第4話 だけど少年は冒険者にはなれない
読んでても書いてても毎回思いますが、
冒険をしない冒険者って果たして冒険者なのか。
かといってハロ〇ワークとは言えないし、分かりやすいから使ってしまうんですけどね。
勢い込んで門を抜けた僕の視界に入ってきたのは、広い通りに整然と並ぶ家並み。
そして人人人。ここから見えるだけでも村の人口を上回るんじゃないかと錯覚してしまうほどだ。
いや、もしかしたら本当に上回っているのかもしれない。
っと、ここでぼーっと街を眺めていても始まらないな。
僕はそれとなく周囲を確認しながら教えてもらった通りに最初の十字路を右に曲がった。
「あ。あれだね」
扉の上に剣が交差した看板があって、眺めている間にも思い思いに武装した人たちが出入りしている。
「よし、いくか」
カランコロンッ♪
扉を開くと小気味良いベルが鳴る。
中の様子は、酒場に似ている気がする。
今もテーブルを囲んで食事をしている人がちらほら居るし、違うのはカウンターが2つあって、片方には酒や料理の類が無い。もう一つのほうは普通に酒場のカウンターだ。
多分前者がギルドのカウンターなんだろう。
カウンターに行くと厳ついおっちゃんがじろっと僕を見ながら対応してくれた。
「なんだ坊主。見ない顔だな。冒険者ギルドに何の用だ」
よかった。やっぱりここがギルドで合っているらしい。
「こんにちは。ギルドに登録したいんですけど、どうすればいいですか?」
「お前、街の外から来たのか。名前は?」
「カイです」
「年は?」
「今年で10になります」
「はぁ。で、一体どんなすごいアビリティを持ってるんだ?」
「アビリティ?そんなの無いけど」
「は?」
矢継ぎ早にされていた質問が止まった。
あれ、何か間違った回答しちゃったかな?
それに最後のアビリティって何だろう。バーラさんからそんなものを持たされた記憶はないし、自分でも手に入れた記憶はない。
でもおっちゃんの反応を見るに、それがないといけないのかもしれない。
「あの、そのアビリティっていうのを持ってないと冒険者になれないのですか?」
そう聞くとおっちゃんは頭をガシガシと掻きながら口を開いた。
「いや、そういう訳じゃない。
悪いな。てっきり戦闘系のアビリティが手に入って有頂天になったクソガキが乗り込んできたのかと勘違いしたんだ。
そんなやつを冒険者にしたら1日であの世行きだからな。
でだ。アビリティがないと冒険者になれないかといわれたらそうでもない。
だけどな。冒険者として登録できるのは12歳からだ。
だからお前を冒険者にすることはできない」
「そう、ですか」
バーラさんからは「街で暮らすには金がいる。特にコネもないお前さんが金を稼ぐなら冒険者になるのが手っ取り早いだろう」って教えてもらってたけど早くも道が途絶えてしまった。
ならいっそのこと街の外で暮らせばいいだろうか。
幸いこの辺りは自然が豊かだし、食べられる動物も魔物もそれなりに居るだろう。
そんなことを考えていると、おっちゃんがごほんっと咳払いをした。
「お前、冒険者になれなかったらどうするつもりだ?」
「はい、街の外で暮らしていこうかと思ってます」
「ばっ。なんでそうなるんだよ」
「え、だって。街の中で暮らすにはお金が掛かるんですよね?」
「そりゃ、宿代やら食費やら掛かるがな。スラム街に行けば、と言いたいところだがお世辞にも安全とは言えんしな。教会も今いる奴らを養うので精いっぱいだろうしなぁ」
「ではお邪魔しました」
冒険者になれないならこれ以上ここに居ても無駄だろう。
今夜1晩くらいは泊まれるお金はあるはずだから、それで宿に泊まって明日からどうするか作戦を……
「って、おいちょっと待てクソガキ」
「え?」
冒険者ギルドを出ていこうとした僕をさっきのおっちゃんが呼び止めた。
「あの、なにか?」
「何かじゃねえよ。
くそっ。金にならないことはしないとか陰で言われてる冒険者ギルドだがな。
これから死にに行くと分かってるガキを見捨てるほど達観もしてねぇんだよ」
「いや別に死にに行く訳じゃ」
「黙って俺の話を最後まで聞け」
「は、はい」
ガシッと僕の頭を押さえつけるおっちゃんに思わず背筋が伸びる。
おっちゃんは更にしゃがみ込んで目線を僕に合わせた。
「いいか。冒険者になるにはさっき言った通り12歳にならなきゃなれん。
だがな、見習いなら10歳からでもなれるんだよ」
「見習い?」
「ああ。通常冒険者はEランクからだが、その下の見習いでFランクってのがある。
お前みたいに行くあてのないやつを保護する名目や教会のガキ共に仕事を宛がうのもギルドの仕事だ。
街の外の依頼は受けられないが、代わりに街中の細々とした依頼を紹介してやる。
雑用ランクとか孤児救済用とか言われることもあるが、しっかり働けばEランク冒険者より稼げる。
ただし、庭の草むしりだったり、倉庫整理なんかの重労働だったり、下水処理だったりとあまり人がやりたがらない仕事が多いけどな。それでも命の危険だけはほとんどない。
それで良ければ冒険者見習いとして登録してやるが?」
「はい、よろしくお願いします」
そうして僕は晴れて冒険者、見習いになるのだった。




