変わる世界/陽多
就職しようと面接を受けたが全て不合格……。俺は就職が決まらないまま高校を卒業してしまった。
「生きてる価値がない~」
「お兄ちゃん元気出して!」
「うぅ、草加ちゃん……」
そして、小学生高学年の少女に慰められる俺……。霞 陽多。
「大丈夫だよお兄ちゃん! 例えお兄ちゃんが無職でも将来私が養ってあげるから!」
あぁ、草加ちゃんの中で俺は将来無職なんだ……フリーターですらないんだ。ははっ……生きてる価値……ゼロ!!
「ははっ……」
「お、お兄ちゃんなんで落ち込むの!?」
っと、スマホが大音量で警告音を鳴り響かせる。数秒後に揺れ? 地面が揺れて……!
「地震か!」
「きゃっ!」
見通しのいい公園のベンチで談笑していたので特に落下物などはないだろうが、俺は草加ちゃんを庇うようにして一緒に地面に伏せる。
すぐに揺れは収まり、あたりを見渡してみる。遠くに見えるビルのガラスなどが割れているのが分かる。
一体何が……。
「お、お兄ちゃん?」
「大丈夫だったか草加ちゃん」
「は、はい」
こういう場合はどうしたら良いんだ? とりあえずスマホを取り出し、情報を収集する。
「お兄ちゃん……あ、あれ、何?」
「ん? なんだ、犬……か? いや、狼!?」
スマホで何か情報はないかと検索していたが電波の入りがわるいのかなかなか繋がらない……そんなときに草加ちゃんに裾を引かれ、指差すほうをみれば、そこにはぐるると唸る大きな狼がいた。
狼とは……目を合わせちゃ駄目だったんだか? とりあえず狼の足を見ながら、草加ちゃんと背中を見せないように少しずつ移動する。後もう少しで木の棒が……。
「お兄ちゃん!」
「げっ!」
狼のほうは痺れを切らしたのかかなりの速度でこちらに走ってきた。俺は急いで木の棒を拾う。
「重っ!?」
なぜか分からないがありえないほどに木の棒が重い……なんだこれ!?
「お兄ちゃん!」
「だ、大丈夫ぅううう!」
俺はどうにか、木の棒を振り上げて迫ってきた狼を殴る……。
「がうっ!」
「ぎゃぁあああああ!!」
しかし、木の棒は狼にダメージを与えることなく弾かれ、左肩に噛み付かれる。そして、ごりっ! ぶちりという音がして……狼の口には俺の腕が……。
「はぁ? う、嘘だろ?」
声が震える。意味が分からない、脳がその現実に追いつかない。
「い、いやぁぁあああああ!!」
草加ちゃんの悲鳴があたりに響く、そして、遅れて激痛がやってくる。あぁ、死ぬんだなぁ。
「お、お兄ちゃん。お兄ちゃん! あぁ、殺す殺すコロシテヤル」
意識がなくなる直前……そんな声とともに木の棒を拾い上げこちらに向かっていく草加ちゃんを見た。