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異世界では経験値が必要です。  作者: きうろ
第一章 -幼少ー
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水も滴るいい幼女

 

 魔法を習得した。

 理屈が分かれば簡単な事だった。


『具体的なイメージ』こそが魔法発動の鍵となるのだ。

 今までの俺はただ単に『魔法よ出てこい!』といった曖昧な考えでしかなかった。もちろん水よ出て来いや、風よ出て来い!みたいな事も考えたりしたが、『どんな』水や風かは全く考えずに発動しようとしたのだ。ロイゼの[魔法版いないいないバァ]、あれの頭を振っていた行動は、「イメージして、イメージして」と伝えたかったのだろう。分かるはずがない。言葉が分かればすぐに発動できたであろうが、この世界の言葉は全くと言っていいほど理解していないのだから。まぁ、この世界の赤子でも無理な事ではあるだろうが。


 ロイゼには感謝しなくてはならない。どんなにビンタされようが、この感謝の気持ちを俺は伝えなくてはならない。もう一度水を被せてあげようか?と一瞬考えたが、また水では芸がないので冷ための風魔法を発動され風邪でもひかせてやろう。と、行動するよりも先にロイゼが動いた。


 ロイゼはスッと右手を俺の顔に近づけてきた。

(やばい!ビンタされる!)と目を瞑りグッと力を入れビンタに備えたのだが、期待を裏切るかのようにロイゼは優しく右手を俺の右頬に触れた。

 濡れた指が頬をなでる。

 何事か?とゆっくり目を開けるとロイゼと目が合った。

 ロイゼは優しく微笑んでいた。俺と目が合うと同時に、その微笑をぶち壊すように、二カッと大きな笑顔を見せ俺の額にキスをした。


 訳がわからない。

 俺の頭は真っ白になったように思考を止めていた。


 数秒、いや数分は経っただろうか。

 気付いたらロイゼは沢山のタオルを抱え、俺の部屋に入ったところだった。いつの間にか一度部屋を出て行ったのだろう。ロイゼは水でびしょびしょになった俺の部屋をせっせと拭いていた。

 ベットの柵の隙間から見ていると、ロイゼと目が合い、先ほどと同じ笑顔を俺に向けた。とても、とても可愛く感じた。

 もう一生水はかけないでおこう、と思えるほどに。


 残念ながら、ロイゼは濡れた服のまま拭いていたので、かなり時間がかかった。

 途中でミーリが部屋に帰ってきて、ロイゼが怒られていた。(俺が悪いのに、申し訳ない。)とその様子を見ていると、ロイゼがチラッと俺の方を見て少し舌を出して笑った。もしかしてミーリに俺が魔法使ったことを言っているのかな?と思ったが違うようで、その様子をみてミーリがまた怒っていた。まぁ、ミーリは暴力はもちろん、そんなにきつく言ってなさそうで、最後に頭を撫でてロイゼを着替えさせた後一緒に部屋を拭いていたので安心した。


 最初、すごい奴がいる家に産まれて来たことに女神を呪ったが、このすばらしい家庭に生まれて良かったと本気で思った。



 その日の晩から、魔法の練習を始めた。

 正直、万能過ぎて驚いた。

 発動できたのは、火・水・風・土・光・雷・浮遊魔法だった。

 イメージすれば何でも出来るのだ。

 だが、無から有は作り出せても、有を無にすることは出来なかった。

 魔法で水を出せても、魔法で水は消せない、と言った風に。

 水を消すには気化させなければいけなかった。


 まずは浮遊魔法を練習した。

 最初は発動出来るか不安だったが、これさえ出来れば赤子の体でも出来ることの幅が広がるからだ。

 部屋の隅にあった本棚に手を向け、『本棚の一番上の真ん中にある本を一冊俺の元へ持ってくるイメージ』をし、魔力を練った。俺がイメージしたとおり、本が俺の手に納まった。

(よっしゃああ!!!)と心の中で、割とマジで喜んだ。

 持ってきた本をベットの端によせる。


 次は水魔法だ。

『掌からスーパーボール一個分のすごく冷たい水が出てくる』イメージ。成功。

『掌から溢れそうになる水(指の隙間からいくらか溢れたが)をボールの形に留め、浮かせる』イメージ。服に落ちた水はそのままだったが、成功。

 そのまま水を開いていた窓に魔法で放り捨てた。

 そんな感じで色々な魔法を試したが、光魔法で冗談半分でやった『目からライト』が成功した時は流石に焦った。


『目からライト』を付けたまま、持ってきた本を手に取った。

 そして鑑定を使い、文字の勉強をした。




 魔法の練習、文字の練習、そしてミーリの朗読の甲斐があり、3ヵ月後、俺はそれらを全てマスターした。

 まだ喋れないけど。






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