おーが
「トゥインテはここに来る途中にあった森にあるって。」
「オーガもそこだ。」
「ワーウルフは?」
「それは別の場所。ちょっと遠いね。」
「んじゃ、とりあえず『トゥインテ採集』と『オーガ退治』いきますか!」
話はまとまった。早速クエストをクリアしようと意気込む。
「リリアとライトはお留守番でいい?」
「うん。私は待ってるよー。」
「俺も行きたい!!」
リリアは残るのだが、ライトは行きたがっていた。
オーガの強さが分からない以上、ライトを連れて行くのは危険だ。
先日の魔物のような強さならなおさら連れて行けない。
しかし、連れて行ってあげたい、とも思う。
「マイム。ルード。ノウ。どうする?もし凶暴な魔物なら、連れて行くのは危険だと思うんだけど、本人の意思も尊重させてあげたい。」
「僕は、やめたほうがいいと思う。」
マイムがそう言うと、ルードとノウも頷いた。
「ライト、ごめん。また今度一緒に行こう。俺は今回ライトを守れる自身がない。」
「俺は…お前と同い年だ。お前に守ってもらわなくても行ける。」
言葉が出なかった。
確かに同い年だが、俺は中身が30歳過ぎてるから、なんて言えるはずも無い。
だが…
「ライト、俺はお前のジョブをなんて教えた?」
「戦士だ。」
「ああ。お前は戦士だ。だけど、その戦士の武器はどこにある。」
ライトはハッと驚いた顔をしていた。
(いや、君最初から持ってないから…。)
「今回のクエストで、お金が大量に手に入る。そのお金で武器を買うつもりだ。それまではここで鍛えて待っていてくれ。」
「わかった!!任せとけ!!」
すごい茶番劇を演じたような気がする。
「さて、行こっか」
「う、うん…」
町を出て、飛んで森まで移動する。
一度森を上から見てみたが、森は大きく、花もオーガも見えなかった。
断念して正面から入る。
「まさかライトがあんな事言うとは思わなかったよー。」
「そうだねぇー。…素だったのかな、アレ。」
ルードとノウがしみじみと話していた。
あれには俺も驚いた。あそこまで天然だったとは思わなかった。
「反抗期かな?」
「というより、嫉妬に近いんじゃないかなー?」
「え?嫉妬?」
俺はつい口を挟んでしまった。
あの天然が嫉妬なのか?と
「いや、だって同い年のウエンチがバンバン魔法使って、しかもリーダーなのに、ライトは武器が無いから何もできない。」
「あぁ…。なるほど。」
(そうか、ライトは活躍したいのか…。いい武器を買ってあげないとな。)
森を歩き続ける。
『鑑定』を発動し続け、トゥインテを探すが、見つからない。
一応、ハリさんにトゥインテの絵を描いてもらったのだが、正直子供が描いたチューリップにしか見えなかった。その紙は今、ルードのポケットの中に厳重に閉まっている。
「待って。今何か聞こえなかった?」
ノウが耳をピクッとさせながらみんなを止める。
みんなは歩くのをやめ、耳を澄ませる。だが、俺には何も聞こえなかった。
「やっぱり…あっちからだ。」
ノウが歩き出す。
俺はマイムの方を向いたが、マイムも聞こえなかったようで、首を振った。
どんどん森を駆け抜けていく。
いつの間にかノウは走っていて、俺達は必死で追いかけていた。
ノウがピタッと止まる。
俺とマイムは止まりきれず、倒れてしまった。
俺は立ち上がり、マイムに手を貸す。
「ノウ、止まるならなんか言って…く…デカっ!!」
ノウの方に振り向き、注意しようと声を掛けたが、ノウには目が行かず、その奥、数十メートル先で横になって眠っている巨人を見つけた。
「ウエンチ、鑑定して。」
ノウが小声で鑑定を促す。
俺は即座に鑑定した。
「ビンゴだ。因みに、その周りに咲いてる花。あれがトゥインテみたいだ。」
「ウエンチ、どうする?」
「どうするって?」
「先に倒すか、トゥインテを取ってから倒すか。だね。」
「正直、オーガを起して暴れられて、トゥインテが踏み潰されて取れなくなる。ってのは、避けたいよな。」
「ん?それは大丈夫じゃない?」
マイムが俺の発言を否定した。
俺は首を傾げた。
「え、なんで?」
「オーガの周りを見てみなよ。1つも踏み潰されてない。あんな大きなオーガなのにさ。」
確かに、言われてみればその通りだ。でもなぜだ?オーガはトゥインテが好きなのか?
「先に花を取って、オーガの怒りを買うって可能性もあるわけだねー。」
その可能性があるうちは、トゥインテを取りにいけない…。だが、その前に確認しなくてはならない。
「オーガってこの1匹だけだよな?」
「たぶん…」
「確認するか…。」
マイムに頼んで上から見てもらう。
マイムは上から手を大きく丸めた。
「1匹だけか…。オーガには申し訳ないけど、俺達の生活の礎に…。」
と、手を合わせる。
そして無言で風魔法でオーガの顔周辺を囲む。
オーガは途中目を覚ましたが、数十秒後、倒れた。
「へ?」
マイムが降りてきた。と同時に倒れたオーガを見る。
「何したの…?」
「息の根を、止めました…。」
「いや、だからどうやって!!」
「呼吸を、止めました…。」
「…真空状態にしたの?」
「うん。」
「えげつな…。」
ノウとルードがちょっと引いたように俺を見てくる。
生臭い戦闘よりこっちの方がまだ良いと思ったのだが、2人はそうではなかったらしい。
4人でトゥインテを根から取り除く。
今更だが、トゥインテはハリさんが描いた絵にそっくりだった。
数十本取った後、オーガをどうするか話し合う。
「冒険者ギルドにそのまま持ってくのかな?」
「うーん。それはないと思うんだけど…。」
「どこか一部を取るとか?」
「一部って?どこ?」
「耳とか…目とか?」
「目は嫌だよ…。」
「私だって嫌だよー…。」
「まぁ、全部持っていけばなんとかしてくれるだろ…。」
「だね。ウエンチいける?」
「うん、大丈夫。」
と、動かないオーガを町の前まで持って行き、冒険者ギルドに行き、報告する。
ギルドの人が数人オーガを見にきて、すごく困ったような顔をしていた。
商人ギルドに行き、トゥインテを渡す。1つで良かったそうだが、複数持ってきたというと全て買い取るといい、相場の2倍の金額で買い取ってくれた。
その後、もう一度冒険者ギルドに寄り、クエスト報酬を受け取る。「オーガの目と睾丸は高く売れるから」と、その分の金額ももらえた。だが、「あんな大きなオーガ処分に困る。」と言われ、処分費用を少し差し引かれた。
元々持っていたお金は、50S。
宿屋、服屋で使い、残り約4Sだった俺達は、23G34Sと、結構な大金を手に入れた。