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異世界では経験値が必要です。  作者: きうろ
第ニ章 -少年-
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歩いてく。

 


「忘れ物はないよな。」

「……うん。」

「ないよ。」


 短いようで長く過ごし、俺にとって、みんなにとっても忘れられない『初めての町』。ガブドルの町を出る。




 あれからマイムを探したのだが結局見つからなかった。

 冒険者ギルドで聞き込みしていると、チームを脱退していたことが分かった。そのことで、俺達はマイムは何らかの事情があり1人で旅をする決意をしたのでは?という結論に至った。マイムなら大丈夫だろうと話していたが、俺だけは不安が拭えなかった。

 マイムが居ない中で、俺は魔法はどんなに危険なモノなのかを説明した。

 その所為でみんなに危険が及ぶ可能性を考え付く限り語り、謝った。

「もう少し、僕たちを信用してくれ」というルードの言葉が心に突き刺さった。

 それからは、魔法の練習をみんな一切しなくなった。まぁ俺が見ている範囲で、だが。

 その代わりに暇を見つけては魔法の危険性について、命についてを勉強するようにした。


 昨日の出来事なのだが、ライトの武器が出来上る期日になり、武器を取りに行った。

 そこでライトと声の可愛い店長の間にちょっとしたやり取りがあり、造って貰った武器の他に短剣、ダガーのような物を貰った。店長曰く、特別な効果があるらしい。まだ鑑定していないのでわからないが。

 その後に、いつまでもクマさんのキャラクターが載っている服を着させるわけには行かないので、半ば強引にリリアとノウにライトの服を選んでもらった。今では俺やルードよりおしゃれだ。

 冒険者ギルドに寄り、チーム名を変えた後、公園に行きユリーさんの紙芝居を見た。

 ユリーさんの紙芝居は、良い神、悪い神と人の恋愛の話だったのだが、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかよく分からない内容だった。しかし、そこを上手くまとめて、俺を含め観客全員が感動していた。

 この話は実話らしく、ある吟遊詩人によって聞いたと言っていたのだが、神の名前はユリーさんには分からなかった。何故か、邪神アルフレアが関わっているような気がした。

 最後に、みんなで串肉を食べに行った。

 ライトとルードはおっちゃんの神対応と串肉の美味しさに感動して泣いていた。「絶対にまた来よう!」というルードの顔は鬼気迫っていた。



「じゃあ、行くか。」


 いつも俺の右側に居たマイムが今はもういない。少しだけ…いや、少しではないが違和感がまだ取れず、誰も居ない右側を自然と向いてしまう。


「北だったよね。」

「ああ。北に5日歩けば小さな町があって、そこをまた10日間北に行けば大きな国がある。」

「王都だっけ?」

「って言ってたけど…。地図じゃ分かりにくいな。」


 ルードが親から貰った地図には、この町と同じ大きさでしか表記されていなかった。

 申し訳ないが、あまり宛にならないので、王都に着いたら新しい地図を購入しよう、と話し合った。


「さて、正直俺はさっさと次の町に行きたいんだけど…歩く?飛ぶ?」

「食料買っちゃったし、少しは冒険しようよ!」

「うん。僕も歩いて行きたいかな。」

「ノウとライトは?」

「みんなに任せるよぉー」

「走りたい!!」


 多数決で歩いて行く事に決定した。俺は町の入り口を向き、一礼した。


「よし、じゃあ……走るか!!!」


 と言い、みんなを出し抜き町を背に北へ、北へと思いっきり走った。


「うわ! 1人だけ!!」

「酷い!!」

「走っれーーー!!」

「ちょ…僕まだ地図片付けてないんだけど!!!?」


 決して立ち止まらない。決して振り向かない。

 そう決意して、俺は前を向いて、走っていく。



  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄





「ちょ…ちょっと待って……助けて…死んじゃう……。」

「……体力なさすぎ。」

「置いてくぞー!」


 走り出して3キロ程走っただろうか。走り続けた俺は息を切らし、前を行くみんなに助けを求めていた。


「まだ1キロも進んでないよー。まだ後ろに町見えてるよー。」

「うそぉん!!!」


 振り返れば、当たり前のように町が見えていた。蜃気楼や幻覚の類かと思い目を擦ったが、やはり町はあった。

 体力の無さにショックを受けたが、立ち止まってはいけない、と必死に歩いた。


「ねぇ…グレン。」


 同じペースで歩いてくれていたリリアが声を掛けてきた。

 リリアの右手にはさっきまで持っていなかった腕輪のような物を右手で掴んでいた。


「んー?どした?」

「グレンは創造魔法使わないんだよね?」

「……ああ。」


 今は俺とリリア以外、前の方を走っていて声は届かない。

 ライトがたまに振り向き、手を振っているが、すぐに走り出す。


「そっか。あのさ。私も武器とかは造らないようにする。けど、こういう使い方はいいよね?」


 と、右手に持っていた腕輪を俺に差し出してきた。

 何も言われていないが、それを手にとる。


「これは?」

「造った。グレン専用。」

「どんなイメージしたの?」

「レベル。あと、幸せになれますようにって。」


 リリアの目を見ながら首を傾げると、「鑑定したら?」と悪戯な笑顔を見せた。


『鑑定』


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【グレン・リィド専用バングル】

 創造主の祈りが込められている。

 この腕輪を装着した者は獲得した経験値を大幅に追加獲得でき、幸せに近付かせる。

 指定された者以外が装着すると真逆の効果が発動する。


 《効果》

 [獲得経験値大幅UP][幸運大幅UP]

 《アンチ効果》

 [獲得経験値大幅DOWN][幸運大幅DOWN]


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




「リリア…抱きしめてもいい?」

「え……やだよ。」


 冗談で言ったつもりだったのだが、本気で嫌な顔をされた。

 しかし、創造魔法はやはり規格外だ。

能力付与(邪神の愛)』なんて要らないんじゃないか?と思える程に。


「リリア…これ全員分造るつもりか?」

「ううん。グレンだけ。」

「そっか…。まぁ、みんなに言うなって言っちゃったし…そうなるわな。」

「うん。」

「……ごめんな。」

「もういいって!」

「うん…ありがとな。これ、大事に使うよ。幸い誰が造ったか載ってないし、最悪自分で造ったって言い張るわ。」

「うん…わかった。」


 今も普通に話せているように見えるが、あの日を境にリリアとの間に深い溝のようなものを俺は感じていた。リリアは口では、態度では普通に振舞ってくれているが、やはり俺とは一線を引いているような気がする。俺がリリアにしたことは許されるようなものではない。それなのにこうして気遣ってくれているリリアには一言では言い表すことの出来ない感謝の念が込みあがってくる。

 腕輪を装備する。

 少し、体が軽くなったような気がした。



「リリア。絶対に家族見つけような。」

「……うん。」



 まだ見ぬ次の町を目指して、ゆっくりと歩いていく。



旅立つ前日の話を省略しましたが、いつか機会があればこの時の話を載せたいと思っています。

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