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異世界では経験値が必要です。  作者: きうろ
第一章 -幼少ー
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 白目を向いて倒れているリリアをみんなが囲む。

 晒し者のようで可哀相だったので、俺はみんなに「リリアは俺が見るから魔法の訓練に集中してくれ。」と、リリアから離れさせた。

 倒れているリリアの横で『創造魔法』について考える。


 まず、リリアが造った鑑定石。魔力枯渇で倒れている今もまだリリアの手の中にある。しかし、さっきみんなの前で造ったものは、倒れたと同時に消えた。この違いはなんだ? あと、リリアは土魔法に適正していなかったはず。それなのに、石を造り出した。土魔法では出来なかった事を創造魔法では出来た。イメージする事自体は同じはずなのに。さらに、その石に『鑑定』や『転移魔法』まで付与させている。どうやって造ったんだ?いったいどんなイメージをした…?起きたら聞いてみるか。


 手を前に出し、さっきと同じ形をした大鎌を創造する。しかし、イメージした形は同じでも、さっきとは違う。『2m以上離れたら手元に戻ってくる』『斬撃が飛ぶ』『これに斬られた者は5分間眠ってしまう。』というイメージを載せた。


 鎌をその場に置き、移動する。

 歩いている最中、トスッと地面から音がし、下を見ると右足近くに大鎌が落ちていた。


(マジか…転移魔法成功してもた…。)


 まさか本当に成功するとは思っていなかったのでかなり焦った。

 大鎌を拾い、人が居ない方を向き、上から下へと思いっきり振る。まだ身長が低いので振り切れず、途中で地面に突き刺さってしまった。前を見るが、斬撃が飛んだかどうか分からなかった。


(俺の身長じゃ横に振り抜かなきゃダメか。…しかし、範囲が分からないから危ないな…。さて、どうしようか…。)


 周囲をみる。みんなそれぞれ魔法の練習をしていた。ライトは火の玉を造りだし、ルードは自分の周りに風を纏わせ、ノウは(……何してんだあいつ。)日向ぼっこをしていた。 召喚魔法を練習していたのか、マイムの周りを青い鳥が飛んでいた。

 少し考え、土魔法で沢山のカカシを造りそれを空へと、自分と一緒に浮遊させる。


「…綺麗な景色だ。」


 思わず呟いてしまった。思い返せば、こんなにゆっくりと上から景色を眺めるのは故郷で浮遊魔法の練習をしていた時くらいだろう。山のような岩が立つ。違う方向を向けば緑色に染まった山、草原、奥のほうには微かに海が見える。

 一通り眺め終え、カカシを縦一列に5m感覚で十数体並べ、大鎌を構える。


(ここでなら、思い意っきり振りぬ………ける!!!!)


 横一線に大鎌を振り抜く。

 ブォン、という音が静かに鳴り、雲を割った。

 十数体もある全てのカカシは空に上半身を残し、下半身は重力に逆らえず落ちていく。さらにその背景にあった掴めそうと錯角するほど白く大きな雲が横から青い絵の具一筆で塗られたように割れていた。


「…は?」


 間の抜けた声が自分の口から発せられた。と同時に、底知れぬ恐怖を感じた。

 この魔法は封印するべきだ、と一瞬で思わせるほどの結果を出した。

 浮遊魔法を解き、地面に戻る。大鎌を持つ()()()()でそのまま大鎌を吸収する。

 粉々になったカカシを背に、リリアの元へ戻り隣に座った。


「……リリア…俺はとんでもない事を教えちゃったかもしれない。俺は…この魔法を封印するよ。だけど俺は、やっと発動出来た魔法をリリアから、みんなから奪いたくない。大丈夫だと思うけど…お願いだから、道を踏み外さないでくれよ?」


 聞こえていないはずのリリアに語りかける。

 全身が震えだす。自分が仕出かした事の重大さに今更気付いた。 この魔法は神にも悪魔にもなれる異質で異常なものだ。それを、何も考えずに純粋な子供に教えてしまったのだ。弾の入った拳銃を子供に渡すよりも恐ろしい事をしてしまった。この魔法だけではない。魔法全てが人を殺せるのだ。俺がブルクレンの兵士を殺したように。


 止まらない震えを、あふれ出す恐怖を必死で抑える。

 いつの間にか流れていた涙は、何に対しての涙なのか自分でも、もう分からない。


 みんなが人を殺せる力を持ってしまった事?人を殺せるという事を認識させずに教えた事?それを利用しようとする者が現れる可能性?戦争の道具になる可能性?自ら戦争に出るかもしれない。危険な場所に行こうとするかもしれない。命を狙われるかもしれない。その所為でみんなが……死………俺は……みんなを守りきれないかも……




「ウエンチ!!!」


 声に反応して振り向く。

 いつの間にか真横に居たノウと目が合った。

 ノウは慌てたように「大丈夫?!何かあったの?!」と声を掛けてきた。


 その言葉で堰を切ったように、まるで産まれたばかりの赤子のように大声で泣き喚いた。



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