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プロローグ

これは遠い遠い昔、ご先祖様が王国を建国するときの物語。

もう今では一部の人間しか知らされていない秘密のお話し。






***






昔々、神々に仕える天使と、創造神から追放された邪神に仕える悪魔が

長い長い間、天界と悪魔界の狭間で終わらない戦いを繰り広げていました。


ある日、戦っていた一人の天使が

羽根に大きな傷をつけられて人間界へ落されてしまいました。


人間界へ落された天使は、落とされたその地で優しい人間と出会います。

それは人間の王国の王そのひとでした。

王と出会い、天使は傷ついた羽根を癒していきます。


長い時間をかけて傷は完治し、天使は白く輝かしい羽根を取り戻しましたが

まだ他の天使が戦っているだろう天界へ帰ろうとしましたが、

人間界と天界の狭間を悪魔の結界が張られていて

結界を破れずに人間界へ取り残されてしまいました。


何故、悪魔の結界を破れなかったのか。

それは、天使は悪魔に傷を付けられた時、

邪悪な呪いをかけられてしまっていたからでした。


呪いは、悪魔への絶対服従という名の隷属と、

天使の力を使えば使うほど生き血を欲する欲求が天使を支配し、

生き血なくして生きられないというもの。


悪魔の一族である吸血鬼の呪いだと判明しました。


呪いは強く、誰にも解けない呪いでした。


天へ帰ることも悪魔と戦うこともできない天使は嘆きます。

人間の王は嘆く天使を必死で慰め、とある誓いの言葉を述べました。


人間界には、火、水、土、風、雷の五大属性と、悪魔の属性である闇があります。

人間界は悪魔の支配下にあるからです。

悪魔は日々、人間を弄び、愉しんでいます。

しかし、我々人間は悪魔に対抗するつもりでいます。

天使である貴方の代わりに戦います。

戦い続け、決してあきらめないことを誓います。

だから力を貸してください、と。


天使は天使の代わりに戦うと誓ってくれた王に

意を決して、天使の力・・すなわち光属性の力を分け与えるための条件を提示しました。


天使の力は本来人間には強大で持て余す力。

しかし、悪魔にも対抗できる力です。


天使は言いました。




ーーこの力をを引き継いだ人間は、決して嘘をついてはいけないーー





と。


天使は、嘘をつきません。

嘘をつく者が大嫌いです。


この力を使う者は、一生、決して嘘をついてはいけません。

何故なら嘘をつく者は、光の力の作用で

身体に激痛を走らせて負担をかけて寿命を縮めるからです。

嘘の言葉の持つ意味が重いものであればあるほどその効力は高まります。

だから決して嘘をついてはいけません。

この話が嘘だと思うのなら、嘘をついてみてください。

身体に激痛が走ります。


天使の言葉は真実だと王は悟りました。


嘘をつかずに一生を過ごせる人間など、この世にはいない。

王国の政治に嘘はつきもので、小さなものから大きなものまで

嘘で溢れた世界だと王は理解していたにもかかわらず、

王はそれでも天使に誓いを立て、天使の力を授かりました。


天使は傷を癒していた間や王の覚悟に絆され、

王と寄り添うことを決めました。


王は悪魔に対抗するために

王国をより強固なものとするのに一生を捧げました。




こうして今の王国があるのでした。おしまい。
















***


陛下は、この話を知っているはず。

それなのに・・なぜ。


耳を疑いたくなるような言葉を聞いてしまい、

私は無礼を承知で口を開き、問いかけた。


「陛下、・・どういうことですか?」


と。


ユラナス王国王城、玉座の間。

王と私を幾人かの人々が囲むという構図が出来上がっている。


仕方ない、もう一度だけだぞと陛下が前置きして、口を開く。


「フィア、そなたは我が親族の血を連なる一族の娘であり、

我が国で非常に稀で優秀な魔導士だ。

しかし、その力ゆえに狙われることも多かろう。

そこでだ、ここにいる七人の男の誰でもいい。

婚約を交わし、いずれは婚姻を結んで、王国の守備と戦力の主柱となってくれ」



「!!!」


婚約!?


何度聞いても耳を疑う話だった。

正直、陛下の言う七人とはとてもじゃないが婚約など結びたくはない。

誰一人として妥協できるものではなかった。


だって・・

いくら陛下のお言葉でも、それだけは・・

この人たちだけは・・!!


天使の血を引き、光を持つフィアは建国神話にある通り、

嘘をついてはいけない人間である。

それなのに、陛下は、婚約しろ、という。


この、七人のだれかと!!


悪魔と婚約なんて・・いや!


だって、この場にいる七人は・・・





「フィア、お前に拒否権はない。諦めろ」


彼はいつもこうだ。冷静でまったく思いやりのない

容赦のない言葉を浴びせてばかりの、漆黒の悪魔。



「もう、逃げられないから覚悟して」


敵に回したくはない人だ。

ずっと怪しげな光を宿した瞳で見つめてくる、紫紺の悪魔。




「今は受け入れられないかもしれない。

・・けれど、いつか受け入れられるようになりますよ」


静かにゆったりとした口調でいつも私を落ち着かせてくれるが

浮かべている笑みが、目が、何故だか恐ろしい、蒼玉の悪魔。




「陛下のお気に入り・・これは興味深い。

もっと君を知りたいなぁ、僕は」


メガネをかけなおし、好奇心旺盛な知的な瞳で

分析するように私を眺める、翡翠の悪魔。




「王の言葉は絶対。・・・だから、大丈夫、怖くない」


何が大丈夫で、何か怖くないというのか、獣のような瞳が

私をとらえて離さないミステリアスな、黄金の悪魔。




「オレが守ってやるから、そんな顔すんなって」


守ってやるとくったくのない笑みを浮かべて明るく言うが

心の中では何を考えているかわからない、緋色の悪魔。




「父上の・・いや、陛下のお言葉だ。

まさか断るなどとは言わないよな?」


お前は下だと言わんばかりの

明らかに誰がどう見ても上から目線の、白銀の悪魔。




陛下が挙げた候補の七人は、



七人の悪魔(セブンスデーモン)




と呼ばれていた。





すなわち、七人の悪魔(セブンスデーモン)のだれかと、


悪魔と人に噂されるような、厄介な人間の、

悪魔と疑わしき人間の婚約者になれというのである。



***



これは、フィアが悪魔なる婚約者候補に振り回される物語の始まりにしかすぎなかった。

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