺高校へ転入を果たした。
そう、俺も女の子との青く甘酸っぱい学校生活に憧れたのだ。そこにはもちろんのこと恋愛も含めて。
俺も普通の男で、普通の青春っぽい恋愛がしたかった、それは認めよう。
そんなトロピカル色の俺の希望は入学して一ヶ月もしないうちに砂消しでバリバリと前提ごと破り捨てられていった。
一貫校から転入を果たすような異端は俺以外に居るはずもなく、もちろん知っている奴も誰一人いないので、まずそもそも殆ど会話が発生しない。
自分から行動……と言っても、小学校以来まともに同世代の女の子と話した事がなく、話し方も知らない俺が、クラスメイトとはいえ見知らぬ女子とコンタクトを取れるはずがない。
ええ、チキンとでもなんとでも呼んでくれ。
と、そんな訳で高校入学前の淡い期待は叶う事なくただただ日々が過ぎ、辛うじて話す男友達が数えるだけできたくらいで、一年、また一年と時が過ぎ、気づけばあっという間に最上級生の三年生になっていた。
もちろんその間特定の女子との色恋沙汰などが発生するわけもなく、ガンメタリックな高校生活真っ只中、という訳だ。当たり前だが特定の男子との色恋沙汰もないぞ。
そしていつからか俺は周りに発生するピンキッシュなやりとりを憎悪するようになっていた。
妬み? 嫉み? 僻み? ……なんとでも呼ぶがいいね。
どうして、転入試験を受けてまでも俺が強く望んだ青春の一ページを、呆け面の男や恋に恋しているようなメルヘン女子どもがいとも容易くこなしているんだよ。
何が「一緒に帰ろう」だ。何が「次の部活休みにデート」だ。ちくしょう。
と、ここまでならただの僻みきったモテない歪みボーイの恨み言で終わるはずだった。
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