想像を、創造へ
俺は半泣きのリリアを慰めていた。
「…どうして…どうしてなの…?」
「大丈夫だよ。きっと見つかるからさ。俺も頑張って見つけるから…な?」
別に大事なものを無くしたわけではない。
ではなぜ半泣きなのかと言うと、リリアは未だ特化した魔法が見つからないのだ。それどころか、何1つ魔法を使う事が出来なかった。
リリアと同じく魔法を使えなかったライト、ルードはほとんどの魔法を使え、特化した魔法を見つけた。
ライトは[火][光][重力]、ルードは[風][水]。2人は今それらを鍛えている。
その光景を見て落ち込んでしまったのだ。
俺は急いで本屋に行き、ユリーさんに『最新の魔法の種類について詳しく載っている本』を探してくれと頼んだのだが、昨日読んだ本が出てきた。
その事をリリアに話すと、本格的に泣いてしまった。
本気で魔法を使いたかったのだろう。
「リリア、今俺が考えてる魔法あるんだけど、一緒にやるか?もしかしたらそれが適合した魔法かもしれない。」
「……。」
「リリアはステータス見るに、魔法使えない事はないと思うんだ。でも、それでも使えないって事は何か特別な理由があるかも知れない。」
「なによ…呪いでも掛けられてるの?」
「ち、違います!強力な魔法に特化し過ぎてそっちに才能を喰われてる…とか?」
「なんで疑問系なのよ…じゃあその魔法教えてよ!」
というと、リリアは体操座りのまま目を伏せてしまった。
(やべぇ…マジで怒っちゃったかも…元々嫌われてるぽかったからなぁ…。 本気で探してみるか…。)
「わかった。じゃあリリアは待っててくれ。俺がリリアに合った魔法を絶対見つけるから。」
と言い、リリアから少し離れ背を向けるように胡坐を組んで座った。今まで試した事なかった【転移魔法】【結界魔法】【空間魔法】【次元魔法】に挑戦した。
結論から言うと、全て失敗だった。
【結界魔法】は魔法防御に影響するので、[魔防5]の俺には喉から手が出るほど魅力的だったのだが、全然イメージが湧かなかった。
【転移魔法】は目を瞑り、想像した場所に俺が移動しているイメージをしたのだが、無理だった。しかし、過去に見つかっている魔法なので絶対に出来るはずなのだ。と頑張ったが無理だった。
【空間魔法】と【次元魔法】に関しては、よく考えたら同じ魔法…だよな?と少し前の自分を鼻で笑い、ドラ〇もんの4次元なポケットをイメージしたが、ダメだった。
(んー…やばい…。何か他に試してない魔法は…。想像しろ…どんな魔法を使えたらかっこいいか、役に立つか…想像しろ……。想像、ソウゾウ、創造?魔法で何かを創る? いや、これは召喚魔法…か? 違うな…召喚魔法は魔法を具現化して命を吹き込む魔法だ…。それを前の、具現化の段階で終わらす。そうだ。無機物を産み出すイメージ。)
イメージに魔力を込める。
グンッと魔力が減ったのが分かった。と今まで瞑っていた目を開けると、巨大な鎌が目の前に浮いていた。
(あ…。なんか成功しちゃった。)
立ち上がって大鎌を掴む。そのまま振る。特殊な効果はイメージしてないのでビュンと音がするだけだった。とても軽く、持っている事を忘れてしまう程だった。
(とりあえず、これをリリアに教えてみるか。召喚魔法無理だったけど、これならいける…かな?)
大鎌を吸収で消し、リリアの元へ歩いていく。リリアはまだ目を伏せているままだった。
「リリア」
俺が呼ぶと、ビクッと体を強張らせた。
俺は横に座り、新しい魔法を見つけた事を報告した。
「召喚魔法の1段階前の魔法なんだ。もしかしたらリリアも出来るかもしれないから、挑戦してみない?」
「……。」
「また失敗するのが怖いかな?」
「……。」
「前にさ、ある偉い人が俺に言ってくれた言葉があるんだ。その言葉があるから、今俺は挑戦し続けられている。」
「……。」
「『諦めたら、そこで試合終了だよ。』 安〇先生の言葉さ。」
「誰よそれ…。そもそも今試合じゃないよ。」
「っ!!」
「でも、いい言葉だね。」
リリアが顔を上げた。涙はもう乾いていて、しっかりと前を向いていた。
「やってみる?」
「うん。グレン、ありがとね。」
「別に礼を言うほどの事じゃない。さ、なにか道具を具現化する『イメージ』して!」
リリアは頷き、目を瞑って少し下を向きながら手を前に出した。
魔力が減っているのが分かった。リリアの手が薄く発光し、いつの間にか手には石ころが握られていた。
「……石?」
俺の言葉に反応し、リリアが目を見開いた。手に握られた石を、俺を交互に見た。
「え? ……あ。出来た。出来た………できたよぉぉおおお!!!!」
と、リリアが俺に抱きついてきた。突然のことだったので俺は硬直してしまった。
リリアは「やったよ、出来たよ」と何度も繰り返し、俺は「うん、そうだね、おめでとう」としか言えなかった。
リリアは少しして、俺から離れた。
「ね、ねぇリリア…。その石って…いったいなんなの?」
なぜ石を創造したのか俺には分からなかった。もっとすごくて出来た!と喜べるようなものなら納得なのだが・・・。
「これはね、鑑定石だよ。」
「え、マジで?鑑定できるの?」
「うん。なんか出来た。それにね、どこに投げても絶対に手元に戻って来るんだよ。」
そう言って、石を投げる。石が転がり終えると、その場から消え、いつの間にかリリアの手に握られていた。
「マジか…!すげぇオプション付いてんな!!」
本気で驚いた。鑑定の出来ないリリアが鑑定石を創造し、更には自動で戻ってくるという高性能。というより、見るからに【転移魔法】だった。【能力付与】がなくても別の魔法を付与出来ているのは、自身の魔力から作り出した物だからだろうか…? リリアはこの【創造魔法】にかなり特化しているのかもしれない。というより、特化し過ぎている。
リリアのジョブは【発明家】。他の魔法が使えない変わりに、そのジョブに相応しい超万能な魔法を手に入れたようだ。
リリアは他のみんなのところに走って行き、創造魔法を見せ、みんなを驚かせた。
と、同時にぶっ倒れた。
(回数制限は2回、と。)