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8.皇太子殿下の当惑(side レオン)


「ーーレオン、セシリアにバレていました」

 息急き切って現れた幼馴染に、私は片眉を上げて問い返した。


「何が?」


「いいですか、落ち着いて聞いてください。セシリアには、あなたがあの女を葬儀に連れ立って現れたように見えています」


「まさかーー偶然会うには会ったが……」


「それは問題じゃありません。セシリアにはそう見えたわけです。入退場から見張っているわけじゃない。一緒にいる瞬間が見えただけでも十分です。それどころかーーよりによって一番間の悪い会話が聞かれていました」


「まさかーー」


「そう、セシリアの頼みは公務で忙しいと断っておいたにも関わらず、『レオン様、昨日会った時はーー』とあの女がしなだれかかるところを」


「しなだれかからせた覚えはない」


「だからセシリアにはそう見えているんですって。どうせ聞かれないと思ってでしょうけれど、婚約者の母親の葬儀で、そう誤解させる至近距離まで別の女を近づけさせただけでも、あなたの過失です。ましてや話の内容」


 

 私は片手を頭に当てて考え込んだ。

「……それは……そこを見られていたとすると……私は大分酷い男じゃないか……!?」


「大分ではなく、唾棄すべき最低男です」

 エリアスは神妙に訂正した。「気の強い女が相手だったら、刺されても文句は言えないと思います。たとえ誤解であっても」


「だから婚約解消を言い出したのか……?」



「いい知らせと悪い知らせがありますがーーどちらから聞きたいですか?」


「……二度と立ち直れなくなくなったら困るから、悪い方から聞きたい」

 エリアスの表情を見て、聞きたいけれど聞きたくない……と私は一人ごちた。


「まずーーあなたの溺愛っぷりは、セシリアに全く伝わっていませんでした」


「……嘘だ……」

 私は両方の手で頭を抱えた。

 今までの素振りで伝わっていなかったのだとすると、今度もうどうすればいいのか分からない。


「うちの従妹殿が鈍感すぎるのか、あなたがヘタレすぎるのか……ただ幼い感情かもしれないが、セシリアはあなたのことが嫌いじゃない。むしろ好きなんだと思います」


 私は目で続きを促した。


「そう、いい情報は脈はあると言うことです。でなきゃ悩まないというか、まあ、そういうことでしょう」


「でかした、エリアス!」

「で、どうしますか……?」

「釈明する」

「そうすると、あなたと私が何でもかんでも話す仲だと、繋がっていることがセシリアにバレて、二度と内緒話をしてもらえなくなるんですけど」


「……しかし正攻法で互角を解くには、まだ時間が……」

「セシリアには、あなたは今忙しいから、しばらく婚約破棄の話題は我慢して優しく接するよう伝えました」

「エリアス、君は有能だ」


「知ってます。で、どうします? 猶予は稼ぎましたが、時間の問題だと思います。おとなしく婚約破棄を言い渡されますか?」


「情報収集を急がせろ。セシリアのことはーー母上にお願いする」


「そこで親を持ち出してくるとか、自分じゃどうにもできないところがヘタレたるゆえんですよね……」


「猫を被っていたのがダメなら、どうせ破れかぶれなら、どれだけ私がセシリアのことが好きだったか、母上に語ってもらおう。どうせ今のセシリアは、私の口から言ったところで信じない」


「果たして皇后陛下が、あなたの思惑通り乗ってくださるか……変態ぶりが露見して余計に嫌われないといいですけどねー」

 エリアスは嫌味なくらいにこやかな笑みを浮かべて言った。

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