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共依存

 私は腕が元通りになったお兄ちゃんを抱えて、家を目指した。

 なんだかよく分からないけど体が軽いし、お兄ちゃんを抱えられるほどに力持ちになっていた。


 道中。さっきの狼みたいな化け物が人間を襲っていたが全てを無視して自分の家を目指す。近所のおばさんの助けてって言う声が聞こえてくる。でもそれを無視して家を目指す。


 家は……狼の化け物に襲われた後だった……。ドアの壊れた玄関から家の中に入る。

 家の中はめちゃくちゃに荒らされており、そこかしこに血が飛び散っていた……。


「パパ……ママ……」


 今日は日曜日だった……。パパもママも……お兄ちゃんのパパとママも一緒に家にいたはずだ。だって皆仲良しだったから……。


 私は家から出て、お兄ちゃんの家に入る。こちらもめちゃくちゃにされているが血の跡は無かった……。


「あはは……あははは」


 どうしよう……どうしたらいい? 私はお兄ちゃんの家から外に出る。狼の化け物が人を食べている。


 私はベルトの隙間に差していた木の棒を引き抜き、人を食べている狼の化け物を殴る。殴る。殴る。

 こいつらがいたらお兄ちゃんが食べられちゃうかもしれない……。全部。殺そう。


 私はお兄ちゃんを抱えたまま木の棒を握りしめ街の中を歩く。そして狼の化け物を見つけては殴り殺す。


≪レベルアップしました≫≪レベルアップしました≫≪レベルアップしました≫


 何匹も何匹も何匹もワラワラと湧いて出る狼と一日中戦い続けた。


「はぁ……はぁ」


 気づけば私は狼の化け物の死体に埋もれるように身を預けていた。


「せ、生存者ー! 生存者だ!!」

「はぁ、はぁ……だれ?」


 私は木の棒を構える。


「お、落ち着いて欲しい、私は自衛隊の壱合(ひとごう) 合間(あいま)だ。君に危害を加えるつもりはない安心して欲しい」


 迷彩柄の服の人がどんどん集まってくる……。自衛隊……。


「生存者は……2名! 至急確保を!」


 もう、体が動かない……。お兄ちゃん……。




 目が覚める……。体のだるさはない。


「目が覚めたか」

「お兄ちゃんはどこ!」

「ぐぉっ!!?」


 一気に頭が覚醒する。私は一気に体を起こし、目の前の男に掴みかかる。周りの大人が立ち上がり、拳銃をこちらに向けてくる。


「お兄ちゃんはどこ!!!」

「落ち着け! 貴様らも落ち着け! 銃をしまえ!! 君のお兄さん……霞陽多君は無事だ。ただ、貧血気味だったので此処ではない場所で点滴を行なっている」

「連れて行って……今すぐに! お兄ちゃんのところに!!」

「分かった! 分かったから手を離してくれ、これでは案内もできない」


 私は大人しく目の前の男から手を離す。


「早く」

「はぁ、分かってるさ、行こうか」




 案内された先ではお兄ちゃんが男の言ったとおりに点滴を受けていた。


「草加……ちゃん?」

「お兄ちゃん!」


 ぎゅっとしがみつく様にお兄ちゃんに抱きつく。


「俺……あれからどうなったんだ……? 腕を食われたはずなんだけど……」

「私が……私が……でもよく分からなくて……」

「そっか、ありがとう草加ちゃん」


 お兄ちゃんにやさしく頭をなでられる。


「ところで父さんやおじさん達は?」

「……っ! その、皆……」

「残念ながらあの辺り一帯の人間は君たち以外……誰も生き残っていない」

「は? な、なんだよそれ……なんで、そんな……う、嘘だよな草加ちゃん!」


 肩をつかまれて体を揺らされる。


「草加ちゃん? なぁ、嘘だよな? 嘘だって言ってくれ……」

「……」

「君、やめるんだ! いくら自分がつらいからといってそんな少女に──」

「うるさい! 草加! 嘘だろ!? 嘘なんだろ!? 嘘って言えよ!!!」


 今まで……一度も見てきたことのない表情のお兄ちゃん。悲しそうで……つらそうで。あぁ、この人はやっぱりとっても優しい人でとっても弱い人なんだと。


「ごめんなさい。ごめんなさい。お兄ちゃん」

「草加……うぅ……草加ぁ」


 私はお兄ちゃんに抱きついて、涙を流す。お兄ちゃんはそれに気づいて私の名前を呼んで泣き始めた。

 お兄ちゃん。ごめんね。お兄ちゃんの大切を守れなくて……全部全部なくなっちゃって……ごめんなさい。でも、私がいるから。私はいなくならないから。


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